第34話 「エーデルワイスの心配」
戦乱の後始末も完了してしばらく経てば、俺もおおよそ普段通りの生活に戻る。
変わったことといえば、使用人や兵士たちの俺を見る目は、魔将を倒した英雄に対する敬意に満ち満ちていた。
俺は少しばかり鼻を高くしてしまう。
今もなおアルデバランやカレンデュラ、ステラは俺の武勇伝を聞きに毎日のように来る始末だ。
こいつらの憧憬に満ちた俺を見る目は、俺の優越感を擽る、
戦話をガキ共に教えてやるのも英雄の務めだと、俺は仕方なく毎回相手にしてやるのだ。
英雄になるのも楽じゃないが、なった後も楽じゃないぜ。
でもこれも貴き者の義・務ってやつなのかなぁっ!!!
「流石です兄様!!! 僕も兄様のお役に立てるように稽古を頑張りますっ!!!!!」
「お兄様は凄すぎです。妹として誇りに思いますわ」
「ステラも大きくなったら勇者になるーーー!!! アル様はお供にしてあげるからね!!!」
「ハーーーッハッハッハ!!! いーやーだーなー!!! ちょっと褒めすぎではないのかーーー!? くぅーーーッッッ!!!」
最近アルデバランは剣の稽古を頑張っているようだ。
筋がいいとダーヴィトが笑っていた。
歯に衣を着せないアイツがそう言うのだから、その才は相当なものであることが伺える。
うむ。励めよ。
カレンデュラは赤く染まる頬に手を当ててくねくねと体を揺らしている。
こいつはなんだか最近、俺にずっとべったりとしている。
最初は俺を心配していたからのようだったが、今は慣れが生まれたのかこの距離感が普通になっている。
なんか四六時中、監視されてるみたいなんだが……
まぁ可愛いからえぇか!!!
ステラはもはや何も言うまい。
こいつはバカだ。
最近の俺の日常はそんなところだ。
あとは父上たちが本格的に忙しそうに魔物から防衛をしていて、なかなか会えない。
俺も兵士の治療に駆り出されたりしている。
血を見るのも慣れないが、吐き気は抑えられるようになってきた。
いや慣れてきたのか。
「ご歓談中失礼いたします。坊ちゃまに来客です。先代様より坊ちゃまが対応せよとの言伝がございます」
「……俺が? わかったけど……」
そうしていると来客のようだ。
何故かお爺様に俺が来客対応するように言われる。
えっ!? どうしろってんだよ!?!?!?
俺マナーとか知らんし!?
アドリブきかせられるほどコミュ力ないんだけどぉっ!?!?!?
俺はがくがく笑う膝で応接間へ向かう。
その足はひどく重く、一歩踏みしめるごとに後ろ髪を引かれる思いになる。
ドアノブに手を掛けるが、待ち受ける敵に戦々恐々として指が動かず。
中々開けられない。
給仕のため控えているサルビアが、見かねたのか俺の手にその手を添えて捻る。
なんてことを……
カチャリ、と音が鳴る。
そして地獄の扉は開かれた――――――
「――――――ぉ兄ちゃん……!」
「エーデル!?」
部屋の中には少し子供が着るには艶やかな黒いドレスを着たエーデルワイスと、奥にはもう一人青年がいた。
エーデルワイスは立ち上がり、俺に向き直って駆け寄ってきて俺の胸板に手を添える。
「カレンちゃんからお手紙で聞いたよぉ……風邪ひいちゃって大丈夫だった……? お兄ちゃんがとっても苦しそうだったって聞ぃて……わたし心配したんだょ……?」
エーデルワイスはうるうるとした目で、俺の服の裾をつかむ。
フヒヒっ!!! ふよんと俺の二の腕にロリ巨乳が触れる。
だめだよ!? そんなに無警戒じゃ……!
そんなおっきなデカデカ胸筋さん男に押し付けて……!
怖い人に連れていかれちゃう前に、俺が色々教えてあげるからね♡
「ありがとな♡ もう治ったよ♡」
「よかったぁ……………ぇへへ………」
エーデルワイスの健気な姿に辛抱たまらず、俺は近寄って頭を撫でる。
サラサラのモフモフだねぇ……お嬢ちゃんいい匂いだねぇ………
黒髪ツーサイドアップの少女は目を瞑って、子猫のように俺にすり寄ってくる。
ん゛ぉ゛お゛!!!!!
がわ゛い゛い゛ね゛ぇ゛!!!!!!!!!!!
「んん゛っ゛!!! ……それでどうしてここに?」
「お父様と……お兄様が…………ゎたし…………は……婚約者だからって………しばらくここにいてって……」
エーデルワイスは婚約者の単語が出ると、顔を赤くしてもじもじとする。
艶やかな黒髪の先を指先で弄り、幼いが肉付きのいい太ももをすり合わせている。
家族公認の仲ってことか……?
責任取らなきゃ♡
「マジ!? やったぜ!!! よろしくな!!!」
「………ぅ……ぅん……! わたしも……嬉しぃ………!」
俺の婚約者ははにかみながら、分厚い胸の前で小さな両拳を握り。
たどたどしい言葉で、俺との共同生活を喜ぶ。
こんなんもうお嫁さんだろ。
違うか?????
…………あっ。ヤバい!!!
奥に待っている方がいたことを全然気づかなかった!?
「たっ……大変失礼をいたしました。アルコル家が長子アルタイルと申します」
「いえ。婚約者である私の妹と、仲睦まじいようで何より。ツア・ミューレン伯爵が長子クラウスです。どうぞお見知りおきください」
クラウス殿というこのエーデルワイスに似た青年は、鷹揚かつ柔和に微笑む。
骨格はそこそこしっかりしているが、どこか頼りなさげでなよっちい。
失礼だが気弱そう。
いきなり父上みたいなのに出てこられるよりは、全然話しやすいからいいけどさ。
「この度は戦勝されましたこと、お祝い申し上げます」
「ありがとうございます。部下たちの奮闘のおかげです」
「ご謙遜をなさる。お若いのに大変ご立派です。アルタイル殿のご活躍は王都にも届いております」
「それは本当ですか?なんだか気恥ずかしいです」
まじか~~~国中に俺の活躍が知れ渡ってるのか~~~!
これは俺の英雄譚なんかを劇なんかで聞いて、女たちが俺に憧れちゃうパターンだなあ!!!
世間のモテない男達よすまん……
美女の心を俺が独占してしまって……すまーーーーーんっっっ!!!!!
「若き英雄の声望は陛下も称賛されておられますよ」
「それは大変光栄です」
「本当だよお兄ちゃん…………すごくかっこいぃ……よ……?」
気を良くした俺は、エーデルワイスも交えて雑談をしたことで自然と舌がまわり。
気がつけば長々と話し込んでしまった。
煽て上手なんだもん俺も随分と胸襟を開いてしまったよ。
サルビアが数回目のお茶を変えた頃、彼は俺に帰郷の意を申し出る。
「申し訳ありませんが私はこれにて失礼いたします。この度の戦乱で財務も業務に追われておりまして……」
「それは大変です。私のことはお気になさらず」
「ご配慮痛み入ります。積もる話はまた次の機会といたしましょう。エーデルワイスをお頼みします――――――エーデル。失礼のないようにな」
「わかりましたわ。お兄様。お気をつけて」
クラウス殿はそっとエーデルワイスの頭を撫でると席を立つ。
俺は未来の義兄にいい顔をするために、拙いマナースキルを総動員して礼儀正しく挨拶をする。
「クラウス殿。大変かとは思いますが、お仕事頑張ってください」
「ありがとうございます。楽しい一時でした。それでは失礼いたします。」
急ぎ帰郷するクラウス殿を見送る。
話を聞いたのか彼と入れ替わりに、ドタドタとガキどもが出てきた。
「――――――エーデルちゃん!!!」
「カレンちゃん……!」
「ここにしばらく逗留されると聞きました! 嬉しいです! いっぱい遊びましょうね!!!」
「エーデルさんがいてくれて僕も嬉しいです! 兄様のお話をいっぱいしましょう!!!」
「……ぅん……! ……みんなよろしくね……」
エーデルワイスとカレンデュラは手をとり合い、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜び合う。
あ~ロリの戯れかわいい~~~
アルデバランも含めて、こいつらが仲良くなれたようでよかったぜ。
前の誕生会の後、いい感じにノジシャたんが面倒見てくれたからな。
エーデルワイスもずっと明るくなったことを、クラウス殿も喜んでいたようだ。
照れてるエーデルたん………すごく可愛くて………オイシソウだったなぁ……………
今日から始まるエーデルワイスとの生活……!
楽しみだぜ!!!
フヒヒっっっ!!!!!
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