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第13話 「剣の嗜み 武官長ダーヴィトの指導」




 木製の模造剣と盾がぶつかり合い、鈍重な音が響き渡る。

 俺はステップを踏みつつ、差し迫った盾を交わそうとするが、躓いて転ぶ。


 そんな俺を押しつぶそうとするアルコル家武官長のダーヴィトから逃れるため、転がりながら身を躱す。

 体勢を立て直すと、再び彼の盾めがけて剣戟に持ち込む。




 俺は全力をもってアルコル侯爵家武官長に目掛けて剣を振るうが、膂力が足りなさすぎる。

 盾はびくともせず俺にプレッシャーを与え続ける。

 彼の合理を突き詰めた機能美に溢れた剣捌きに比べると、不格好ではあるが俺の剣は何度も空を舞う。


 戦い前のダーヴィトのアドバイス通り、勝利を諦めることはない。

 だがそれが適わないならば。

 ひたすら時間稼ぎに徹することを念頭に置き、身の安全を第一に剣を振るう。






 キンキンキンキンキンッッッッッ!!!!!




 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!






「間合いを読むのですっ! 相手の剣が届かない場所に身を置けば剣が当たるはずがないっ!」



「はい!」



 ダーヴィトは俺が斬撃を食らわせ、剣を振り切った隙を見せるが否や、怒涛の猛撃を食らわせてくる。

 転がるように何とか回避したが、体勢は大きく崩れる。




「躱したら次の攻撃が待ってますぞ! 鉄火場で悠長にしてなどいられませんっ! 敵から目を離さず次の攻撃に備えられよっ!」



「はい!」



 ダーヴィトのアドバイスを受けながら、俺はひたすらに剣を振るい続ける。

 程なくして俺の剣が鈍り始める。

 対戦相手の彼は見逃すことなく、俺を制圧するため見事な歩法からのシールドチャージを繰り返す。






 キンキンキンキンキンッッッッッ!!!!!


 ドンッッッッッ!!!!!




 ついに俺は押し負け、体は地面に叩きつけられた。

 受け身を取っても痛いものは痛い。


 俺は汗だくで荒い呼吸を繰り返す。

 もう動けねぇ……

 ダーヴィトはからからと笑いながら、轟音と共に盾を地面に置く。




「お疲れさんでございます。受け身よかったですよ! 休憩としましょうや!」


「…………ありがと………ござま………ひた…………」


 俺は虫の息であるが、何とか声を絞り出す。

 ダーヴィトはニカッと笑うと俺の口に水筒をあて、水を飲ませる。


 俺は抱き起されながらそれを飲み、一息つく。

 飲み終えるとダーヴィトは懐に水筒をしまって、俺の最近の動向を褒め称える。






「最近は特に鍛錬に熱中される! 臣として誇りに思いますぞっ!!!」


「社交とか向いてないなってわかるから、俺はもうこっちで貢献しようかなって」


「領民の安寧を守ろうとする姿勢! 御立派です!」


 ダーヴィトは感無量といった様子だ。

 馬鹿でかい声で大笑いする。

 煽てられて気分がいいところだが、一つ俺は前々から気になっていたことについて、おずおずと問いかける。






「ところで俺って剣の才能あるか?」


「………………2年間もよく儂の鍛錬についてこられました!!!」


「あ、もういいわ」


「アルタイル様には類稀なる魔法の才能がおありになります。剣の練習をするのは前衛の動きを知るため。貴族としての最低限の嗜みと割り切りましょうや」


 まぁそうだな。

 魔法という強みがあるのに、わざわざ剣で戦う必要ないでしょ。

 俺貴族だし。剣とか怖いし。


 決して才能がないからではない。

 論理的に導かれた最適解なのだ。

 そんなことを思っているとダーヴィトは、先ほどの話題について聞いて来た。




「坊ちゃんもアルフェッカ様に似て、社交界がお嫌いなようですなぁ」


「あんな肩凝りそうなもん好きな方がどうかしてるぜ」


「同感です! まぁあれはあれで必要ですがね……先代様……先々代様がいなければこの領地も今頃どうなっていたことやら……」


 ダーヴィトはしみじみと昔に思いをはせているようだ。

 爺様何したん???


 でも全部が全部嫌いってわけじゃないんだぜ?

 役得もあるもんだ。






「美女がエロい衣装なのに楚々とした仕草でいるのは、最高に興奮するし眼福だけどな」


「ガハハ!!!!! 跡継ぎに心配する必要はなさそうでよかったですわい!!!」


「おう。サルビアは俺に任せろ」


「あの無愛想でよければ貰ってやってください! 孫はたくさん頼みますぞ!!!」


 ダーヴィトは機嫌がよさそうに更に笑いを大きくする。

 父親のお墨付きをもらえたぜ。

 サルビアはこれで俺の女だな!


 しかし時折家に訪れるアルコル家傘下の貴族から、妻がたくさん紹介されたのが気になるんだよな~

 その家族も圧倒的に女性比率高かったし、女当主なんてのも珍しくなかったぞ?




「奥さん何人も紹介されたのにはビビったわ。あれ普通なのか?」


「はい? そうですよ。そりゃ戦争で男不足ですからね。儂の所領の村も小ぶりですが、何人も妻がる男ばかりですわい。儂は皆流行り病で皆早くに亡くしましたが……そうでなければ、特に貴族様は妻を複数持つのが普通です」


「は~~~だから女の方が多いんだな~~~でも妻多いと扱い大変そう」


 だからうちも貴族家という割には、男全然いねーんだな。

 てかそんなに戦争やばいの?

 農民ですら妻複数いるってどんだけだよ?


 しっかし実際にハーレムつくるとなると、女の戦いヤバそう。

 うちは異母妹だけだから何も起きてないけど……

 これが男で超優秀とかだと、御義母上とも色々あったのかもな~~~






「ま…………それは『例の教育』がありますからな。」


「『例の教育』?」


「まだご存じありませんか……まぁサルビアも今やっているところです。時が来ればわかるでしょう……」


 ダーヴィトは普段の底抜けの明るさは珍しく鳴りを潜め、神妙な表情だ。

 嫁入り教育で他の嫁と仲良くしろってことか?


 まぁ複数妻がいる文化だ。

 伝統的にそんな教育でもされているんだろうな何もおかしくはない。




 だが話を聞いていると、俺も兄弟同士で争うなんてことはしたくないな。

 仲がいいアルデバランとお家騒動なんてごめんだ。

 だが父上はまだ若いし、御義母上ともうまくいっていない。


 親の性事情とか考えたくもないが、父も男だ。

 女をつくるなんてことは不思議ではないが、どうなのだろうか?

 お爺様にせっつかれている姿をたまに目にするし、杞憂だといいが……






「父上はもう妻を娶らないのかな? ダーヴィトは何か聞いてる?」


「うーむ……アルフェッカ様は女にあまり興味のないお人ですからなぁ……あまりそういうことは話したがらないお人でありますし……」


 ダーヴィトは渋面をして難しそうに唸る。

 そして瞠目して悲し気に語る。




「…………それにナターリエ様を深く愛しておいででいらした……昔ナターリエ様と一緒になるために、家を出たことを考えると……」


「そうか……母上を……」


「臣である儂から差し出口をするべきことではありません。どうしても気になるならお父君に直接聞いてみるのがよろしいかと」


「そうだな……腹を割って話してみないといけないかもな……」


 父上は滅茶苦茶に忙しい。

 いつものように魔物を狩るために、魔王領域まで出征しているし。

 そうでない時はバカみたいな量の書類を捌いている。


 いつ寝ているのかと疑う激務であるが、俺たち兄弟との時間も作ってくれている。

 前世のあの糞は俺と遊んでくれるどころか、俺を虐待してたからな……

 父上のことを俺は、父親としてとても尊敬している。






「さて! 話し込みすぎましたな! 鍛錬の再開と参りましょう!!!」


「おうっ!」


「次は魔法を使って前衛と連携する、実戦形式の模擬戦をしてみましょう! 坊ちゃんにはこれが一番必要な鍛練ですな!」


「あ~なるほど」


 確かにどんないい魔法を覚えても、現実ではゲームと違って魔法の使い方を考えなければならない。

 馬鹿が適当に魔法を使うと、周りを巻き込んで自滅することになりかねないからな。


 さーて……俺の新魔法のお披露目と行きますかね……!










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[一言] ナターリエ...廃音の泣きフレーズ← 稽古の描写と、なんて言うか目に浮かぶ ガハハオヤジ(おい、勝手名を変えるな) 台詞もさることながら、脳裏に映写機があるように 映し出されますね …
[良い点] アルタイルさま、お嫁さんできた、と思ったらハーレム作りですか(ノ_<) いけませんっ。でもまだまだ、小さいので、彼が本当の愛を知るのはまだまだ先なのですよね!可愛いお嫁さん候補がたくさんい…
[良い点] 可愛いヒロインがたくさん登場して毎度楽しませていただいております! [一言] 読み進めるのが遅めですが、今後とも応援いたしております!
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