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第63話 「夜の目覚め 遺伝子治療魔法」




 不快な目覚め。

 幼少時のような痛みに苛まれて目を覚ます。


 精神的ストレスと相まって、未来に絶望しかなかった、前世の辛かった時の頃のようだ。






 窓の外は夜の帳が落ちて、仄暗い月光が窓から照らす。

 辺りは既に深夜。

 どれほどの間、こうして寝ていたのだろう。


 首を傾けると、俺は寝間着に着替えさせられていた。

 周囲を見回せば、見慣れた自室にいる。




 喉がからからに乾いている。

 痛みに呻きながら体を起こす。

 軋む体をおして、水差しから喉を潤す。






 一度落ち着くと、沸々とあの時のことが脳裏に蘇る。

 在りもしない回答を探し続けて、思考が袋小路に入る。


 俺は一体これからどうすればいい?

 あれよあれよという間に超展開が連続し、全然頭が追いつけていない。




 いや本当はわかっている。

 認めたくないだけだ。


 現実逃避をしないと、俺を取り巻く状況があまりに厳しいものであることに気が付いてしまう。

 なんだって神々の陰謀なんぞに、俺は巻き込まれにゃならんのだ。

 おかげで俺は二柱の神の板挟みとなり、彼らの機嫌を損ねないように生きていかざるを得ない。


 あんな力を見せられては、人間の力で神々に対応できるとは思えない。

 そもそも俺の力は、神から得たものだ。

 何とか出し抜いて生き延びるしかない。






「…………」



 テフヌトと思われる、あの少女の言い分によれば、トート神は彼女の不倶戴天の仇と見える。

 恐らく昔、トート神と何かあったのだろう彼女の目線から見れば。

 互いに相容れない存在であり、言葉の節々から意識せざるを得ない関係だと推測できる。


 オーフェルヴェーク侯爵の言い分を鵜呑みにするのは危険だが。

 テフヌトは10大神から追放され、封印されていた模様だ。




 10大神? 8大神ではないのか?

 そして封印されていたというのにも気にかかる。

 なぜ狂気の魔道具なんてものになっていたのか、など疑問は尽きない。


 またトート神も、彼以外の神を信じるなと言っていた。

 神々の間で何があったのか……?

 神話なんぞ興味ないから今までは触れてこなかったが、調べないといけない。




 トート神に俺の状況を知ってもらったところで、テフヌトから俺を守ってくれる保証なんてないだろう。

 そもそもテフヌトの監視を搔い潜れるなんて思いあがるのは、盆暗の所業だ。

 むしろ彼女に協力させないために、トート神は涙を呑んででも俺を殺すかもしれない。


 つまり俺に完全に味方して、守ってくれる存在などいないのだ。

 そして王国内部にも俺の潜在的な敵がいることに、疑心暗鬼に陥る。






「――――――――失礼します…………アルタイル様……!? お目覚めでしたか!?」




 水差しを手にした年若いメイドがノックをするが、返事も聞かず入室してきた。

 彼女は俺を見ると口を手で覆い、水差しを落としそうになる。




「ああ。今目覚めた。俺が倒れてからここに運び込まれて何日たった? 俺の体はどうなっている?」


「えと……アルタイル様は丸二日寝ていたようです! 私は詳しいことは何とも……そうです!!! 当主様に報告に参ります!」


「お……おい」


 メイドは忙しなく弾丸のように言葉を放つと、勢いよく部屋から出ていった。

 俺は聞きたいことも聞けず、音を立ててベッドに座る。

 二日寝ていたのか……




 そんな今の俺の体はどうなっているのか。

 そう思い至ると俺は、ステータスを表示する。




 特に状態異常は怪我以外には……………


 いや、妙なスキルがある。




 魔導具作成スキルが10レベルある。

 こんなスキルはなかったはず……?


 試しに持っているコップに使用すると、水が変化する。

 水に魔力が籠り、詳細は不明だが何かしらの変化が起きている。

 俺はスキルの発動を止め、考察する。




 ああ。これは恐らくだがアリバイ作りにテフヌトが、俺のステータスに介入したのか。

 これがオーフェルヴェーク侯爵の持つ、力を失った狂気の魔導具をつくったのか?


 これについては、後からいろいろ試そう。

 他にも使いではあるのだろう。






 スキルポイントが大分貯まっているな。

 トート神がボーナスでくれたのか?

 オークたちも大量に倒したしな。


 そしてあることに気づく。

 かねてからの目標にたどり着いていることを。

 この世に生を受けてから狂おしいほど求めていたものに、ついに手が届いたのだ。




 俺は興奮しつつステータス操作を執り行う。

 そして深く深呼吸をして精魂を傾け、呪文を唱えた。






「―――――――――――『regeneratio』」






 俺の体の構成要素を一つ一つ、生まれ変わらせる。

 細胞から、その中の二重螺旋へ。

 原子レベルの緻密な操作を、魔力をもって変えていく。


 肉体情報の改竄。

 史書においても絶無である魔法の最奥と称するに相応しい奥義が、俺の体を書き換える。




 眩い光が魔法陣から溢れ出し、部屋中を照らしながら俺を覆いつくす。

 しばらくの間俺は光の膜に覆われて外界から遮断されていたが、光が晴れた先には――――――






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 アルタイル・アルコル 


ステータス


 筋力  35

 耐久力 36

 敏捷力 32

 魔力 9999999999999999999999999999999999

 知力  67



スキル


 数学lv15

 科学lv13

 社会学lv12

 礼法lv14

 芸術lv1

 現代知識lv24

 製作lv3

 舞踏lv1


 頑健lv70

 病気耐性lv70

 毒耐性lv30

 苦痛耐性lv77


 剣術lv1

 気配察知lv21


 火魔法lv10

 水魔法lv59

 土魔法lv8

 回復魔法lv80


 魔道具作成lv10


 魔力操作

 【出力】lv43

 【制御】lv80

 【変換】lv26

 【具現化】lv28

 【干渉】lv80

 【効率】lv25


スキルポイント残り0



チート

 魔力世界最高

 全スキル・魔法取得可能

 成長無限

 成長率アップ

 アイテムボックス

 ステータスオープン

 スキルポイント自由割り振り可能

 全言語読み書き



状態異常



装備 



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 回復魔法が80レベルに達し、遺伝子異常が治る。

 やった。ついにやったんだ……!

 俺はついに忌々しい病という鎖から解き放たれたのだ。

 俺は拳を高く握り締め、喜悦に浸る。


 これで何もなければ素直に喜べたのにな。

 やるせなさと共にステータスを閉じる。


 一つ懸念事項は消えた。

 懸念事項は一つでかいのが湧いて来たけどな。




 だが今は喜ぼう。

 これからは病に苛まれることはなくなったのは、真実なのだから。






 そんな喜びもつかの間に、ドタドタと廊下を踏み鳴らす足音が聞こえて来る。

 部屋のドアを力任せに開け放ち、俺を見つめて呆然とする者がいた。







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[良い点] 神様の争いに巻き込まれ板挟みになるとはなんとも絶望的な気分になりますね。なにをしても見られてるような、ちょっとでも間違うと死ぬような……。そんな気分か気がしてきました(;^_^A アル様厳…
[良い点] 念願の…!とも言えないのが本当にもどかしいですね!!! 肉体の不調も変わったらこれから前線に引っ張りだこだぞぉ(吐血)
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