第128話 「輝かしき誉 残された謎」
「む~~~~~♡チュチュチュチュ♡」
「ん…………ご主人様はチューが大好きにゃ♪なら……もっとするにゃ♡」
「しゅるしゅるしゅるぅ~~~♡♡♡」
たまんねぇぇぇぇぇー――――!!!!!
うんめぇぇぇぇぇー――――!!!!!
っっっ半端ねぇぇぇぇぇー――――!!!!!
ルッコラたんのプルプルの唇をふやけるほど貪り、愛を確かめ合う。
八重歯ぺろぺろ♡歯茎舐め舐め♡
オラっ♡ちっちゃいベロ寄越せ♡
黒髪ショートヘアに顔を埋めてクンクンクン♡
ネコミミたんをモフモフモフ♡
お゛っ゛っ゛っ゛♡♡♡や゛っ゛っ゛っ゛べ♡♡♡
「すぅぅぅぅぅううううう…………はぁぁぁぁぁああああああ…………くんくん♡ふがふが♡はむはむ♡」
「にゃあんっ♡女の子の匂い嗅ぐなんて、ご主人様エッチにゃあ♡でも……ルッコラだけならいいニャ?ご主人様のしたいこと、ぜーんぶ……してにゃ♡」
「ふっひょっひょー――――!?!?!?」
かわいがってあげるからねぇ……ずっと大事にするからねぇ…………
これからは、この可愛いネコたんとずっと一緒に暮らすんだもん♪
愛し合う二人には引力があるんだもん♡
絶対絶対離さないんだもん♡
だって運命の赤い糸でギュって結ばれてるんだもん♡
一番近くでいつだって見つめあっていたいんだもん♡
「レロレロレロレロ……ヌチョヌチョヌチョヌチョ……ニュポポポポポポ…………」
「んっ……♡こんな所でダメにゃぁ……♡でも……ご主人様の命令は絶対だから仕方ないにゃあ……♡」
そんなあらゆるケダモノ☆フィーバーをしているうちに、指揮官たちの戦闘分析もまとまりつつあるようだ。
ルッコラの愛らしいクリクリのお目目から目と口を離し、父上たちの一段落した話し合いを聞き入る。
「うんうん。よかった。この野戦陣地はこれからも使えるな。キララウス山脈からも近いし、ここを起点に要塞でも建設するかな」
父上は暢気な声調で、すでに戦後のことを考えている。
もうこの戦闘には、見切りをつけているようだ。
当然か。すでに敵は完全に瓦解した。
残敵も多少蠢いているものがいるようだが、もう時間の問題だろう。
塹壕についてから、兵たちの犠牲は一人もいない。
一人も、だ。
俺は戦争準備というもの。
地の利を得ることの重要性。
それらを実戦で認識することができた。
そして何より卓越した能力の指揮官。
アルフェッカ・アルコル侯爵家現当主の、異様なまでに抜きんでて練り上げられた軍略に、畏怖すら覚えた。
……この人が父親でよかったと、心の底から思う。。
こんな人とお爺様のいるアルコル家に、逆らおうなんて思うやつがいるのかと甚だ疑問である。
アルコル領が王国において、極めて特殊な位置にいることも頷ける。
王家ですら俺たちを排除しようとすれば、最悪は共倒れなのではないかと想像するばかりだ。
「各員、索敵行動に移れ。敵はこれだけとは限らない。日没までに完了させよ――――――」
血で血を洗うような争いも、終わってみれば拍子抜けだった。
しかしこれは父上の事前準備が、的確だった故にだろう。
もしも無策でここにいたら対応しきれず、死闘を制されたのは向こうだったかもしれない。
相手の強みを徹底して潰し、常にこちらの土俵で戦おうと試みたから、ここまでの蹂躙という結果で終われたのだ。
日が沈む前に戦闘詳報に片をつけ、余裕を持つことができたことは、ここまで最善を尽くしてなお望外の結末であろう。
首尾よく最後の確認を終わらせた父上は、再度兵たちを集結させる。
兵たちは父上の言葉を待ち、期待に顔を明るくさせていた。
そして誰もが待ち望んだ、血と汗の結晶ともいえる成果。
いよいよそれが、我が父アルフェッカ・アルコルの口から放たれた。
「――――――――――我が軍の勝利である!!!!!!!!!!!」
「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」
腕を振り上げた父上が、勝利の宣告をする。
喜びが爆発し、歓声は天地を揺るがした。
「勝鬨をあげよー――――!!!!!」
武官長であるダーヴィトが豊かな髭を震わせながら地に響く大声をあげると、アルコル家の旗が掲げられる。
身も心も震えるような歓喜に、胸が高鳴る。
弾んだ胸を抑えきれないのか、誰もがひしめき合って飛び跳ねている。
戦勝というのは、最高の気分だ。
辛酸を舐めた俺たちはその反動から、高揚感、陶酔感、多幸感に浸り、手と手を取り合って喜ぶ姿が見えた。
兵たちは肩を組んで勝利を叫び、想いを露わにしている。
数多の鎧兜が鳴らされ、大合奏が演じられていた。
普段は皮肉屋なヤンも、今ばかりは素直に喜びを享受しているようだ。
生真面目に表情を取り繕っているアルビレオ叔父上や、騎士隊長シュルーダーにちょっかいを出して揶揄っている。
彼ら二人は形ばかりは迷惑そうにしていたが、嫌な様子ではなさそうだった。
「諸君らの奮闘により、アルコル領は守られることができた。アルコル家当主として礼を言う」
一軍の将たる父上から、感謝の労わりが述べられる。
それを聞いた兵たちは、感極まって泣いている者もいる。。
これだけの激戦を制し、その立役者となったアルコル家当主アルフェッカの激励に感じ入るものがあるからだ。
「――――――――――諸君らは私の誇りである」
思わず俺も涙が込み上げた。
あれだけ苦しかった熾烈な争い。
勝ったのだ。
犠牲はあった。それでも守れたのだ。
死んだ兵たち。俺を庇って命を落とした騎士の気持ちはわからない。
どんな慰めを受けたとしても、寂寞の念、後悔はどうしても捨てきれない。
でもあいつの守りたかったもの、それらの内の一つでも心残りを晴らせたのではと思う。
みんなこうして喜んでいる。全員だ。
アイツも気のいい男だった。きっと喜んでいてくれているはずだ。
「………………だが、最後に皆に伝えないとならないことがある」
急に重々しく、声のトーンを落とした父上。
その変わりように皆、一様に空気を一変させ、張り詰めた緊張感を湧き上がらせた。
一瞬にして、ただならぬ雰囲気がその場を支配する。
「実は…………透明の新種が現れた時、作戦プランを考えていたというのは見栄をはった。ぶっちゃけ場当たりで、それっぽいことをそれっぽく言って、その場を凌いでいた。あの時は詭弁を弄さねば危うかったんだ…………許して!!!!!!!!!!」
悪人面で父上は腕を大きく掲げ、仰々しく優雅に一礼した。
面食らってぽかんとする俺たち。
ヤンですら口元を、への字に歪めている。
「「「「「……………………ハハハハハッッッッッ!!!!!」」」」」
数瞬、間を置いて。
一斉に腹を抱えて、うるさく馬鹿笑いする部下たち。
その集団の長である父上は、酷薄にほくそ笑んでいる。
…………えぇ?……………どういうこと?
「ダーヴィトがやられたと聞いた時は焦った焦った!!!まぁ結果がよかったからヨシだ!!!!!」
冷血な面差しでニコニコと楽天的に語る、この凶悪フェイスの男。
俺は戦後の疲れも相まって脱力する。
なんか一本とられた感じムカつくわぁ……
てかアレその場しのぎだったん……?
どんな心臓してんだこの人は……
そんな俺を尻目に、こいつら兵たちは笑い転げる。
つい先ほどまでは、危殆に瀕していたにも関わらず。
この戦いで死んだ者もいるのに。
それはきっと、仲間の死に慣れたからではなくて。
しみったれた顔をし続けることが、戦友への手向けとはならないから。
自分たちもつらい現実に向き合い続けることの苦しさを、心の底から知っているから。
勝利を喜ぶことで、楽しく騒ぐことで。
これから続く戦いへと意気揚々と臨めるようにと、長年の経験から学んでいるのだろう。
そんなことを思っても、周りで馬鹿をやっている奴らを見ると、心の底からおかしくなってしまう。
思わず俺もつられて破顔した。
「……………♪」
土壇場で生まれた父上の作戦ではあったが、それは俺たちを救ってくれた。
父上の言葉を借りるなら、終わり良ければ総て良しなのだろう。
既に大きく傾いた太陽の下。
影が長くなった塹壕。
その周りは無数の魔法痕で、荒涼とした地面。
その真ん中で俺たちは、故郷を守ることができた喜びに浸るのだった。
本当に、多くの人々が助かってよかった。
ここに、俺たちの戦争は終結した――――――
――――――そんな喧騒を無機質な眼球を向けながら、誰にも聞こえないほどの微かな音で一つ。
司令官たるアルフェッカは、この男だけは一人冷静に呟いた。
「――――――なぜ、新種以外の魔物がここまでいなかった………」
未だ残る、多くの謎。
調査しても判明しない事項は、深刻なしこりとして取り残された。
この男は孤独に推測を巡らせる。
思考を止めては、自らの大切なものたちが全て消えてしまうかもしれないから。
彼はその重責を担い、誰もが浮かれている中で一人黙考していた。
「何より、なぜ……こんなに恐ろしいものが……………こんなものが、もし王国中に広まりでもしたら――――――」
アルフェッカの射るような目線は新種たちの躯へ注がれ、非常に険しい表情をした。
先ほど彼の指示で、これについての研究結果がはじき出された。
調査員の誰もがそれが齎す危険性について激しく指摘し、その威力に恐怖し、最大級に取り扱いを危惧した。
それについては最上級の箝口令が敷かれたばかり。
つまりこれを情報流出させた者は、情状酌量の余地もなく死罪という事。
それを強く懸念し見上げられた彼の視線は、人と魔の二つの世界を隔てるキララウス山脈へと向けられ細まる。
その奥に潜んでいるモノは果たして――――――
「―――――――――――今、何が起きている?」
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