第147話 「最強のハネムーン計画、爆誕」
「(フリチラリアちょっと来て!)」
「え? どうしました?」
「(デートプラン全然考えてない!?!?!? 前々から約束してたのに!?!?!?)」
「(えぇ…………?)」
フリチラリアは、引き気味な表情で眉尻を傾ける。
わかっとるわ!?
今俺が欲しいのは予想していた反応じゃなくて、その解決法なんだよ!?
それに俺にも弁解の余地はある!
ちょっとした間違いは誰にでもある。それだけは俺の話を聞いて同意してほしいの……!
「(だって前はノープラだったんだもん!?)」
「(それは今の状況に関係ないのでは……)」
「(そんな言葉は今ここでは求めてないの!? 俺は今、共感してほしいの!?)」
ヤバいよヤバいよ。
紳士としてあるまじき失態だよ。
こんなことになったら、せっかくのデートタイムの機会損失になる。
それどころかエーデルワイスが感じていた、いつも完璧であったアルタイル像の崩壊を招きかねない。
大して経験の少ないデートで潜在的リスクを抱え、その都度適切な判断をできるなどと思いあがってはいない。
何事も適切な事前計画があった方が、スムーズに動くのだ。
この冷静かつ的確な判断力をもってしても、デートと言う難事は果たせないという事を理解いただきたい。
そして事は一刻を争う。
今もエーデルワイスの違和感が増大しているだろうこの切迫した時間で、とにかく早く予定を立てなければ。
「デートってどうしたらいいんだ!? 教えてくれよお願いだよ! お前しかいないんだよお願いお願いお願いお願い!!!」
「私もしたことないですので、気の利いたご助言は出来かねますが…………うーん…………お買い物とかですかね?」
「んんんんん女子力ぅぅぅぅぅっっっっっ!!!!!!!!!!」
驚嘆すべき名案を手にした俺は、天に向かって吠える。
それだよそれ。打てば響くように、俺の欲しかったアイディアを提供してくれる。
っぱ女性のことは、女子力ある子に聞くのが一番だったわ。
人類の英知は、こうやって結集されていくのか。
どんな困難も、力を合わせて乗り越えていけばいいんだ!
愛の共同作業も、また然りだね♡
「…………………」
振り返ると、エーデルはジト目で俺たちのことを見ていた。
愛らしいふに♡ふに♡の面差しに、不満げな色が浮かんでいる。
気が付くと俺の近くには、フリチラリアの可愛らしい顔がある。
お肌プルプルっ♡ 緑の目が綺麗♡ 髪サラサラ♡ いい匂い~♡
この子ぉ……食べちゃいたいくらいにぃ……可愛いのぉ……
いや違う違う。
こんなことをしていては疚しいことをしていたと見られても、仕方ないだろう
まずいっ!? 一難去って、また一難。
何と言って誤魔化すか。
「えええエーデル!? これは浮気じゃないよ!? 信じてくれよぉっ!?!?!?」
「はぁ…………」
「エーデル―――!? 失望の目では見ないでぇー――!? 蔑んでもいいけどむしろキモチイイけど、見捨てることだけはしないでぇ~~~!!!!!」
「…………本当にお兄ちゃんは……」
しおらしく懇願するも、反応は鈍い。
玉のように可愛いマイハニー。
そんな悲しい目で見ないでおくれ。
僕の心はいつだって、君を想うと張り裂けそうになるのに。
もう罅割れて、散り散りに砕け散ってしまいそうになるよ。
こう思うのは、君を深く愛しているからなのに。
もう独力ではお手上げだ。
俺は頼みの綱の、この状況で一番頼りになる女の子へと話を振った。
「そうだよなフリチラリア! 俺に恋しちゃ……だ・め・だ・ぞ☆」
「……………」
会話の切り返しがうまいはずのフリチラリアは、曖昧な笑みを浮かべた。
ん? どうした?
…………ハッ!? まさか……もう俺の事が……!?
俺としたことが。
残酷な言葉の刃で、彼女を傷つけてしまったというのか。
今世で俺は社交の積み重ねにより、段々と他人との会話に慣れていたが故に、己の苦手な分野であることについて失念してしまっていた。
元来コミュ障である自覚を持たなければ、目指している恋愛マスターに更に遠ざかること必然。
これからは彼女の秘めた恋心を、ジェントルマンとして尊重しなければ。
「フリチラ~リア♡ 今日はお前も俺のお姫様だぞ♡ にゅひょぉっ♡」
「―――――――っっっっっ!?」
フリチラリアは背筋を伸ばして、体を震わせた。
おや? 寒気でもしたのかな?
誰かが噂でもしていたのかもしれない。
彼女はこんなにも可愛らしいのだから、当然かもな。
それはさておき、準備万端!
希望の未来へレッツゴー!!!
「さ~~~て!!! エーデル! 今日は俺のスーパーデートプランを楽しんでほしい!!! 存分に惚れ直していいからな♡」
「おにいちゃん……無理は禁物ということを、理解すること推奨だよぉ……」
「将来を見通せれば、人は思い煩う事はなくなるのでしょうか。私は無力です……」
もちろんエスコート上手のアルタイル様にかかれば、どんな女の子もイチコロってわけよ!
エーデルワイスもいつも楽しそうだからな!
俺はモテモテの才能がありすぎて、自分が恐ろしい。
女の子二人も遠い目で、これからのラブ♡ラブ♡ランデブー♡へと思いを馳せている様子。
しかしよく見るとフリチラリアは先が思いやられるとばかりに、気を揉んだような表情だ。
恐らく自らの提案に、責任感を感じているのだろう。
安心しておけ。俺の手に懸かれば、お前の提案を有効に活用できるに決まってるさ。
これはお前との愛の共同作業でもある。
必ず成功させて見せるよ♡
一生忘れられない、三人の思い出にしよう☆
「たとえお前自身が立てたプランを不安がったとしても、俺が上手くアレンジしてやる! これは成功が約束された、恋の神様も羨むデートになるよ♡」
「…………………はい」
憂う少女を心配させまいと励ましの言葉を贈る、ウィンクした超イケメン英雄。
頬をヒクつかせながら、ぎこちなく笑みを作ったフリチラリア。
そんなに心配するなよ。心配性な子猫ちゃんだ……
俺の男ぶりを刮目しておけよな☆
そして俺は出発する。
フリチラリアに買い物ならば、やはりあそこだと確認を取った。
彼女も同意見のようだ。
「お前たち! 俺についてこい! うまくいくことが決まりきったハネムーンを目の前にすると、楽しみでしかないな!!! ぬぁー――――はっはっはっは!!!!!」
「……え? 私も? エーデル様はいつも大変ですねぇ……」
「うぅん。ぉ兄ちゃんは、ぃいところも一杯あるから…………ぁるんだよぉ……」
なんか後ろでボソボソ二人で話しているけど、なんだろうか?
きっと女の子同士の秘密ってやつだな!
それを詮索する程、野暮じゃないぜ☆
よーし!
案ずるより産むが易し!
俺は意気揚々と目的地へと歩きだした。
それに続いて、後ろから女の子二人が着いてくる。
エーデルワイスはフリチラリアだけに聞こえるくらいの声量で、何事かを呟いた。
「――――――さっきの全部聞こぇてたのに……ゎたしはお兄ちゃんと一緒なら、ぃいんだけどなぁ……」
面白い、または続きが読みたいと思った方は、
広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価、またはレビューしていただけると、執筆の励みになります!!!!!!!!!!




