第6話 「魔力測定という名の、お前、作家になれば?小説定番展開」
先日の騒動から 完全に開き直ってお話することにした俺。
たどたどしく簡単な単語だけと、取り繕ってはいるが。
いま過ごしているのは父と母と息子、三人そろって親子の時間。
早速始まった恒例となっている会話は、俺の体調について。
「アルタイル。今日の調子はどうだい?」
「いいです!」
「よかった。ナターリエ?」
「今日は咳もしないし、昨日はよく寝れたみたい」
母上に話を一言振り、確認を取る。
俺の頭を撫でながら、金髪の清楚美女は俺の体調を報告した、
金髪の貴公子は安堵した様子で、胸を撫で下ろす。
そして普段にはない気になるキーワードが。
「安心したよ。今日は魔力測定を行いたい。教育計画のためにも小さいうちから知りたいからね」
「わかりました。あなた」
「魔力測定?」
『なれば?小説』で定番だが、念のため詳細を問う。
生まれた瞬間から酷い目に遭い続けた俺は、油断なんてしないぞ。
魔力低かったら、廃嫡どころか追放されたりしない?
今は優しくしてくれるけど異世界の価値観によっては、そういうことしかねなくない?
異世界チート転生したけど、病弱で魔力低かったから追放された。
追放先で成り上がってざまぁする。みたいなことにならないよね?
やだやだやだ。俺は可能な限り一秒たりとも努力をしたくないんだ。
現状でも生きるだけで精一杯なんだよ?
現在進行形であらゆる苦痛が俺を蝕んでいるの。
ストレスなしのハッピーなれば?ライフが贈りたいんだよ。
ストレスはもう人生という超現実的物語の序盤で、散々経験したじゃん。
誰も求めてないよそんな展開。
「うっ……ふぐっ……」
「あらあら……泣かないで」
「痛い事じゃないさ! 怖くなんてないんだよ。私がついてる。調子が悪くなったら、すぐやめるからね。大丈夫」
震えながら怯える俺は、父アルフェッカに抱き上げられた。
父上は未知への恐怖に怯えていると思ったのか、俺にとって頓珍漢な慰めをかける。
あのね。中身はもう高校生の俺は、現実的観点から切実に恐怖しているの。
乳児ボディは言うことを聞かず、恐怖から涙が漏れ出し、しきりにしゃくりあげる。
この世で最初に縋るしかない存在。
愛情を無条件で注いでくれるはずの、親に哀願するのだ。
金髪碧眼で顔面偏差値の極致にある、この激カワフェイスに見つめられて。
激アマ声優顔負けボイスで懇願されれば、陥落しない者はいない。
「アルタイル。どんな結果だとしても元気に育ってくれれば、それでいいんだからね」
「大丈夫さ。この子の魔力と魔法は先生にお墨付きを得ている。アルタイルの魔法の才能については、全く心配していないよ。人生それがすべてでもない。使えなくても問題ないさ」
父にあやされながらも泣いている俺に、偶然かわからないが母上は核心を突いた労わりの言葉を呈した。
だが前世で散々親に裏切られ続けていた俺は、安易には信じない。
そういうその場しのぎの優しい言葉をかけておいて、後に手の平返された経験はギネス級なのだ。
彼の言う通りもう魔法を使ってるし、魔力切れなど全く起こしてないから大量にあるのだろう。
担当医の診断だけでなく、チートがあるから確実に保証されている。
でもね。懸念としてはこの世界の魔道具という魔法の道具で、俺の魔力が保証されるのかという事なの。
よくあるじゃん。魔力が高すぎて計りきれません見たいな展開。
それで追放されて、再起を図る的な感じの『なれば?小説』のアレ、
しかし病弱ボーイの俺の場合は、即で詰みかねないんだよなぁ。
乳幼児が路地裏で病に苛まれながらボロボロになって死ぬとか、想像しうる限り最悪レベルの末路だから。
「私も見るの久しぶりだなぁ。どんな感じで使うんだったか」
「懐かしいわね。昔を思い出すわ」
「思えば時間が経ったものだ。お前がずっと隣にいてくれるし思い出す必要もなく、子育てに忙しかったから。次々と家族の大切な思い出ができる事を、嬉しく思うよ」
「あなた……」
二人は思い出に浸っているのかイチャイチャしている。
俺の気も知らずっ……!?
俺も美女を侍らせてハーレムしたい!!!!!
人生の岐路に立たされたかもしれない、思いがけないタイミングで訪れた愁嘆場。
なんか俺って日常生活ですら死に物狂いなんだけど、こんな異世界転生あって許されるんか?
「ご当主様。準備が完了いたしました」
「あぁ。行こうか」
アルコル家お抱えの魔法使いだって爺さんからの呼びかけより、俺たちは歩を進めた。
魔法かぁ……とても気になるところ。
暇潰しが無いけど、厳しい闘病生活に暇があるかといえば、ないんだけどね。
父上たちに聞いても、幼児言葉での曖昧な表現でしか教えてくれないからな~
そりゃガキに危険物の使い方教えるわけないが、俺としては不満言いたい部分もあるんだよね。
「この水晶に手を添えてください。触るだけです。壊れやすいものなので、ご注意いただければ」
「へへへーん! 凄い記録だしちゃうもんね!」
「ふふ」
これ以上悩んでも人生の袋小路に惑いそうだし、考えても始まらねぇ!
神様だって優しい家庭だって言ってたし、やってやるぜ!
伝説的チート主人公ロード爆進だ!
にこやかに見つめる両親の前に俺は座らされ、目の前には魔道具らしきものが置かれていた。
いよいよ検査に移る。
「触れただけで魔力を感知し、それに応じて発色反応を示す仕組みとなっております……と難しい説明でございましたね」
「わかるよ!」
「おや。さすが利発でいらっしゃる。差し出口を申しました。それではお試しくださいませ」
その魔道具と思しきガラス玉の説明をされると、俺は静かに指を接触させた。
慎重に魔力を込めていくと、確かに変化が―――――
パリンッッッ!!!!!
硬質な音が鳴り響き、魔道具は砕け散る。
爆散したわけではないが、罅が次々と生まれて崩壊するように見るからに全損した。
「危ないっ!」
「……っ!?」
「……おや」
「……ぅ?」
ガラスの破片が散らばる。
父上はいち早く俺の両脇をもって、抱き上げた。
突然の出来事に驚いて固まっていたが、ようやく何が起きたか俺も把握した。
母上もびっくりしたのか悲鳴ともつかない息をのみ、一方で老魔法使いは何かを理解したようだ。
何が起こった? まるで身に覚えがない……
よって俺はなぜこのような事態に陥ったのかと、疑問を露わにした。
「……何もしてないのに壊れた!?」
「おばか! 何もしてなくないでしょ! 力籠めちゃったから壊れちゃったの! 本当に危ないこところだったんだよ! 謝りなさい!」
「えっ? えっ? 何もしてないですぅ」
くりくりの愛らしすぎる涙目で訴えるも、父上は俺が壊したのだと信じ込んで怒り出す。
ただでさえ子どもが泣きそうな顔してるのに、ひたすら恐ろしい。
こんなに賢そうな顔をしている俺のせいだなんて、掠るぐらいの確率でしかないに運命論的に決まってるのに……
家庭教師の爺さんは落ち着き払いながら、説明をする。
絶句していた母上も腑に落ちたのか、得心が言ったようだ。
「いえ、これは物理的圧力や、製品不良などによる誤反応からの損壊ではないでしょう。莫大な量の魔力があれば、このような現象は起こると言われております。アルタイル様の使用される魔法から推定すれば、今の結果は自明かと」
「…………そうだったのか…………ごっ……ごめんよ」
「あなた……」
非難するような視線を、妻から受けた父はたじろぐ。
そして俺としては迷惑極まりない謝罪を受けることとなった。
「ごめんねアルタイル! 凄い子だってわかってたのは本当なんだよ~!!!」
「猛烈に擦れて痛いぃ~~~!?!?!?」
「将来有望で何よりかと。魔力量は魔法使いにとって非常に重要な資質。正しい研鑽を積めば、どこまで伸びるのか楽しみです」
激しく頬擦りされて平謝りされるも、摩擦で悶絶する。
こーやって勢いで誤魔化す大人の汚さは、ちょー顰蹙だよねー
父親の尋常でないウザ絡みも相まって、気の毒なアルタイルくんであった。
「しかし正確な魔力が計れないのは、いざという時に問題ですな」
「自らの限界を計れないのは戦場に立つ場合は致命的だ。大きく成るにつれて魔力も上がるだろうが……その時に、魔法を使わせて大体の魔力を測るべきだろう」
俺を差し置いて、魔法について相談を続ける男二人。
言っていることはわかる。
燃費とか大事よね。追々調べることにしよう。
「この領地に生まれ、戦いの運命にあるこの子の生命線。切り札となりうる魔法について、私たちがよく見守らなければ」
え? 俺戦場に立つの?
決まってんの?
やだよ殺し合いなんて。
チートで蹂躙できるならいいけど、今のところ生存にスキル全振りだし。
そもそも生きるだけすら怪しいからね?
真剣な面持ちで話し合う大人に、震えるのであった。
問題に次ぐ問題、俺の将来はどうなってしまうのだろうか?
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