第211話 「神授の新奥義 ステータスアップ」
「そんなものが……? 是非教えてください!」
『わたしは忙しい。一度しか言わないから、よく聞きなさい――――――』
バジリスクよりも圧倒的に強い、魔将すら倒せるかもしれない技術。
実在し俺が使えるというなら、是が非でも手に入れたい代物だ。
そしてテフヌト様の教えを聞くと、俺は得心がいく。
聞けば聞くほどに、考えれば考える程に、確信は深められてゆく。
「―――――――これは」
今までに聞いたこともない技術。
そして俺くらいしか、確かにできないだろう、
伝授された俺は衝撃を受ける。
それは歓喜のインパクト。
今まで考えもしなかったアイデアだ。
自信を深くして、それを成し得るステータスを見つめる。
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アルタイル・アルコル
ステータス
筋力 43
耐久力 45
敏捷力 40
魔力 9999999999999999999999999999999999
知力 76
スキル
数学lv17
科学lv14
社会学lv13
礼法lv24
芸術lv1
現代知識lv24
製作lv8
舞踏lv1
頑健lv76
病気耐性lv76
毒耐性lv60
苦痛耐性lv86
マルチタスクlv30
高速思考lv30
剣術lv1
気配察知lv38
火魔法lv25
水魔法lv73
土魔法lv56
回復魔法lv99
魔道具作成lv30
魔力操作
【出力】lv52
【制御】lv88
【変換】lv38
【具現化】lv40
【干渉】lv88
【効率】lv37
スキルポイント残り0
チート
魔力世界最高
全スキル・魔法取得可能
成長無限
成長率アップ
アイテムボックス
ステータスオープン
スキルポイント自由割り振り可能
全言語読み書き
状態異常
装備
魔法剣
皮の魔法鎧
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今までとは別人になったような、
思考にかかっていた靄が晴れたような、そんな感覚。
ステータスの数字では差異がないが、意識がクリアとなり、歴然と頭の働きが明敏となったことを実感する。
分析するにステータスの数値に、スキルレベルの係数で補正をかけられているのかもしれない。
当然マルチタスクも、その倍率に影響があると推測できる。
それにしてもステータスの数値は具体的な指標があれば……
そんな思索にふけるも、思考を引き戻す。
バジリスク戦後も、多くの経験を積んだ俺。
そして現在さらに爆発的に上昇した、このステータスならできる。
魔法という神造技術を、人間レベルで極限までに活用した現象を。
『発動方法は、自分で模索しなさい。すでにそれができるだけの能力は備わっている』
「こんな方法が……これなら……!」
『発動する際は、絶対に命中させなさい。対策を打つことは難しいけれど、敵に警戒させないに越したことはないし。何より初見殺しでもあるから、情報流出は避けるように厳守せよ』
誰もが使えることを想定しない技術。
今も世界中で、恐らく魔王たちも研究しているかもしれない仮想技術。
しかしこの初めて耳にした新概念は、実用の域に達しているのは俺のみである可能性が高い。
だからこそ目の前のテフヌトは警告する。
その発案方法までにさえ、釘をさしてきた。
『何度も言うけど、これの修行の仕方は考えなさい。自分で編み出したように、修行するのよ。お前では考えもつかないようなことをしたら、私が吹き込んだと気づかれる可能性がある』
自ずと気が付いたように発見して、そして試行錯誤したように見せかけなけらばならない。
ここまで念押しされるのは、俺が注意してもしきれないほどの事情を背負っているから。
俺を転生させた張本人である、トート様との兼ね合いがあるのだ。
恐らく俺はいつも何かしらの存在に監視され、命は握られている。
この方にとって最低限の利用価値を保証することに背けば。
即座に切り捨てられ、殺されるのだろう。
神威からくる絶大なプレッシャーで、ここまで俺を圧迫して脅しつけてきているのだから。
『お前はスキルレベルを上げることに終始している。それ自体は間違ってはいない。しかしその運用が甘すぎる。愚劣にも程がある。がむしゃらに修行するだけで勝てるだなんて、甘い世界ではない』
反論もなく、彼女の説教を甘んじて受け入れる。
先ほどまでの訓示は、俺の自尊心を吹き飛ばすに十分以上のものであった。
そして毒舌の追撃が、いくつも襲い掛かる。
プライドが粉々に粉砕されながらも、涙目で受け入れるしかなかった。
『人間たちは万能とは程遠く、それぞれ適性がある。それを自覚し、己に見合った修行をしなければ効率的に成長などできない。それすらもこの期に及んでわからないお前が、突然冴えた修行法など考えつくはずもない。私の指示通りに修行することを厳命する。』
「はいぃ」
気弱な悲鳴ともつかない返答が、己の喉奥から漏れる。
幼い少女の如き声が小さく振り絞られながら、か細くなっていた自信が心の奥底で折れた気がした。
本当に数々の酷い目に遭いながらも、俺なりに頑張ってきたのに……
子育てで自尊心を折ることは、避けるべき行動だよぉ……
『今も邪な企みをしているに違いないあの下種に、万が一にも露見するわけはいかない。それが現時点での最善手でもある。わかったわね?』
「はいぃ……命に代えても……」
トート様のことを言っているのだろう。
脅しつけるように駄目押しの勧告を送り付けてきた。
尋常ではない眼光に、何度も首を縦に振って。
上目遣いで慈悲に縋ろうとするも、そっけなく俺から視線を逸らすテフヌト。
『あいつの筋書き通りにいかせるか』
最後に憎々し気な言葉を一言。
その瞬間、半透明の少女は掻き消えた。
ただでさえ気位が高いのに機嫌まで悪い神の前に、一人対することは非常な労苦を必要とし。
嵐が去ったことを確かめるや否や安堵のため息を吐くと、どっと冷や汗が流れ出した。
神々のいざこざに巻き添えになるのは、ごめんだ。
だが強制的に運命に絡めとられた俺は、成す術なく現状に甘んじる以外になく。
今までの選択が、何をもたらすかはわからない。
力を失ったとはいえ、容易に俺の存在を消し飛ばせると確信できる、女神の残照を恐れながらも見つめると。
空間に浮かんでいた波紋はいつの間にか、どこかへと溶けていった。




