第74話 「10大神」
10大神。ついにその詳細が明かされる。
セギヌス殿は司教としてその声望を寄せられるに至った、滑らかな語り口の説法を披露する。
「他聞をはばかる話でありますので、どうか胸奥にお収めください。10大神が8大神と呼ばれるようになったきっかけは、2つの神々の戦争が原因です」
「ええ。吹聴しないだけの良心は持っているつもりです。神々の間に戦争があった……?」
「ええ。一般に知られていないことです。神々の権威が揺らぎかねないと判断した、時の権力者や教会がそのように決めました」
初耳だ。
意図的に情報を抹消していたのか。
しかし戦争といっても、勝者として正義となった神々はその業績を喧伝されてもいいような気もするが……
俺は黙って解説を聞く。
「10大神とは神々を束ね、代表する力ある10の神々を指します。自然法則に関する権能を司り、現在も世界の運行にその力を注いでくださっています」
「はい」
これは常識だ。8大神のと注釈がつくが。
だからこそこの世界の人々は厚く神々を信仰し、敬虔に神に仕え魔物たちと戦う。
現世利益さえあるのだ。崇めることは自然だ。
「その10大神の間で、最初に起こった戦争。時間と空間の神テフヌトが神々の力を奪って頂点に立とうと、戦争を仕掛けたティタノマキア。これが現在に至るまでの諸問題の端緒です」
王国魔導院長との激戦後に入り込んだ空間で見た、言語に絶するほどに神秘的な美しい少女が克明に想起される。
あの少女が神々を……
出会った時の傲慢な態度を思い出すと、頷けるものがある。
セギヌス殿は歴史学の話をし始めた途端、熱く語り始めた。
ベラさんはセギヌス殿を横目で何か言いたげに見つめている。
「テフヌトに関しては謎が多い。10大神の中でも隔絶した権能を持つ、最強の神であるとだけ記載がされております。私も様々な遺跡や遺失した文献などについて調査しているのですが、これがなんとも…………失敬。話が反れました」
「いえ。学識が深くいらっしゃる」
俺の賛辞に照れ臭そうにするセギヌス殿。
随分と早口だった。きっとこういうの好きなんだろうな~
何かわかったら教えてもらわねば。
テフヌトについての情報は俺も必須であろう。
「その暴挙を止めようと、ほかの神々すべてが総力を挙げて立ち向かったことで、ようやくテフヌトを打倒することができました」
「え?テフヌトは死んだのですか?」
「いいえ。テフヌトはその権能から、殺害することは不可能に等しい。よって神々の中で2番目に力のあった、生命と大地の神をはじめとする力ある神々が封印することになりました」
「なるほど。ケレース様が」
「ええ。生命と大地の女神ケレース様が執り行いました。彼女は冥界の管理すら任される、温厚篤実なすべての神々から信頼されるお方でした」
教会での、荘厳な女神像を思い起こす。
あのバカでかい母性をお持ちの、優しそうなお姉さんの女神様か。
あれマジで体との比率おかしいだろ。
大好物なんですけどね。ウヒヒ
だが、その女神は……………
「――――――――しかし、裏切りにあった」
セギヌス殿は嘆き悲しみがうっすらと漏れ出た口振りで。どこか感傷的に言葉を発する。
先ほどの熱は、火が消えたように失せた。
生命の女神は、とうの昔に死んでいる。
それがこの地獄のような救われない世界の原因。
神々の創造した完全なる楽園が、ケレースの恩寵を失った過酷な煉獄へと変化した背景。
「――――――――その惨劇の下手人が人類の敵。魔物たちの母。闇の女神ヘカテーです」
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