第138話 「ローゼンシュティール公爵家令嬢ローズマリー」
見眼麗しい、整った外見の令嬢。
一見すると高慢ちきそうな風貌だが、その表情には深い知性が宿っている。
あまり表情筋が動かないが、口元は僅かに傾けられ嫌味のない表情だ。
すっと伸ばす背筋は実直さを表すようだが、釣られて抜群のプロポーションも強調され男どもを魅了してやまないだろう。
洗練された姿勢や呼吸が凛々しく、かつ整っている。
シックなデザインの紫色のドレスが、色香を醸し出し一級品の品位を漂わせる。
凡百では役者不足となるであろう格調高い衣服ですら、魅惑的なローズマリーを存分に引き立てきれないまである。
その衣装によって強調された豊かな肢体の輪郭線が露わとなって、これもまた抗し難き魅力を放っている。
高貴な品格の中にも艶やかな佇まい。
浮世離れしているほどに、気高き気品をもつ淑女。
息を呑む程の、輝かしく華やかな美しさだ。
この姿が市井を闊歩していたら、違和感この上ないことであろう。
「ノジシャさん。ごきげんよう」
それでいて、とり澄ましたところがない。
親しみやすそうな笑みを浮かべ、どこか嬉しそうにこちらへと優美に向き直った。
そのすらりとした長身には華奢な紫色のドレスを身にまとい、圧巻の存在感を放っている。
絢爛なる社交界全てを、彼女一人で飲み込んでしまいそうなほどに。
ここにいるという事は俺たちと同じくらいの年頃なのだろう。
しかしその妖艶な色香は、同年代のものとはとても思えない。
……こういう女を……ヒンヒン言わせてやりたい♡
生ローズマリー見て、すっげぇ涎あふれ出てきたぁ……♡
「ローズマリーさん。お会いできて嬉しく思います」
「ノジシャさん。ご丁寧に挨拶頂きまして、ありがとうございます。わたくしもまたお会いできて、嬉しく思いますわ」
透き通った声。しかしはっきりと聞き取れる力強さ。
その意志の強さが見て取れる。
しかしそれは嫌味なものではなく、確固とした自我から発せられるもの。
公爵令嬢として申し分なしの。凛々しい気品のある風体だ。
流麗な所作で、愛想もいい。
典麗なるこの饗宴にこの上なく相応しい人物と評しても、過言ではないだろう。
そのままお手本のように形式に沿った、貴族的やり取りが交わされる。
続いて挨拶したエーデルワイスにも、にこやかにゆったりとした口調で対応している。
会話が苦手な相手に合わせて話すだけの、協調性もあるようだ。
派手で高飛車そうな見た目からしたら、意外だな。
なんだか機嫌もよさそうだ。見た目に反して、子供好きなのかな?
気の強そうな目元も柔らかい。
俺はそれをじっと見守り、ノジシャが度々会話に間が持つようにフォローを入れている姿を見る。
他人への思いやりを持った言葉使い。
それを発したローズマリーは、貴人の鏡とも思える。
彼女は薄い化粧に彩られた瑞々しい口角を持ち上げて、端正な顔立ちを優雅な微笑みに染めていた。
「エーデルワイスさんは、とてもお顔立ちがよろしくていらっしゃいますわね。素敵なお召し物も、大変お似合いでいらっしゃいますわ」
「ぃえ。わたしはローズマリーさんほどでは……」
「本日のローズマリーさんも、目を奪われるほどにお美しくていらっしゃいます。それに加えて先日、新魔法理論を発表されたようで尊敬いたしますわ。遅ればせながら、おめでとうございます」
「ありがとうございます。環境と幸運に恵まれましたわ。ノジシャさんも類稀なる識見を有していらっしゃいます。以前お話しいたしました、古典文学に対する見解には御見それいたしましたわ」
「いえ。私などとてもローズマリーさんに及びもつかず……常々感心しておりますわ。申し遅れました。こちら、私の従弟である、アルコル男爵になります。お見知りおきいただければ」
「初めてお目にかかります。紹介に与りました、アルタイル・アルコル男爵でございます。ノジシャさんとの親族の誼を通じて、ご挨拶にと推参した次第であります。よろしくお願い申し上げます」
父上の監修のもとで、何十何百回と猛練習した挨拶。
最終的にはお爺様の目の前でも披露した。
だから誰が相手でも、プレッシャーには負けるわけがない。
あの重量を伴ったような視線に射抜かれてみろ。
いやでも慣れるわ。慣れなきゃ凄惨に粛清されるわ。
その豪奢な縦ロールが波打ち、俺へと向けられた。
幾ばくかの沈黙。
それをもたらしたと思しき俺は何か粗相をしてしまったかと思い至り、額が焦りからじんわり汗ばむ。
「(しかし真正面から改めて見ると、やべぇわこの女)」
ローズマリーは優雅な一礼と共に、その長大なパイをぶらぶら揺らす。
胸元を凝視せずとも全体のシルエットを一瞥すれば、一目瞭然ダイナマイトボディなのだ。
ドタプンッ♡というかのような擬音と共に、実にずっしり♡と重たそうな猥褻胸部装甲がひしゃげ、恥知らずな身体を晒す。
俺はボリューミーバスト銀髪メイドのサルビアで、鍛えに鍛えた視線誘導スキル。
そう。鋼の自制心をもって、それを何とか見るまいとする。
であっても、いやらしい劣情を掻き立てる豊満に過ぎる肉付きのいい女体を、つい探求したくなるのだ。
だぷんっ♡だぷんっ♡と彼女が身じろぎするたびに、オス誘惑する罪深い双丘が俺をムラつかせる。
俺は舌を噛みしめ、手のひらに爪を食いこませながら必死の抵抗を図る。
だが目の前の極上の女を征服したい欲求に駆られ、どうにも収まりがつきそうにない。
メーター超え確定の、紫のドレスをはち切れそうなほど押し上げるそのドスケベエロ肉は、玩具にして弄びたいという欲望を刺激し続ける。
これまでの人生観が崩壊しそうなリアル西瓜超えエレガント最高級肉質乳牛を垣間見た結果、煩悩に囚われることから逃れられそうになかった。
男根を煽る卑猥の肉塊に、とても発情を抑えることなどできやしまい。
直截に表現すると、性欲爆裂する。
もう限界突破して、グラマラスな肢体に本能のままに飛び掛かりそうになるかもしれない。
心臓が早鐘を打つ。喉がカラカラに乾き、生唾を飲み下す。
「(モウ、ダメダ。あの谷間で窒息しないと……!)」
理性的行動からほど遠い、錯乱行為に手を染めようとしたその時だった。
俺にとっての天祐は訪れる。
ローズマリーは頭をあげると、しばらく固まっていた。
俺の顔をまじまじと見つめて、その釣り目がちな眼を見開いた公爵令嬢は思わぬ奇声を発した。
「――――――――――プニた……ンググッ!?!?!?!?!?」
「………………?」
キロ単位の脂肪で出来たエチエチ胸筋さん♡が身を捩るたびに、もにゅっ♡ふにゅっ♡と揺れ動く。
ムホホ♡ 目の保養じゃぁ♡
造形美の極致とも評せる艶めかしい唇を戦慄かせ、彼女は挙動不審に何かを告げようとした。
だが隣にて侍る、取り巻きの貴族であろうか。
俺と比べても大分に小さな少女より、口元を抑え込まれて身動きできないでいる。
この可憐な美少女も俺を見ると、その可愛らしい顔立ちを驚愕に染めていた。
そしてこっちに向かってローズマリーが手を伸ばしてくるように思えるのは、気のせいだろうか?
しかし……プニタ……?
なんだろうか? 何か言いかけたような?
怪訝となったことで意図せずにだが胸部から目を逸らして、その面貌を凝視することができた。
その美しい顔立ちを、記憶の奥底から掘り起こそうと試みる。
こんな分厚い淫乱特有胸板なら、どこかで見たら覚えているに決まってるが……
なんだか思い出そうとすると、頭が痛い。
「プニィ…………! ぷ……にた……んむっ…………!?」
「お嬢様っ!? 何か気になるものでもございましたかっ!? 今は大事な挨拶の途中でございますので、それに関してはまた今度お話ししましょうね!!!」
俺たち3人を置き去りにして、必死に取っ組み合う両者。
やっぱりローズマリ―は俺の方にもがきながら来るような気がするが、なぜだろうか?
なんか本能的に寒気と危険信号がするけど、気のせいだよな……?
う~ん……やっぱりどこかで会ったような…………
なんか思い出そうとすると、脳髄の奥底から痛みが浮き出てくる。
ローゼンシュティール公爵家とは領地が正反対にあるし、アルコル侯爵家とは接点などないだろう。
この場にいるという事は、年齢的にも社交デビューした時期は、俺が戦争ばっかしていた時期と重なってるはずだし。
会ったことはなかったはずだ。
最初の社交パーティー以来、魔将トロルとの戦い以来ぐらいから、俺は働き詰めだったし……
近場のものなら義務で稀に出席したが、そのくらいだしな。
それもほとんどがアルコル侯爵家で、主催したものばかりだし。
父上も叔父上も滅茶苦茶忙しい人だから、そもそも参加回数が少ないのだ。
「お嬢様!? 喉の調子が悪いのでしょうか? これは風邪かな? お嬢様特有の喉がいう事聞かない持病が出ちゃったのかな!? これはいけない!!!!!」
「す……ぐそ…………! こわた……くしえん……じぇ……!!! ………ムゥゥゥゥゥッッッッッ!?!?!?!?!?」
例えばエルナト殿は英明を謡われる宰相肝入りの才児であるから、あのように幼いころから社交の場に出ていたが……
あれは例外中の例外だろう。
貴族情報には疎いので彼女のことは知らないが、見た感じエルナト殿よりは年下だろう。
見た目は信じられないほどに美人で、上背も女性にしては高く大人びている。
だがよく見るとまだ面持ちに、可愛らしさを残しているし……
だが何度見ても、どこかで見覚えがあるような気がするのはなぜだろう?
先ほどとは急変してジタバタと滑稽に藻掻いている、この金髪縦ロール莫大パイ女……
…………まぁいいか!
ここで仲良くなっておいて、その体を俺のものにして貪り尽くしてやるからな♡
滅茶苦茶、いや最高峰に好みの見た目だから、存分に味合わせてもらおうか♡
さて、楽しみに――――――
「――――――――大変失礼をいたしました! お嬢様は体調が悪いご様子!!! アルコル男爵にご無礼をいたします前に、これにて席を外させて頂きます!!! 謹んで非礼をお詫び申し上げます!!!!!」
「ぷ……………ぷにぃぃぃいぃいムゴゴゴゴ!?!?!?」
「お嬢様大丈夫ですか!? なに頭も調子が悪い!? それは大変です!!! 頭撫でときますね!?!?!?」
「………ろ………りぷ………ニ゛ィ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!?!?!?!?!?………………」
そういってお付きの少女はローズマリーの頭を撫で……いや殴った。
何度も殴打するうちに公爵令嬢であるはずの少女は動かなくなり、引きずられて陞爵式会場から退出していった。
俺たちはドン引きしながらそれを見つめ、唐突に締めくくられた顔合わせに目を白黒させていた。
誰もが思わぬ展開に固まり、それを見るがままとなっていた。
えぇ……?
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