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第33話 「えっ? 俺に婚約者?」




 貴族の誕生会は身内でやることが多い。

 親しい人間なら呼ぶこともあるが、それぐらいだ。


 俺としては親しくないやつが来られても、緊張するだけだからよかった。

 誕生日くらい気楽に過ごしたいぜ。




 なぜこんな話をしたのかというと、今日は妹のカレンデュラの誕生日だがらである。

 プレゼント文化はこの国はないが、俺は得意のアイテムボックスを利用したマジックを披露した。


 結果めっちゃウケた。

 よいしょも入っていたんだろうが、カレンデュラも大喜びだ。

 父上とか酒入ってるせいかもう頭おかしくなってる。絡みがウザい。




 だが妹よ。

 その俺を面白い観察対象のように見つめるのはやめてくれ。

 お前の目……怖いよ……






「カレンデュラはこの前、ブロンザルト領に行けなかったからね! まぁノジシャには後で引き合わせて挨拶させるけど! そんなわけで私なりにプレゼントを用意したんだ!」


「嬉しいですお父様! プレゼントとは何なのでしょうか?」


 カレンデュラは俺の後にプレゼントを用意したという父上に、期待を込めて足に抱き着く。

 父上はにんまりと笑うとある人物の方に向かい、一人の女の子を呼んできた。




「お前のお友達になってほしい子を紹介したくてね! 同い年の子がいいと思って招待したんだ! こちらツア・ミューレン伯爵のご息女だよ」



「…………エーデルワイス・ツア・ミューレンと申します。お誕生日おめでとうございます」



「アルコル侯爵が娘、カレンデュラです。本日は私の誕生日に来てくださり、ありがとうございます」



 少しばかり反応が鈍かったのが目についたが、紹介された黒髪の少女は自己紹介を大過なく行った。

 小柄だが美しい顔立ちの美少女だ。

 艶やかなツーサイドアップの黒髪とは対照的に、その肌は純白で美しい。


 将来はセクシーな美女になりそうな顔立ちだ。

 でもこのぐらいの年だとまだ可愛らしさが残っており、絶妙なバランス。

 俺興奮。




 てか身長年齢からしても小さいのに、胸部装甲大きくない?

 マジ? もうこんなに膨らみが見えるの?


 ロリ巨乳やんけ!!!

 これ唾つけとこ!

 あわよくば違う意味でも……ぶっひひぃーーー!!!




 だが気の強そうな釣り目と、細い眉は不安であるのか垂れ下がり。

 どこか目が泳いでいる。

 うんうんあまり注目されるのは嫌だよな。


 派手な見た目とは裏腹に、中身インキャっぽいし親近感湧くよ。

 お兄さんと仲良くしない? ふひぃっ!!!






 その時背後より声がした。

 世にも恐ろしく低い声に背筋を凍らせ、息が引きつる。




「ツア・ミューレン伯爵は宮廷貴族の大家だ。貴様の婚約者とし、アルコル家の財務官僚への影響力を高める狙いがある。この婚約は我が領への戦争支援予算を増やすことを狙うものだ」


「お……お爺様……?」


「婚約者と良き関係を築くことを貴様に命ずる。理解したなら疾く返答せよ」


「はっ……はい……」


 俺は激しく頷きながら返答する。

 お爺様はぎろりと俺を睥睨すると、そのまま去っていった。


 ……おっ……おっかねぇ~~~~~!?!?!?




 てかどういうことだよ!?

 いきなりそんなこと言われても、俺ここで何すりゃいいんだよ!?

 そもそも事前に言えよ!!! 本当にさぁ!?!?!?


 いいか? コミュ障には初対面の人と話すとき事前の準備が必要なんだ。

 何を話そうかとかいう細かいことじゃない。


 心が準備を必要としてるんだ。

 わかるかな?




 それを! 年頃の! 娘と! しかも! 突然の! 婚約者と! できるわけ! ないだろ!?!?!?


 でもお爺様には文句を言えない俺であった(笑)






「(何とかしなければ……)」



 そう思って俺はエーデルワイスちゃんを見る。

 今はカレンデュラを話しているようだ。


 二人とも笑顔だがどこか顔が強張っており、偶にごく短い沈黙がある。

 話している内容も、社交辞令の域を出ない。




 うわ……これ距離を測りかねてるやつだーーー!!!

 二人とも妙に子供らしくなく落ち着きがあるのが、仇になってるーーー!?

 これってどう見ても子供の距離感じゃないでしょ!?

 両者の性格が最悪に調和してるやつーーー!!!




 そうだよね!

 いきなり誕生日会に初対面の人が呼ばれても、微妙な空気になるよね!

 そこまで仲良くないやつのお誕生日会とか、呼ばれて行っても困るよね!


 善意が地獄をつくったやつだーーー!?

 俺も覚えがある……良かれと思ってやった行動……余計なお世話と言われ傷つく心……

 やばい過去の黒歴史が俺を襲う。ねぇやめよ?




「それでは楽しんでいって下さいませ」


「えぇ。お話しして頂きありがとうございました」


 あっ! 話がきりのいいところで、他の人に挨拶するといって挨拶を切り上げたぞ!

 二人ともあからさまに笑顔が自然になってる!?

 うわぁ! いたたまれねぇ!


 てかエーデルワイスちゃんこっち来てる!?

 そうだよね! 俺婚約者だもんね!

 次俺だよね! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……






「ツア・ミューレン伯爵が娘、エーデルワイスです。カレンデュラ様の兄君と聞き、ご挨拶に参りました」


「アルコル侯爵が長子、アルタイルです。本日は私の妹の誕生会にお越しくださり、ありがとうございます」


 ハイ定型句終わり。

 これでゲームセットですね。




「……アルタイル様は既にご存じでしょうか? 私たちがその……え……と……」



 エーデルワイスは頬を赤らめて少し視線を下げる。


 が…………がわ゛い゛い゛ね゛ぇ゛!!!!!!!!!!!


 そうだね♡ エーデルワイスたんはお嫁さんになるんだよ♡

 ウェディングドレスはどうしようか♡

 式場も考えないとね♡




 婚約者なるなる~

 いやもう結婚するする~~~


 この国はハーレムOKだからね。

 いつ誰と結婚しようが誤差でしょ。




「えぇ実は先ほどお爺様から聞いたばかりでして……まだ実感がわいていません。ですがあなたのような美しい方が妻になってくれたなら、私は嬉しいです」



「…………!? ……ぁ……ぅ……」



 やべぇっ!?!?!? つい本音が出てしまった!?

 エーデルワイスたん絶句してるよ…………

 やっぱ俺キモかったのか……


 歯の浮いたような台詞で口説くのは、イケメンじゃないと駄目だったんだ……

 早くも終わった…………お爺様に殺されるんだ…………




 ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!

 どうする俺!?


 この苦境を打開する、一番冴えた策はなんだ!?

 コミュ障ができる会話……俺のすべてをここで発揮しないと…………


 死ぬッッッッッ!!!!!!!!!!!




 生存本能がフル回転する。

 俺は今まで生き抜いてきた男。


 どんな苦境も乗り越えてきた。

 だから俺はいつでもなんだって乗り越えられる。


 それがこの答え(ビューティフル・アンサー)だ。






「エーデルワイスさん。よろしければ私が家族を紹介します。エスコートしますよ(会話ができないなら……陽キャをぶつけんだよ……!)」



「はい……よろしくお願いいたします……」



 我ながら妙案過ぎる、一世一代の策を見出す。

 婚約者となる少女は頬を赤らめながら小さな声で答え、深くお辞儀をした。











 彼女を案内する際に、やらなければならないことに気づく。

 家族の所に行くまで、間を持たせなければならなかった。


 失念していた。

 だが俺ならできる! 長子だから!!!




「カレンデュラとはどんな話をしたんですかぁ!?!?!?」


「はい……その……楽しく……お話しさせていただきました……」


「あ、そうですか……ハハ……」


 うわぁぁぁぁぁ興味ない人に、適当に会話終わらせるってアピールじゃんこれーーー!!!

 雑に相手されて、話切り上げられちゃったよぉぉぉ!


 もう取り付く島もない奴じゃん!!!

 俺前世でよくやられてたもん!!!

 エーデルワイスたん顔を強張らせて俯いてるし!!!




「カレンデュラは少し話しづらかったでしょう!? まだ同年代の友達がいないので許していただきたく思います!」


「………ぇ……と………いえ。とてもいい方でしたわ」


 もうだめだ……おしまいだ……

 まるで俺と会話する気がない……


 いや! どうせここで俺は終わるんだ!

 死ぬまでガンガン押し続けるぜ!




「そうですか!? どの辺がよかったですか!?」


「えっ? ………その………えーと……」


 エーデルワイスたんは突然の押しの強さに困っている。

 いややっぱり妹のこと苦手だったんだな。

 そこは同感するよ。


 彼女の愛らしい顔を食い入るように見つめる。

 ここまで来たら意地でも、君の本心をほじくってやろうじゃねぇか?


 仮にも俺たちは婚約者。

 死ぬときは一緒だろ~~~???






「…………わたしなんかに…………話しかけてくれるからです」



「え?」



「わたし、王都でも友達がいないんです…………何を話せばいいかわからなくて…………」



「…………」



 …………あ~~~そういうことね。

 いつの間にか俺たちは立ち止まり、二人で話していた。

 エーデルワイスはドレスの裾を強く握り唇を噛みしめながら、ゆっくりと自身の胸の内を明らかにする。






「みんないつも……すぐ面白いことを言えて……楽しそうに会話できて……わたしはなんて答えればいいのか、わからなくて……黙ってしまって…………」



 彼女の悲痛な言葉に、強く共感できた。

 俺もまさに今もそうだからだ。


 緊張すると考えがまとまらなくなって話せなくなってしまう。

 今世でもずっと悩んでいることだ。わかるよ……




「アルタイル様も…………こんな暗い子嫌ですよね…………何を考えているかわからないつまらない子…………そう言われました……………」



 涙目で俯いたエーデルワイスは痛々しく笑う。

そうか……こいつも……………なら…………!






「俺はエーデルワイスたんの言葉を最後まで聞くよ。それならよく考えてから、自分の一番言いたいことを話せるだろ?」



「え…………?」



 エーデルワイスは驚いたのか呆けた顔で、俺の顔を見上げてじっと見つめる。

 怖がらせないように微笑みかけながら、視線を合わせた。




「俺も何言えばいいかわからないこと、よくあるからな。だから俺たちのペースで話してこいうぜ? 名案じゃん!!!」


「はい…………はい。本当に……ありがとうございます……!」


 エーデルワイスは瞳を潤ませながら、嬉しそうに俺に微笑む。

 うっ……不覚にもドキっと胸が高鳴ってしまった。




「アルタイル様…………お兄様みたいです。優しいです……」


「兄君がいるのか?」


「はい……年は離れてますけど」


 エーデルワイスは照れ臭いのか、もじもじしながら俺を兄のようだと言う。

 ぶひょっっっ!!!

 妹萌えーーー!!!


 お兄ちゃんって呼ばれるのが夢だったんだ!!!

 オタクなら当然だろうが!?

 俺がどれだけエロゲやってきたと思ってんじゃ殺すぞボケ!!!


 やってやんぞこら!!!

 文句あんのかアァ!?!?!?






「そっかそっか!!! なら俺のことはお兄ちゃんって呼んでいいぞ!!!」



「え……?」



 う……うわぁーーーーー!?!?!?!?!?

 また口が滑ったーーーーー!!!!!!!!!!!


 今ついさっきまでいい感じだったのに!!!!!

 何やってんだ俺のバカバカバカ!!!!!




 バカじゃん?????

 なんで言ったん?????

 マジでしょーもな??????????






「うん……お兄ちゃん」


「あぁ!!!!!!!!!!!」


「わたしのことは……エーデルでいいよ……?」


 ぶっひひーーーーー!!!

 も、萌えーーーーー!!!


 結果よければすべてヨシってな!!!

 やっぱ俺のすることに間違いはねぇッッッ!!!!!






 あ! アルデバランとカレンデュラがいた!

 …………ノジシャたんも来てるやん!?

 親族枠か!


 完璧な布陣だ……!

 あいつらも巻き込めば、会話も途切れないだろ!




「よし! 弟を紹介してやるよ! 行くぞエーデル!」



「ま……待ってぇ……はやいよぉ……」



 俺はエーデルワイスの手を引いて走り出す。

 エーデルワイスは困った声を出していたが、その時の俺にはテンションが上がりすぎておかしくなってしまい。

 彼女を後ろに引っ張っていたから聞こえていなかった。




 だから俺は当然わからなかった。

 その時エーデルワイスは笑顔でいたことを。


 俺たちが出会った思い出は、彼女はずっと忘れないと言っていた。

 この出会いからエーデルワイスの止まっていた世界は、再び動き出したのだと言っていた。








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 『間が悪いオッサン、追放されまくる。外れ職業自宅警備員とバカにされたが、魔法で自宅を建てて最強に。僕を信じて着いてきてくれた彼女たちのおかげで成功者へ。僕を追放したやつらは皆ヒドイ目に遭いました。』

追放物の弱点を完全補完した、連続主人公追放テンプレ成り上がり系です。
 完結保証&毎日投稿の200話30万字。 2023年10月24日、第2章終了40話まで連続投稿します。



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― 新着の感想 ―
[一言] カレンデュラにとって珍獣兄アルは観察して中身が出ないよう(中身って言っても、うんこじゃない)見張ってるのかも知れない エーデルに変な真似しちゃダメだぞアル! 亡きナターリエが哀しむ。。…
[良い点] えっと……アル様を心配してくれていたカレンデュラとアルデバランが可愛かったです(#^.^#) 気を失うほど強いんですね笑 そして、ステラもなかなか凶悪で。でも、うさぎパンツが可愛いです。 …
[良い点] 子供ってスカートに入りたがるよね笑
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