第25話 「いとこのお嬢様」
トロルを倒して大量のスキルポイントをゲット。
つまり俺の体調改善にも、大きく貢献したという事だ。
トロル戦までは吐血することも多かったが、今となっては皆無。
油物は体調のいい時にしか受け付けなかったが、今では毎日出されたものを食べれている。
そんな折に父上は朝食時、唐突にある事実を告げる。
俺はエビフライを食べながら疑問を呈する。
「二人とも。従姉に会いに行こう」
「従姉? いたんですか?」
「いとこ?」
今まで聞いたこともなかった、親族の話。
というか兄弟とすら疎遠だった、病弱過ぎた俺。
風邪をうつされたら大事だと、様々な人物と面会の制限をされていたのだ。
しかし元気いっぱいの権化ともいえるアルデバランも、ピンと来てない様子。
今までそんなこと聞いてなかったんだけど?
「アルタイルは最近あまり風邪もひかなくなっただろ? だから前々から考えてはいたんだけど、初めてのお出かけをしようと思ったのさ。カレンデュラはギーゼラと実家に帰ってるから残念だけどね」
「なるほど~!」
そういうことか~!
……ん? 俺の質問の答えにはなってなくね?
「そういうわけで明日行ってみようか! とてもかわいい子だよ! 一回会っただけだけど礼儀正しいいい子だったなぁ~」
「わかりました!」
「お出かけやったーーー!!!」
可愛いのか!!!
楽しみだなーーー!!!!!
次の日俺は馬車で、隣のブロンザルト領に行った。
昼前には到着した。
馬車が揺れてケツが痛い。
父上は平然としている。
謎にスタミナあんだよなこの人。
「私の妹であるエルメントラウトが嫁いでいるんだ。ブロンザルト家にはね」
「私の叔母上ということですか」
「僕の叔母上?」
「ああ。そうなるね。直接会うのは久しぶりだから楽しみだなぁ~」
そんなことを話していると、森を抜け視界が開けてきて小高い丘陵地帯がみえてくる。
そこには赤レンガの大きな屋敷があり、自分が他の領地に来たことを実感させた。
自分の屋敷も未だに外から見慣れないもんな。
アルデバランは馬車の中から、小窓の外を見るのに夢中だった。
今日は乳母のヘンリーケとステラ、そして執事のマックスが供になっている。
あとは護衛の兵士たちだ。
身内でのお出かけだし、護衛以外は身の回りの世話もあまりいらないからな。
周りを見るとステラはガチガチだ。
人見知りだし、父上強面だからな。
子どもなので座って居るが、顔は青白いまま無言で固まっている。哀れな。
父上が恐らく微笑ましそうにアルデバランを見ている。
悪人面なんだもんこの人。
悪だくみをしているようにしか見えねーんだよ。
屋敷の前に着くと門には衛士が屹立し。
マックスが連絡するとブロンザルトの執事に案内を受け、俺たちは屋敷に入っていった。
「ようこそいらっしゃいました。お兄様、お久しぶりですわ」
「エルメントラウト! 元気にしているかい?」
「ええ。おかげさまで。お兄様もお元気そうで何よりですわ。アルビレオお兄様はお元気ですか?」
「元気元気! 前の戦争が終わると、すぐに王都への外交に行ってくれたよ!」
「……お労しやアルビレオお兄様。あまりいじめてはいけませんよ?」
「私も心苦しいんだ。でもお家のための大切な仕事なんだよ。それに向こうで遊べるだけのお金は十分渡しているしね。帰ってきたら王都の楽しい話を聞かせてくれるさ」
「まぁ! 相変わらずよく回る口ですこと」
父上によく似た、派手な顔立ちの金髪美女の出迎えがあった。
おそらく叔母上だろう。
彼女が呆れたように首を振る。
父アルフェッカは冷たい微笑をつくり、朗らかな声で話している。
父上、その顔はもしかして微笑んでいるのか?
嘲笑っているんじゃないよね? 怖いよ。
「それじゃ息子たちを紹介していいかな? ノジシャはいるのかい?」
「ええ。奥に控えさせていますわ」
「それじゃ会いに行こうか。ブロンザルト子爵は?」
「今日も魔物退治ですわ。最近多くなってるみたいで……嫌だわ」
「そうか……後で話を聞かせてくれ。じゃあ行こうか」
こっちも戦争で大変なようだ。
世情とはいえ物騒な。
父上が俺たちの背中を押し、叔母上がメイドに戸を開けさせると応接間にたどり着く。
応接間には叔母上に似た、膝まで届く美しく揺らめく焔のような赤髪を靡かせた俺と同じくらい年の頃の少女が会釈する。
気の強そうな釣り目がちの顔立ちだが、穏やかに微笑んでいる。
はぁ~すっごい美少女。
ヨーロッパ系の女の子ってこのくらいの年でも、美人って完成された顔してるよな~
叔母上と赤い髪の少女は並び立ち、俺たちに見事な礼を寸分狂いもなく同時に行った。
「今日は遠いところ遥々ようこそいらっしゃいました。ブロンザルト子爵が妻、エルメントラウトですわ。あなたたちの叔母に当たります。よろしくお願いしますね」
「同じくブロンザルト子爵が娘、ノジシャです。」
本当に同い年か疑うほど、落ち着きがあって礼儀正しい~~~
俺と同じくらいかもな!
父上も佇まいを直し、威厳のある口調で返礼する。
「本日はお招きくださり感謝します。アルコル侯爵家当主、アルフェッカです」
「アルコル家が長子、アルタイルです。本日はお招きくださり感謝します」
「アルデバランです! よろしくお願いします!」
やべぇこういう時なんて言えばいいのかわかんねーよ。
とりあえず父上の真似したが……
アルデバランとかもろその辺にいる、ちょっと育ちのいいガキの挨拶やん。
叔母上とノジシャちゃんは微笑ましそうにしてるけど。
果てしなくダルいが、貴族としてこういう時のマナー覚えなきゃだめでしょうか?
だめだよな~……
叔母上は俺たちに席を勧め、茶や菓子が並べられる。
まーたマナーだよ。
どう食えばいいんだこれは。
ぽろぽろ食べかす溢しちまうんだが?
あ、また溢した。
でも手が止まらないんだ。
「ええ。今日は楽しんでいってくださいね。身内でのお茶会なので気を楽にしてください」
「はい。ありがとうございます叔母上」
「ありがとうございます!」
いや無理だろ。
初対面の女性と話すなんて無理無理無理。
何話すの?
お貴族様の女性は何が好きなの?
金か?(偏見)
「ノジシャはアルタイル様と同い年です。仲良くしてあげてね」
「はい。こちらこそ仲良くしてくれると嬉しいです」
「はい!」
「よろしくお願いしますわアルタイル様」
「こちらこそよろしくお願いします。ノジシャさん」
あーーー! なんて話せばいいんだよ!
コミュ障には気の利いた言葉なんて出るわけないだろ!
オウム返しが精一杯だわ!
そんな俺とは裏腹に叔母上とノジシャに怖気づくことなく、アルデバランはずばずばと話す。
すげぇわお前。勇者かよ。
ノジシャたんのことも、もうお姉さん呼びか?
陽キャってグイグイ行くよな。
父上はアルデバランの話に、だらしない顔で夢中だしさぁ!
親バカ発動してるなら、俺にも助け船を出してくれよ!
多人数になると急に黙るやつのことを、少しは考えてくれよ!
「――――――まぁ! アルタイル様はもう魔法が使えるんですね!」
「はい! 兄様はすごいんです! ピカ――――って! すごいんです!」
「まぁまぁまぁ! お父様とお母様に似て賢いのね。もう戦争でも大活躍と聞いているし、将来が楽しみですわ!」
「いやぁ~私はそれほどでもないよ。でもアルタイルは超天才で超かわいいけどね! えらい!」
「いえ私などまだまだですよ。ははは」
アルデバランッ!!!!!
ナイスぅっっっ!!!!!!!!!!!
叔母上とノジシャちゃん俺のことを尊敬の目で見てるよっ!
あーーーーー!!! 気持ちいいーーーーー!!!!!
他人からの称賛気持ちいいーーーーー!!!!!
そうです俺はっ! 天才で―――す!!!
魔法は危ないから子どもは学ぶことを許されないもんね!憧れるよね!
魔法を学んでいる時点で、一人前扱いだからな。
つまり俺は大人の男であることが保障されている!
大人の魅力でメロメロかなーーー?
これくらいのガキなら、ちょっとチヤホヤしてやればイチコロだろ!
ノジシャたんも俺のハーレム入りかーーーーー!!!!!
「アルデバラン様もとても素敵な男の子ですよ。お話がとってもお上手ね。ねぇノジシャ?」
「はいお母様。とっても楽しいわ」
「ありがとうございます!」
「アルデバランは超おしゃべりが上手なんだよ! それに超かっこいい! すごい!」
「アハハソウデスネ」
……あれ? なんか俺の話すぐに流されてない?
ちょっとちょっとちょっと!!! 俺の話!?
なんでぇ!?
俺の魔法見せてあげるのに!!!
ノジシャはそれで俺に惚れてゴールインだろうが!
あぁぁぁ……俺の完璧なハーレム計画が……
なんか俺めっちゃ影薄いし……
間が持たないから、愛想笑いとお茶飲むだけしかしてないじゃん……
腹もうタプタプなんだけど……
「――――それじゃあ子どもたちは外で遊んできなさい。私はエルメントラウトと大人の話をするからね」
「そうね。ノジシャ中庭に案内をして差し上げなさい」
「はい母上。二人とも行きましょう」
「はい! ノジシャお姉さん!」
「アッハイ」
ふぁぁぁぁぁん!!!
なんか話勝手に進んでるーーー!?
なんですぐ話進んじゃうのーーー?
俺を置いていかないでよ!?
「アルタイル様。さっきは楽しめたかしら? ごめんなさいね私ばかり話してしまって」
「アッハイ。ダイジョブデス」
「そうですか? それならよかった! 中庭には私の育てたお花が咲いてるの。よかったら見て欲しいですわ。それが終わったら遊んでくださると嬉しいわ!」
「ハイ」
人生経験が間違いなく薄いであろう者からの、コミュ障転生者への気遣い。
こういうことがあるから、転生前にコミュ力を上げておく必要があったんですな。
羞恥心が募り、ますます声量は小さくなる。
「あとせっかく同い年なんだし、私のことは呼び捨てで構いませんわ。私もあなたを呼び捨てで呼んでもいいかしら?」
「ダイジョブデス。アルタイルッテヨンデクダサイ」
「ありがとう! それと敬語も肩が凝ると思うの。仲良くしたいから普通に話して下さることはできるかしら?」
「オレモケイゴジャナクテイイデスヨ」
「嬉しいわ! 私同い年のお友達ができたの初めてなの! よろしくね!」
「ヨロシクネ」
……やっっったーーーーー!!!
女の子の友達が初めてできたーーーーー!!!!!
感動なんだが!?
てかこれ幼馴染じゃーーーーーん!!!
いやーーー幼馴染ヒロインまで手にいれてしまってすまー――ん!!!
世界の嫉妬を集めてしまうイケメン貴族で悪いねーーー!!!
美少女たちに囲まれてしまうお手軽ハーレムオリ主で……ごめんねーーーーー!!!!!
「なら僕たち仲良しですね!」
「ええそうね。うふふ」
「エヘ!」
えへ!!!!!!!!!!
仲良し!!!!!!!!!!
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