第50話 「幾何学の神」
「ふむ。幾何学の神トート神様ですか」
「はい。ご存知でしょうか?」
「浅学ながら概要だけは。正義と法、秩序の女神ユースティティア様の眷属神である小神ですね」
「ユースティティア様……」
確か8大神の一柱だったな。
俺は光の神ルキナの近くにある女神像を見る。
まだ少女の面影を残すルキナよりいくらか年長に見える、年頃の乙女の姿をする女神だ。
長い髪をきっちりと揃えて切っており、いかにも真面目そうな女神である。
ポインポインもでかい。
あの石像欲しいな。
この世界貴族として生きるには中々文明的だけど、本とかほとんど売ってねぇからな。
エロ本なんかないし。
本自体めっちゃ高いし。
だからあれでシコリたい。
デュフフ♡
「トート様は知識,記録,計算を司る学問と知恵の神として崇められています。また魔術にも優れ、多くの神々と共に魔法を創造し人間へと与えたとされます。8大神ほどではありませんが、学者を始める少なくない人々から信仰される神ですね」
「なるほど。ありがとうございます」
そうか。やっぱり学問系の神様なんだな。
魔法の神様でもあるのか、俺にとっても信仰するべき神様だ。
学者か。俺の周りには少ない人種だ。
研究者とか、魔法学園なんかには多いのかな?
信者を勧誘するのも、学園に入学してからでもいいかもしれない。
「神話を紐解くとユースティティア様から、厚く重用されていることが伺えます。一番の右腕と言って差し支えないかと。小神の中でも力ある神ですね」
「へぇ~~~」
「ふむ。私も詳しくはなかったので勉強になります」
あんな変態おっさんみたいな恰好なのに、結構凄いんだな~
まぁ変人って極まると凄い強いイメージあるからな。
納得できないでもない。
にしても、この世界は日本と比べて信仰心が篤いよな~
神様が実在するんだし当然か。
ここにきて俺も信仰心が高くなったよ。
命がかかると神頼みすることも多くなるよな。
セギヌス殿の話を聞きながらそんなことを思う。
この人は話すのもうまいんだよな。
説法とかも思わず聞き入ってしまうし。
この心地よい声を聴いていると、心が落ち着いて寝てしまうかもしれないと思うが。
抑揚のついた話し方や、面白い話などを交えて話すもんだから集中して聞くことができる。
催眠術みたいな講義をする教師共に、見習わせたいぜ。
後はそうだ。丁度いい。
忘れないうちに、あのことを尋ねないとな。
「――――――セギヌス殿。ある魔導具についてお聞きしたいのですが……この紹介状をご覧ください」
「ふむ? 私は魔道具には疎いのですが……これは……シェダル殿からの紹介状ですね?どれ……」
シェダルからの手紙を渡すと、セギヌス殿は素早く目を通す。
ものの10秒ほどで読み終えると、申し訳なさそうに告げる。
「事情は把握しました。しかし私もそのような魔導具は、寡聞にして聞いたことがありませんね。お力になれず申し訳ありません」
「そうでしたか……いえありがとうございます」
「よろしければ何かこちらで判明次第、お手紙を差し上げることも可能です」
俺は内心落胆する。
これ以上探すとなると、もはや伝手がない。
しかし光明が差した。
俺が王都にいれない分、セギヌス殿の耳に入った情報が俺に届くことになる。
宗教界の人脈が乏しい俺には、望外の提案だ。
「是非ともお願いできますか!?」
「もちろんですとも」
「何と言ったらいいか……本当にありがとうございますっ!!!」
俺が飛びつくように身を乗り出して希うと、セギヌス殿は懐深く承諾してくれた。
感謝しかない。
「…………狂気の魔道具ね……ヤンから報告を受けていたが、そんなものがあるとどこかで聞いたのかい?」
「…………は………はい……」
父上が顎をさすりながら考え込んでいる。
やべ……事前に父上に言うの忘れてた……
ヤン。ナイスだ。
お前の報告がなければ、父上の怒りが飛んでいただろう。
今回だけは感謝してやる。
「セギヌス殿。私からもお願い申し上げる。そのようなものが本当にあるならば、世界全体の危機です。多くの人々が不幸になりかねない」
「ええ。承りました。微力ながらお力添えいたします」
「あ……ありがとうございますセギヌス殿!」
「いえ。当然のことをしたまでです」
「そうおっしゃってくださると、気が楽になります」
セギヌス殿は快く諒承してくれる。
本当に良かった。
俺たちはそのまま、神学に関しての質問などをして話し込む。
セギヌス殿の予定が来るまで、つい長話をしてしまった。
ベラさんが申し訳なさそうに予定が詰まっていると連絡を入れると、俺たちは席を立った。
帰り際にセギヌス殿は、俺を入り口まで見送ってくれた。
俺は再度感謝の意を告げ、教会を辞した。
収穫があってよかった。いい出会いを得ることができたな。
何か変化があれば、遠い王都の状況を確認できる。
馬車の準備ができたようだ。お暇しよう。
セギヌス殿は手印を結び、俺たちの出発を神々に祈ってくれた。
「またお会いできる日を楽しみにしております。あなたたちに神々の祝福があらんことを」
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