表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/240

第64話 「アルフェッカの心境」




「アルタイル……………?」




「父上。ご心配をおかけしたようで……わぁっっっ!?」




 父上が帰ってきていたようだ。

 遠い旅路だったはずだ。

 向こうまで連絡が届いた時間から考えると、相当な強行軍であっただろう。


 目元には隈が深く刻まれ、深い心労があったことが伺える。

 強面と相まって、悪魔のような風体だ。




 もしかしなくても、それは俺のために……

 気を遣わせたようで心苦しい。






「心配…………心配したんだ…………! 本当に……! 目を覚まさないお前と共に、千切れたお前の腕が運ばれてきたときは本当に心配して……! 体調は!? 大丈夫なのかい? 痛いところはないかい?」




「大丈夫です。さっき回復魔法で治しました…………その……抱きしめられると痛くて……」




「ああ!? ごめんよ!」




 父上は俺の調子について、矢継ぎ早に問いただす。

 ひどく心配をかけたようだ。


 躊躇いがちに万力のように絞められる体に言及すると、慌てて父上は俺を離した。

 そして少し俺を見つめると、俺の両肩に手を置いて震える声で呟いた。






「危ないことをしないでくれ…………お前に頼らなくてはいけない無力な私が情けないのだと……あの時はお前以外に対処できた者はいないのだと……わかってるんだ……でも……」




「父上…………」




「お前の蒼白な顔を見た時。お前が幼い頃に、生死の境を何度も彷徨ったことを思い出して…………ナターリエが死んだ時そっくりで……」




「…………」




 涙ぐんだ父上の悲痛な声が突き刺さる。

 俺の姿が亡き母上を想起させてしまった。

 それは同じ悲しみを共有する、俺の心も責め立てる。


 死んだ人は生き返らない。

 亡者は何もできなくなる。

 転生なんて奇跡が、そう何度もあるわけないんだ。






「お前は小さいんだ……まだこんなに…………私よりも先に死ぬようなことはしないでくれ…………家族に死なれるのは…………辛いんだ…………!」




「はい…………はい…………!」




 反射で放った最初の返事は、消え入りそうな声で。

 父上の手に、力が籠っていることに気が付くと。

 二回目は絶対に聞き逃すことのないように、力強く返答した。


 彼のくぐもった嗚咽が、静まり返った部屋に鳴り響く。

 泣くだけで済んだのは、まだ死んでなかったからだ。

 生きてさえいれば、なんとでも取り返せるのだ。




 そうか。俺は生きている。

 まだ生きてるんだ。











 それからしばらくぶりに、父上と近況を話した。

 取り留めもない話だったが、親子の会話をできたのかもしれない。

 俺の体を気遣ったのか少しの間だったが、話せてよかった。


 就寝へと床に就こうとしたその時、小さくノックの音が聞こえた。

 来客が多いな。






「―――――――アルタイル。私よ。入ってもいい?」




「ノジシャ? 今開けるよ」




 俺は弾んだ声で、ドアを開ける。

 寝間着を着たノジシャが、俺の目の前に立つ。

 少し眠たげな眼だが俺が確かに立っていることがわかったからか、安心した様に頬を緩める。






「夜分遅くに悪いわね。あなたが起きたと聞いて、すぐ顔が見たかったから」


「構わないよ。ほら入って」


「失礼するわ」


 彼女の手を引き、ベッドに座らせる。

 そのすぐ隣、肩が触れ合う距離に俺は座った。

 夜遅くに……男と女が密室で……二人っきり……だねぇ………




「目覚めてくれて本当によかった。丸二日意識を失うなんて、本当に大変だったのね……」


「心配かけてごめん。帰ったよ」


「帰ってきてくれて嬉しい……あなたがいない時ずっと私はあなたの事を考えて……」


 赤髪の従姉は慈母のような微笑みで、俺の頬に触れる。

 ノジシャたんのぷに♡ぷに♡した手を掴んで俺の頬へ摺り寄せると、やや困った表情でされるがままにその手を委ねる。

 困り顔かわいいね♡ キュンキュンだね♡




「ノジシャ~~~頑張ったから褒めて褒めてぇ~~~!」


「えらい! すごくえらい!」


「怖かったの~♡」


 ピンチはチャンスってこれの事か?

 すかさず俺は、ノジシャの母性の象徴に飛び込んで甘える。






「…………!? ちょっと! ろくな大人になれないわよ!」



「そぉ? そぉ~~~おぉ~~~?????」



 顔を掴まれた俺はわざとらしく小首をかしげ、キョトンとした表情でしらばっくれる。

 ノジシャは呆れかえり、頭を振る。






「情けないったらありゃしない……」



「ノジシャぁ……俺のこと嫌いなの……?」



 潤んだ目で悲しそうに、ノジシャを上目遣いで見つめる。

 そして顔を伏せて、瞼と唇を震わせた。

 気が咎めたのか彼女は、体を強張らせ声が詰まる。


 よし。追い打ちだ。

 必殺、不謹慎台詞。




「母上―――! 痛かったよーーーーー!!!」




「うるさいっての! 何時だと思ってんのよ!」




 ノジシャもうるさいよ、という言葉は飲み込む。

 彼女とずっと暮らして学んだのだ。


 反論すると怒る。

 まったく。声を出す正しい人間が報われない世の中だぜ。






「あぁもう好きにしなさい……」




「ふへへ! ノジシャお姉ちゃんしゅきしゅきぃ~~~♡♡♡」




 はいチョロ~~~っ(笑)

 ノジシャの胸元に顔を擦り付け、むに♡むに♡と感触を確かめる。


 彼女は居心地悪そうに恥じらいながら、俺から顔を背け。

 美しい赤髪を胸元から後ろへと払いのける。

 受け入れ態勢万全か?

 女の言外の誘いの合図か?


 そして俺は深く深呼吸。

 美少女から薄い布一枚を隔てて漂う甘ぁい香りが、口から喉、肺から脳に昇ってきたぁ♡




 おほっ! 少女の丸く柔らかくなりつつある、可能性を秘めた肉体♡

 硬さの中にも柔らかさが確かに存在し、その中にも小さな硬さを見つけてしまいました……!

 体の成長が早いんだね♡ 女になろうとしているんだね♡ フヒヒ!!!






 俺がこの世の桃源郷を堪能していると、ノジシャは優しく俺の髪を梳く。

 母上と同じ撫で方だ。

 二人とも会ったことなんてないはずで、そんなことは聞いたこともないに決まってるのに。


 暖かい。

 久しく感じていなかった、あの温もりを思い出す。

 無性に寂寥感と、安心感がないまぜになってこみ上げる。




 涙が零れる。






「がんばったわね」









面白い、または続きが読みたいと思った方は、

広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価、またはレビューしていただけると、執筆の励みになります!!!!!!!!!!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

面白い、または続きが読みたいと思ってくださる方は、上の☆☆☆☆☆から評価・感想していただけると執筆の励みになります!

新作も読んでくださると嬉しいです!

 『間が悪いオッサン、追放されまくる。外れ職業自宅警備員とバカにされたが、魔法で自宅を建てて最強に。僕を信じて着いてきてくれた彼女たちのおかげで成功者へ。僕を追放したやつらは皆ヒドイ目に遭いました。』

追放物の弱点を完全補完した、連続主人公追放テンプレ成り上がり系です。
 完結保証&毎日投稿の200話30万字。 2023年10月24日、第2章終了40話まで連続投稿します。



一日一回投票いただけると励みになります!(クリックだけでOK)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] お父上もつらい思いをしましたね;つД`) これは顔が怖くなっちゃうのも致し方なしです。母上の死に顔を思い出してしまったなんて、考えただけで辛いです。 だけど久々のノジシャちゃん♡ アル様や…
[良い点] もう何も言うまい………!!!! 楽しんでおいでアルタイル様…………!!!! がんばったよ、本当に
[良い点]  いつものモードが帰ってきた……良かった良かった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ