第238話 「最強チート英雄アルタイル様の驚異的スーパーマジックアンサー」
お菓子を口いっぱいに頬張りながら、父上の方に向く。
なんか言われたか?
……あっ! 食べカスが口についていたようだ。
行儀が悪いと怒られてしまうな。
「ゴシゴシ! えへへ……」
「……」
服の袖でそれを拭いて、父上に笑顔を向ける。
しかし俺を見据えたままで、彼は固まっている。
何だろうか? 気が立っているから、袖で口を拭いたことを怒り始めるのだろうか?
しかし何も行動に起こさない父上。
俺は怒られないことに安堵しながら、アイテムボックスの中から再度クッキーを取り出して食べようとした。
「いやそれ今どこから出したの? 今、何もないところからお菓子出てきたような気がするんだけど?」
「………………あっ」
………………やべぇぇぇぇぇぇ!?!?!?
つい自然と虚空からお菓子取り出しちまったぁぁぁ!?!?!?!?!?
今まで魔女狩りされないために秘密にしていたのに!?
暴徒と化した兵たちに殺される!
もしかしたらあまりに可愛らしいせいで犯される!
なんでいつも周りを見ないで行動しちまうんだぁぁぁぁぁ!?!?!?
マジックだったことにして、乗り切れないかなコレ。
流石の俺の驚異的頭脳も無理だと瞬時に悟り、愛想笑いで乗り切ることにした。
「これは……その…………えへ☆」
「可愛くしても誤魔化されないよ! よしよしよしよし!!! ……じゃない!?」
「ひぃぃ……」
父上が俺を撫でながら、マジギレする。
息子の頭部は彼の両手で圧縮された。とても痛い。
可愛い俺の小さな頭は、父のとんでもない握力に潰されそうになる。
そしてクラクラしていると、彼は俺の顔を両手で挟み揺らしまくる。
「それ何!? どういうこと!? 何でお前驚いてないの!? 自覚してたってことでしょ!? アルタイル! 言わないと怒るよ!!!」
「ひ~~~ん…………アイテムボックスですぅ………」
父上が俺の頭上で怒鳴り散らしながら、問い詰めてくる。
俺は半べそをかきながら、か細い声で答える。
だが納得してくれない様子だ。
これが予想できてたから言いたくなったんだよ。
「アイテムボックスって何!? マジで何!?!?!? なんで隠してたの!? 重要なことでしょ!!!」
「言ったら何されるかわからないと思ってぇ……ものを自由に出し入れできるんですぅ……たくさん……いっぱい……」
俺の頬を引き延ばしながら、父上は俺の顔を覗き込んで吠える。
説明した内容が気に食わなかったのか、弾丸の如く質問攻めにする。
「それはどれくらい入る? 容量限界は? 消費魔力は? 取り出すときにかかる時間? いつからそれを保管していた? 重みはあるのか? 生物は入るのか? 発動距離は? いつから使えるようになった?」
俺の両頬を引き延ばしながら、怒り出す父上。
首を振り抵抗を計るも、力の差は歴然で振りほどけない。
その顔は鬼を通り越して般若のようだ。
だってこんな魔法ないじゃん。
英雄追放なんてされたら、たまったもんじゃない。
「むにゅぅ~~~痛ふぁいでひゅぅ」
「むにゅむにゅ言わない! 何よりそれ、いつのお菓子なの!?」
いつだっけ?
整理とかメンドクサイし、そんなこと覚えているわけないだろ俺が。
なんか見覚えがある入れ物から推測して、適当に答えたが、まったく自信がないので言葉を濁した。
「えーと……これは二か月くらい前? ……かも? 忘れちゃいました! えへ!」
「えへ!じゃないよ!? 食べて大丈夫なのそれ? お腹壊したらどうするの!」
「大丈夫でひゅよぉ……お腹壊したことないでひゅう……」
俺の頬を引き延ばして叱責する父上。
大丈夫だよ。今までも大丈夫だったし。
そんな時に推移を無言で見つめていた叔父上が、声をかける。
その口調は固い。
それに対して叔父上は気になる固有名詞を返した。
彼はいつの間にか人払いをしていたらしい。
俺たちの周りには空間があり、風魔法にて乱気流が発生している。
これは消音結界とも称される、防諜魔法だ。
「兄上……これは」
彼は心底吃驚したように目を見開いて、俺たちの様子を見ていた。
そして言い放たれた気になるワード。
「――――――――固有魔法<Unique magicae>?」




