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第22話 「戦争の天才」




 アルタイルがトロルと接敵する少し前。

 アルコル家現当主アルフェッカはひたすらトロルの攻撃を凌いでいた。


 彼はアルビレオたちと別れた後、巧みな用兵に魔導具罠を駆使し。

 魔物たちを逆包囲して殲滅して周り、着実に魔物を各個撃破していった。

 そしてついに敵主力であるトロルの軍勢と会敵し、激しく鎬を削り合うことになる。




 総大将の神算鬼謀というに相応しい兵士の扱いによって、魔将と思しき存在は攻めあぐねていた。


 アルフェッカの大胆な目論見により、足手まといとなる怪我人や、必要のない後方要員たちは。

 その護衛という戦力を分けてまで、後方にすべて運ばれていた

 よってアルコル軍の機動力は、瞬間的に最高潮に達していた。




 またこの時すでに数的優位も、アルフェッカの各個撃破戦術により成し遂げており。

 彼の見たてによると、戦力的には互角といったところであった。


 アルコル家当主はそれでも、負けない戦いをする自負があった。

 猛禽類のような鋭い視線が、魔物たちを射殺すように刺す。






 だがある瞬間、その均衡は思いもよらない理由で崩れゆく。


 トロルはあらぬ方向を見て、硬直したのである。






「――――――――なんだ?」



 アルフェッカは何事かと様子を見ようとすると。

 トロルは咆哮し、最前線にいる魔物たち以外がほぼすべて振り向いて一斉にこの怪物に注目した。

 この巨大な悪鬼は魔物たちの一部を引き連れて、何故か一目散に戦場を離脱していった。




 トロルたちはアルコル領の中心部方向に進んでいるが、ここにいる魔物たちを野放しにはできない。

 放置したら結局、アルコル領の村々を襲撃するに決まっているからだ。


 アルフェッカはアルタイルたちの無事を祈りながら、一刻も早くこの魔物たちを討伐し。

 領地に戻ってトロルたちを倒すことを誓う。




 しかしなぜか魔物たちは先程までとは打って変わって、時間稼ぎをしているようだ。

 本来の生態として攻撃的で単純な魔物たちであるにもかかわらず、防戦に徹しているのだ。


 これはアルフェッカとしても想定外の展開だった。

 だが遅滞戦術を取っているのだと認識すると、彼は歯噛みする。

 知恵のある魔物に統率されているのだから、普段とは異なる展開を予想してしかるべきだった。











 だがアルフェッカに福音が訪れる。

 アルコル家先代当主アルファルドの援軍の到着である。


 アルフェッカはアルファルドの部隊を見つけると、部下に手旗信号にて合図を送らせる。

 そして前当主たちの軍勢は、ある地点へ向かう。

 そこにはアルタイルによって送られた、回復魔法を使っていた回復術師も戦列に加わっていた。




 アルビレオが偶然打った妙手は、アルタイルのおかげで浮いた回復術師の魔力を魔法兵の代わりとするため。

 アルファルドの元へ送り込んだことであった。

 つまりアルコル家軍は火力において、優勢を得たことになる。




 その情報を確認するとアルフェッカは自軍を巧みに操り、ある陣形を作り上げた。






「知性ある魔物がいなくなるとやっぱり楽だね。魔法兵隊の前方をわざわざ空白地帯にしたのは、お前たちのような知能の低い魔物を釣るためさ」






 アルフェッカは自らが完成させた戦況を、歌劇団員がするように謳い上げる。

 彼の策は芸術的に結実したからだ。


 先程まで接敵と後退を繰り返し、兵力の温存に徹していた魔物の群れは。

 格好の獲物に見える魔法兵を狙い、本能の赴くままに突出した。

 この稀代の軍略家の狙う、その位置に誘導されたのだ。




「トロルがどこかに行ってくれて助かった。これで悠々と各個撃破できる」











 十字砲火だ。






 地球において現代に至っても、攻略が至難である戦法である。

 それは射程内に入ってしまうとどの方向に進んでも、側面からの攻撃が飛んで来るからだ。


 それが次から次へと来るのだから、回避は不可能に近い。

 一方向からくる攻撃を躱すのとは、文字通りわけが違うのだ。






「よしよし。訓練通りだ」




 アルフェッカは満足そうに微笑みながら、顎をさする。

 魔法兵たちは秩序だって偏差射撃を繰り返し、弾幕も途切れない。


 アルファルド率いる部隊も同様である。

 彼の息子が鍛えに鍛えた兵たちは、育成者とある程度離れていてもその真価を発揮できる。

 

 時折アルフェッカは、そちらにも気をまわして合図を送るが。

 魔物たちが躯を曝す姿を、淀みない視線でしげしげと観察する。






「一丁上がりっと。早く帰って子どもたちと遊びたいけど、トロルの動向が気になるなぁ」




 アルフェッカは肩を鳴らし、欠伸をする。

 魔物たちは全滅だ。

 魔なるものたちは一匹残らず、生命の鼓動は消え失せた。


 そしてこれを成したその男は、腕を組んで暫し考え込む。

 そうしているうちに、ドタバタと兵士たちが動き回り。

 ある人物がアルフェッカに近寄ってきた。






「よくやったアルフェッカ」



「はい父上。助勢痛み入ります」



 アルフェッカが恭しく頭を下げて礼を告げた先には、その父アルファルドがいる。

 親は実の息子を見つけるや否や、淡々と用件のみ告げた。






「よい。して気になることが一つ。トロルと思われる魔物が儂らの軍勢があるにもかかわらず、我らの攻撃による被害を無視して通り過ぎていった。おそらくアルコル領中心部へと向かっている」




「……やはりそうですか。実は――――――」




 アルフェッカがそれまでの経緯をアルファルドに報告すると。

 彼は老人とは思えない筋肉質な腕を組み、唸るように息子である現当主に銘じる。




「すぐさま反転し、トロルを討伐せよ」


「はい父上。残った兵を最速で再編成します。父上は残った兵をおまとめください」


「うむ」


 アルファルドはそれだけ聞くと席を外してしまった。

 アルフェッカは慣れた様に、後ろ姿を見送ると。

 すぐに兵を迅速に再編成し、号令をかける。


 その顔には映っていないが、彼の内心には焦りがあった。

 いつもより心なしか早口で、総大将として全軍に命じる。






「全軍に告ぐ。残敵を掃討するため、トロルを捜索せよ」








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[一言] その通り集中砲火をくらうと 逃げ場がなくなりますよね!
[良い点] いきなりうんこ集めろって言われたら、まあそうなりますよね(´∀`) サルビアたちの反応はごもっとも。 撒くなら人間のうんこよりは牛糞のほうがいい。そして過剰に撒きすぎると土が死ぬから撒きゃ…
[良い点] 堆肥はしっかり醗酵させてまかないと疫病の元にしかならんよ
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