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第21話 「絶望の時 覚醒の一撃」





 ズバッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!






『ガァァァァァァァァァァッッッッッ!?!?!?!?!?』






 トロルの左眼球に向けて、俺の水魔法は当たる。

 感触からして完全に眼球を深く切り裂いた。


 緑の肌をした怪物は左目を抑え、暴れながら天に向けて咆哮する。

 狂ったようにやったらめったら棍棒をあちこちに振るうが、兵士たちには誰にも当たらない。

 味方のゴブリンを同士討ちしている始末だ。






「今だっ!!! 総員雑魚を殲滅しろっっっ!!!」



「「「「「「「「「「ハッッッ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」




 叔父上は若干破顔しつつ兵士たちに命令し、魔物たちをどんどん駆逐する。

 俺もそれに加勢しつつ、ダーヴィト達負傷した兵士を治療する。


 魔物たちは形勢逆転したと悟ったのか、逃げていくものもいるが背中を撃たれていく。

 程なくしてほとんどすべて討伐されていった。








「……よし! トロルが動けないうちに態勢を整えろ!!! 決して深入りするな!!! ここは一旦退きゃ――――――」






『ククク…………中々旨い水だったぞ?』






 トロルは左目が潰れてなお余裕を見せているが、その右目は血走り、強烈な殺意と怒気が迸っている。

 息遣いはひどく荒いが、しかと俺を見据え卒倒するような殺気を向けてくる。


 ふざけるな……

 あの攻撃でまだ戦闘行動できるのかよ……!

 普通なら脳みそまで届くくらい、完璧に入ったはずなのに……!


 叔父上も絶句している。






『正直驚いた。貴様のような幼体がこれほどの魔法を使うなど……既に貴様の器の底は見透かしていたと勘違いしておったわ。魔力に長けていることは警戒していたが、まさか曲げてくるとはな……』




「あ、慌てるな!!! お前達! 動きを止めないで――――――」




 トロルは冷静な口調だが、言葉には憎しみが籠っている。

 叔父上は平静を取り戻し、指示をしようとしたが――――――











『こいつは礼だ「fortis」』






 ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……………………………………!






 トロルの体から禍々しく揺らめく邪悪なオーラが立ち込める。

 この現象と呪文、魔法陣を見れば、誰でも何が起きたか一目瞭然だった。






「あ………れは………強化魔法……?」






 叔父上が呆然とそれを口にする。

 あれはダーヴィトが使っていたものと同じ、強化魔法だ。


 武官長はさっきまで、このトロルを必死に押さえつけてくれていた。

 それが人間の身にできたのは何故か?






 ダーヴィトが強化魔法を使っていたからだ。






 トロルの体がブレる。




 するとトロルの周りで警戒していたはずの兵士たちが消し飛んだ。






 ――――――――――ドォォォォォォォォォォンッッッッッ!!!!!!!!!!




 ゴォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!!!!!!






 俺がぼーっとしていたからであろうか、一拍遅れて凄まじい轟音が鳴り響く。

 地は抉れ、隕石が落ちたかのような惨状だ。

 

 砂塵は俺のところまで吹き荒れ、肌に痛いほど突き刺さり流血する。

 人の破片が舞い、絶叫と肉が潰れる不協和音が奏でられる。






「う……………………うわぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」



「何なんだこれは!?!?!? 何なんだ!?!?!?」



「なんで…………………みんな死んでるんだよぉぉぉぉぉぐげ」




 兵士たちは慄然とし、恐慌状態に陥っている。

 誰もが発狂寸前だ。


 ついさっきまで仲間の肉片まみれだった兵士が、肉片に変わった。

 声が出ない。何が起こった?






「ふざ……けるな………………こんなことあっていいのか……ふざけるな……! お前達ッッッッ!!! 全員退却しろぉぉぉぉぉ!?!?!?」



 叔父上も狼狽を隠せないようだ。

 ぶつぶつと取り留めもないことを呟き、狂っているかのように涙を流しながら絶叫する。


 兵士たちは這う這うの体で我先にと、全くまとまりに欠けながら散り散りに逃げる。

 俺も恐怖に満ちた表情で、もつれる足を必死に動かした。






『怖気立ったか? 人間共。そのままあの世に送ってやる』




 突然近くで聞こえた声に、震え慄く。

 息がうまくできない。


 こいつは何時ここに現れた?

 俺は泣きべそをかきながら、トロルのいる方向に首を軋ませながら振り返る。




 近くにいた叔父上も呆気に取られている。

 ついにぽとりと携えていた長弓を地面に落とした。

 そんないつも頼りにしていた叔父上の姿に、俺は恐怖と失意に包まれる。

 



 ………………もう……だめだ……


 ごめんサルビア……

 ごめんみんな……











「アルタイル坊ちゃん。お逃げ下さい。アルビレオ様を連れて」




「ダーヴィト……?」




 ダーヴィトが俺とトロルの間に立ち塞がる。

 鞘を放り捨て、異形の存在を見据えたまま俺に話しかける。






「最後にあなたと共に戦えたこと……儂の一生の誉れにございます。感謝を。必ずや、戦働きで報いましょうぞ」



 ダーヴィトは剣を構える。

 馬鹿野郎。まだ肩傷んでいるんだろう?

 構えるときに一瞬硬直していたぞ。





「おさらばでさぁ。アルタイル様と共に出陣できて夢が叶いやした。重ねて感謝を。儂は息子と共に戦いたかった……あなたはきっと素晴らしい貴族になる。……サルビアの事をお頼み申し上げる」



 ダーヴィトは俺にニカッと横顔を見せて笑いかける。

 そんなこと言うなよ。


 そんなの……まるで……






「儂が保障します。『fortis』『fortis』『fortis』…………………ぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおッッッッッッ!!!!!!!!!!」






 ダーヴィトは駆け出した。

 強化魔法を重ね掛けにして。

 絶対真似しちゃいけないって言ってたじゃないか……


 強化魔法は体の負担が大きいって……それを三重も……

 そんなんじゃ死んじまうぞ?




 死にに行くみたいじゃねぇかよ……!






『ククク……遅かれ早かれ全員死ぬのだ。もう少し時間をくれてやってもよかったのになぁ?』






 トロルは余裕綽々と言った様子で、棍棒を担いで棒立ちしている。

 当然だろう。

 あの時殺しきれなかったことで、俺たちが万策尽きたことがすでに知れている。




 ふざけるな……!

 俺はいったい何のためにここまで……!


 何かないのか?

 ここで盤面をひっくり返せる逆転の一手が!?




 何かないのかよ!?!?!?






 何がチート転生だ!!!

 こういう時に役に立たないで、何ができるって言うんだよ!?!?!?


 戦意喪失して心ここにあらずといった叔父上を、引っ張りながら走り。

 ステータス画面をやけくそに見た。




 その時、電流が走る。






 これは……!? そうか!!!!!

 この戦いでゴブリンたちを倒したからスキルポイントが……!

 貯まったんだ!!!!!






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 アルタイル・アルコル 


ステータス


 筋力  31

 耐久力 32

 敏捷力 27

 魔力 9999999999999999999999999999999999

 知力  65



スキル


 数学lv14

 科学lv13

 社会学lv12

 礼法lv8

 芸術lv1

 現代知識lv24

 製作lv3

 

 頑健lv70

 病気耐性lv70

 毒耐性lv30

 苦痛耐性lv72


 舞踏lv1

 剣術lv1


 火魔法lv6

 水魔法lv17  →  lv50


 回復魔法lv51


 魔力操作

 【出力】lv38

 【制御】lv48

 【変換】lv18  

 【具現化】lv19

 【干渉】lv49

 【効率】lv19


スキルポイント残り0



チート

 魔力世界最高

 全スキル・魔法取得可能

 成長無限

 成長率アップ

 アイテムボックス

 ステータスオープン

 スキルポイント自由割り振り可能

 全言語読み書き



状態異常

 多臓器不全(部分寛解)

 免疫不全(部分寛解)

 代謝異常(部分寛解)

 血液異常(部分寛解)

 内分泌疾患(部分寛解)

 遺伝子異常



装備 

 魔法剣

 皮の魔法鎧



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 俺はステータスポイントを迷わず振り分けると。

 立ち止まってダーヴィト達に振り返り――――――












『終わりだ。死ね』






「…………………!!!!!!!!!!」






 弾丸のような速さでダーヴィトの剣と、トロルの棍棒が交差しようとするその時――――――











「『Torrent cataracta』!!!!!!!!!!!」






 ――――――――――ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!






 その瞬間、レーザーのような空間を一閃する揺らぎが生まれる。

 尋常の魔法とは到底思えない速度で、動体視力を置き去りにした。


 衝撃波で放射方向に沿って、砂煙が巻き起こる。

 空気そのものが質量を持ったかのように重く、俺たちに叩きつけられる。


 


 昔ダーヴィトが褒めてくれた、母上譲りの俺の金の長髪が風で鞭の如くたなびく。

 俺が放ったそれは、先ほど取得した魔法により超高速で放たれた水流だった。






 それは瞬時に俺からトロルのもとへ到達し、棍棒を打ち抜き。

 魔将が持つ鋼鉄の如き表皮を貫き、トロルの胸を貫通した。







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 『間が悪いオッサン、追放されまくる。外れ職業自宅警備員とバカにされたが、魔法で自宅を建てて最強に。僕を信じて着いてきてくれた彼女たちのおかげで成功者へ。僕を追放したやつらは皆ヒドイ目に遭いました。』

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[一言] 如水 水が如く、流れに逆らわず勢いで目を撃ち抜き さらにはパワーアップしたかのように 魔将の胸を貫く アルタイルやるやん!! つか、目を撃たれて、ジタパタとして 仲間をぶっ叩くシーン…
[良い点] 変態は世界を救う
[良い点] ここにきて気づきました 恋人候補全員花の名前じゃありませんかー(●´ω`●) 両手に花ってわけですね。 安定の女好き坊っちゃん安心しました
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