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第40話 「馬鹿馬術」




「…………ひっ…………ひぃぃぃ!? 無理っ! 無理ですっ!!! 絶対無理っっっ!?!?!?」


「大丈夫です! 兄様ならできますよ!」


「プレッシャーやめろ!!! お前ならできるより、お前でもできるって言われた方が気が楽なんだよ!!!!!!!?!!!」


 俺はアルデバランにぐいぐいと背中を押され、馬の直前に来る。

 そうすると馬は嘶き、前の両足を大きく上げた。






「――――――ヒヒーーーンッッッ!!! ブルルルルンッッッ!!!」



「はっはーん? 読めたぞ。こいつ俺を抹殺する気だな?」



「しませんよっっっ!?!?!? 俺がちゃんと見張ってますから大丈夫ですって!?!?!?」



 マックスが心外とばかりに顔を青ざめさせる。

 畜生なんぞ信用できるか。






「全く……私が一緒についていてあげるから大丈夫よ。ほら行きましょう?」



 ノジシャが俺の腕を掴んで、馬の所まで連れて行こうとする。

 だが俺の体は石像の如く不動だ。

 振り返った従姉は呆れている。




「大丈夫よ。男の子でしょう?」


「うるさいっっっ!!! 今時男女差別かっっっ!? えぇっっっ!?!?!?」


「悪かったわよ……ごめんなさいね」


「ふぐっ……………うぐっ…………」


 許すまじジェンダーステレオタイプ。

 俺は嗚咽を抑え込み、傷つく心を封じ込め、何とか歩き出す。






 俺の前に馬がいる。

 無理無理だって大きいじゃん。

 人間が支配できる大きさじゃないでしょ。


 大きいものは怖い。

 トロルもあんなに大きくて怖かった。


 つまり大きい馬は怖い。

 そういうことだ。

 常識で考えてくれよ。




 再度ノジシャは俺に鞍に乗ることを促す。

 しかし震える足を踏み出せない。恐ろしい。


 自分より小さなガキどもが乗れたのに……

 俺は何で……











「…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?!?!? やだやだやだやだぁぁぁぁぁーーーーーっっっっっ!?!?!?!?!?」




 俺は余りの情けなさと恐ろしさと惨めさで、涙が零れそうになった。




 いやウソ。泣いた。






「…………本当にごめんね……よしよし…………私はアルタイルのかっこいいところをいっぱい知ってるからね………」


「兄様…………! 僕はそんなつもりじゃ……!?」


「泣かないでお兄様……」


「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっっっ!!!!!!!!!! うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっっっっっ!!!!!!!!!! びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっっっっっ!!!!!!!!!!!」


 俺を急かしたアルデバランは、ショックを受けたように慌てふためく。

 一瞬硬直したノジシャは、気まずげに俺の頭を撫でる。

 カレンデュラもおずおずと近寄ってきて、俺の背中をぎこちなく擦る。




 そしてエーデルワイスは俺を目を白黒させて見つめる。

 まぁ。そりゃそうなるな。

 ショックです……






「………あ~~~エーデル……? ……アルタイルにもいいところはたくさんあるのよ?……だから可哀そうなことを言わないで、嫌わないであげて?」


 ノジシャが居心地悪そうにフォローを入れる。

 やめてくれ。

 ここでエーデルワイスに氷の言葉を刺されたら、俺はもう生きていけない。




「…………うん。わかってる……お兄ちゃんは――――――」


 エーデルワイスは言葉を切り、深呼吸をする。

 なになに? 何言うの? 怖い。






「――――――ちょっとおバカでエッチでダメダメだけど…………私のことを助けてくれた……いいところもたくさんあるって知ってるから――――――」






 エーデルワイスは自分で放った言葉に、今頃赤面する。

 そして俺の泣き腫らした目を直視すると、微笑みながら断言した。




「――――――――だから私は……お兄ちゃんが大好き」



「そう…………エーデルワイスはいい子ね……」



「ぇへへ……くすぐったいよぉ……」



 ノジシャはエーデルワイスの頭を撫でて温かい雰囲気になる。

 アルデバランとカレンデュラも、我がことのように喜び笑っている。




 いやお前そんなこと思ってたんか?











「アルタイル様……今日は無理しないでやめておきましょう。やるなら後でやればいいっすよ!」


「でも……そうもいかないんじゃ……」


「大丈夫っす! 俺が後で怒られるだけっすよ! それに馬なんて乗れなくても死にはしませんからね!!!」


 マックスは撤退を説得してくる。

 彼の軽い口調に救われる。

 続いて弟たちも慰めの言葉をかけてきた。




「そっ……! そうですよ兄様!!!」


「今日はもう帰りましょう? お兄様と遊べて私は楽しかったです」


「そうね。できないことがあったっていいのよ」


「無理しちゃだめだょお兄ちゃん……?」


 全員が一丸となって俺を励ます。

 なんだか……あったけぇな。






「お前ら……」




 みんなの気持ちが伝わって胸が熱くなる。

 …………そんなんじゃ俺……答えてやんなきゃよって思っちまうだろうが……!






「いや……やるよ。ここで引き返したらもっと怖くなる。そんなのだめだ」


「兄様……!」


「ふふっ! やるじゃないの!」


 俺の決断にみんなは驚きつつも、嬉しそうに応援してくれる。

 自分の弱さを乗り越え、強くなって見せるさ。






「よし! やるか!!!」


「ご立派ですアルタイル様!!! よっ! いーーーよっっっ!!!」


 マックスの煽てが入り、気合十分だ。

 そして俺は土魔法を使った。


 想像しろ……!

 最高の道具を……!






「『terra』!!!!!!!!!!」




「…………アルタイル様? 何をなさっているので?」



「え? 魔法で台車作って馬につなげたんだよ。見ればわかるだろ?」



「どうしてそうなるんです?????」



「…………!!!?!!!?!!!?!」



「勢いは好き」



 アルデバランとエーデルワイスは疑問符しか顔に出ていない。

 ノジシャは無表情で一言だけ発し、憮然としている。






「何だお前ら……!? 馬鹿にしたように……!!! こっちは真剣なんだよ!!!!!!?!!!」



 土魔法のレベルが上がったら最終的に馬車を毎回魔法で作って、毎回馬に取り付けるつもりだ。

 わかってねぇな。発想の逆転だよ。


 人類は道具を駆使して発展してきたんだぞ?

 脳みそを使ってない証拠出てるぞ?




「……………おぉ~すご~い。よいしょしておきやすよっ! へへっ!!!」



「棒読みじゃねぇか。ちょっとは内心隠す努力をしよ?????」



 マックスは強張った笑みを浮かべ、無理やり盛り上げようとしている。

 まぁいい。燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。

 無知な者たちに、俺が身をもって証明してやるとしよう。






「――――――――――乗馬の世界に掟はいらない」




 俺は馬に台車を取り付ける。

 意気揚々と乗り込んで、馬を発進させた。




「さぁ………………発進だ!!!!!!!!!!」




 ――――――――俺は、先駆者だ。


 風に乗るぜ。











「これめっちゃ揺れてるじゃないですか」




 俺は余りの揺れに、台車から勢いよく投げ出された。

 俺は顔面から地面に落ち、何回もバウンドする。

 超痛い……い゛っっったい…………


 マックスが軽く引きながら壊れ逝く台車を見送った。

 馬はそのまま駆けていく。

 ノジシャは俺の末路を辛辣に評価する。






「何その糞見たいな動き」




「もういいもんっっっ!!!!! 帰るっっっ!!!!!!!!!!」









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