第150話 「ぼくのかんがえたさいきょうのふくえらび」
「―――――――メイド服は女の子の憧れの服でもありますからね♪ 奉公先があれば、こういう服を用意していきたいものです!」
元気いっぱいにミニスカメイド服を羽織るフリチラリア。
これを勧めたらドン引きされるかと思うかもしれないが、そんなことにはならない。
この世界でメイド職は、庶民の憧れの職であるからだ。
女性の働き口として最大級の人気があるし、貴族に見初められる可能性もある。
その職に就けること自体が、それに足る能力があることを証明する社会的ステータスなのだ。
メイド服はそのシンボルでもある。
まぁこんな丈の短いスカートなんて、流石に下品でありえないが。
子どもが夏場に着るくらいだろう。
「フリチラリアちゃんは何でも似合うねぇ……とってもかわいいなぁ……!」
「キュートルッキングガールたん♡」
エーデルワイスは貴族という立場。
使用人の服が似合うと言うのは、気が咎めるのだろう。
こういった価値観は、あんまり俺に浸透しないんだよなぁ。
やっぱ前世の影響が大きいよ。
転生して目が開いた頃、最初に思ったのがメイド可愛いだし。
今となっては驚きは消え失せたが、常日頃萌え萌えしている。
転生してよかった。よかった……!
「お兄ちゃん…………こういう服はじめて着たけど……どうかなぁ……?」
「にょほっっっ♡♡♡ しゅきしゅきしゅきぃ~~~♡♡♡ 萌え~~~♡♡♡」
エーデルワイスにテニスウェア。ライダースーツ。学園制服。ナース服。ミニスカポリス。
色々着せたが、もう尊すぎて表現できる語彙が見つからない。
きっと言語化できないほどの、圧倒的可愛さなのだ。
今着ている服は、白いブラウスと深い藍色であるハイウェストのスカート。
腰のくびれが際立ち、その女の子らしいボディラインを強調させている。
端的に言えば、童貞を殺す服。
そんな単語が想起される。
乳袋が小山のように2つ盛り上がり、あらゆる男の自制心を皆殺しにするだろう。
劣情を掻き立てられ、理性を上回りつつある。
「なんという美姫たちじゃあ!!!!! ここは桃源郷じゃあ!!!!!」
「そこまで手放しに褒められちゃうと……恥ずかしいですね……!」
「喜んでもらぇて……ょかったぁ……」
感極まって飛び跳ねて、喜びを表す俺。
着用するゴスロリがくっそ邪魔くさいけど、きっと近年最高高度のレコード更新だろう。
二人の少女は所在なさそうに、モジモジ恥ずかしそうにしている。
萌え萌え~~~♡
そして最後の仕上げをする。
衣服の山の中に忍ばせていた、ある物品を取り出す。
エーデルワイスにネコミミカチューシャを手渡して、とある要望を行った。
血走った目で息荒く、興奮の境地でそれを告げる。
「エーデル。これ着けて。にゃあって言って。お願い。こうやって」
「…………にゃあ」
「み゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
俺がエーデルワイスの頭にぐりぐりと装飾具を押し付けると、仕方なさそうに受け入れたこの萌えの塊の存在。
呆れた様子で装着し、気だるげなジト目で俺の仕草を再現した。
脳ミソが粉々にハジケ飛び、エーデルワイスの萌え萌えポーズの形に再構成された。
ぶっちゃけ目算を見誤ったな。
これからこれナシでは正気ではとてもいられないだろうから、生活に支障が出てきたわ。
俺が実演して、彼女が真似して見せたポーズ。
そう。オス挑発する媚び媚びにゃんこポーズ♡
それと甘く清楚な風体とのギャップが、男心に絨毯爆撃をしたのだ。
燃え盛る男心。
抵抗を図る理性というレジスタンスは、既に絶えた。
オタクは無力である。
一度でいいから拝んでみたい、伝説的象徴であったからだ。
人間国宝認定しよう。人類の宝だよ。この素晴らしき芸術品を着用した、美麗なる女体は。
「……………………」
「お兄ちゃん……どぉしたの……?」
「あれだけ大きかった反応が、突然消えた……?」
とびきりの感動を、しみじみと噛みしめる俺。
前世で過酷なバイト生活から寝ていた古典の授業では、きっとこれを学んでいたのだろう。
これが、もののあはれなのだ。
この世界では獣人は差別されている。
しかし根強い人気があるのだろう。
でなければケモミミカチューシャなんぞ、ここに売られているはずもなし。
カワイイは世界を問わず、人類共通の価値観なんだね……
名も知らぬ同志たちよ。諸君らに感謝し、その悲願成就を祈る。
「こうなると長ぃから、他の服を着よぅね」
「何事もないなら、それでいいのですが……」
困惑するフリチラリアを誘導し、エーデルワイスは引き続き服選びに没頭する。
歓喜に震える俺を横目に、徐々にフリチラリアもそれに便乗していった。
エーデルワイスは楽し気に、コスプレ服を選ぶ。
無垢な彼女は、それが男たちの欲望の産物であると理解できないようだ。
そんな服、街中や社交界で見たことないじゃん。
どう考えてもエロ目的だって、歴然のエロティシズムなんだね。
「お兄ちゃんも…………こす……ぷれ……? ……とっても可愛いの選んであげたょ……!」
甘ったるい声とは裏腹に、選んだものは無慈悲な完全なるコスプレ服の強制。
その小さなおててに掴んでいたのは、清楚の象徴たるシスター服。
無邪気なシャイニースマイルで、とんでもない代物を差し出してきたこのロリ。
しかも店内見ると、サイズ色々あるんだけど?
どんだけシスター服にこだわりあるんだよ?
そしてなんでアゲナの店に置いてあるんだよ?
……ここらへんで思考を止めておこう。
とんでもない辿り着かなくていい事実だろうから。
現実逃避から、そんなことを思案する。
「綺麗だと思ってたんだぁ……! ぉ兄ちゃんが着たら、きっととっても綺麗だねぇ……!」
「確かにとてもお似合いだと思います! 着ちゃいましょう♪」
「いやだ。いやだ。いやだっ…………!」
まだ清らかな心の君たちには、わからないだろうけどね。
サイズ感が完全に、ボディラインを際立たせる構造なんだ。
縫製が意図的に、くびれとか透け具合とかを意識しているんだ。
「…………………」
そんなこんなで着せ替え人形のように、好き勝手される。
少女二人がかりで抑え込まれたら勝てない、この貧弱ボディが恨めしい。
頭巾から垂れるベールは肩まで下がっている。
その下から黄金の後ろ髪が覗く
身動きに合わせて、寒色系の色合いをした布が舞う。
スカートがミニだったり、卑猥なスリット入ってないことがせめてもの救いか。
ヴィジュアルは華奢な体格にもピッチリと……まぁゆとりがないものだ。
深く詮索する必要はない。
「…………綺麗……」
「お兄ちゃんシスター服似合うねぇ……! 絶対わたしよりも……今まで見てきた女の人の中で、一番似合うかも……!」
フリチラリアが夢見がちな少女の表情で、ロマンチックな絵本でも見ているかのようにうっとりとしている。
エーデルワイスも燦燦と瞳を煌めかせて、いつになくハッキリとした口調で熱弁している。
「むむむ…………そうかも……?」
でも確かに目を凝らしても、異様なまでに似合う。
まるで俺のために、あつらえたような仕立てだ。
そう錯覚してしまうまでに、ジャストフィットしている。
鏡を凝視すると、悲しき現実に屈した我が身が映し出される。
線が細く、見た者の庇護欲を掻き立てるあどけない体や顎の線は、我ながら可憐で愛くるしい。
白い肌は陶器のように透き通り、見眼麗しく芸術美を思わせるものだった。
このプリティーな美少年(強弁)が着用するシスター服は、似合うの一言。
なんか妙にしっくりくるし……
部屋着よりも本能的に安心するような……?
いやいやシスター服着る英雄とか、ヤバすぎでしょ。
今は精神的安定を、風評的安定に優先するべきではない。
………………………あれ? …………今は?
ダメだ。疲労からか、錯乱しているようだ。
思考がかっ飛んでしまう前に、自らがするべきことを忘れず行わねば。
かぶりを振って俺は、用意していたベストジャスティスをおもむろに2人に見せた。
「はい♡ 二人は次にこれ着てね~♡ ちょっと大胆になってみよっか♡」
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