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第124話 「無双の老騎士」




 ヤンからの通達により、アルビレオ叔父上は父アルフェッカの元へ報告した。

 父上の指令により援軍の到着次第、決行するとのことだ。

 そしていよいよ、その時が訪れる。





「アルビレオ様!ただ今、他陣地からの援軍が到着いたしました!このまま進軍が可能であります!」



「そうか。兄上に連絡する。すべての準備が整ったとな」



 シュルーダーの報告により、父上の計略に必要なピースが完全に揃ったことがわかった。

 完膚なきまでに一匹残さず殲滅するため、作戦には完璧な統率力が要求される。


 兵士たちも勝利を目前にしているが、緊張感が強い。

 ここまで苦戦した相手。慢心する兵などいない。

 シュルーダーの部隊も俺たちの悲劇的な状態を見ただけで、それを理解するだけの厳しい訓練と規律、何より経験を養ってきた。


 命を懸けているが故の、怠慢とは無縁である士気旺盛な軍勢。

 他に並び無きアルコルの兵たちならば、やってくれると信じられる。






「―――――――ッッッ!!!!!」




 その瞬間、ある男が唸りながらも跳ね起きた。

 そしてその傍らにある先刻に俺が製作した回復薬の入った桶を、その巨大な手で掴み呷る。




「…………ゴク……ゴク……ハァ……」




 アルコル家武官長ダーヴィトは回復薬を飲み込み、それを頭から浴びせかける。

 獅子が水を振り払うように顔を左右に振るって水滴を撥ねつけると、吠えるように謝罪を告げた。




「アルビレオ様。アルタイル様。武官長にあるまじき無様を晒し、大変申し訳ございませんでした!お叱りは後ほどお聞きいたします。儂も出陣し、手柄首をあげる所存!!!」



「気に病むな。それより体はいいのか?」



「無論のことですわい!」



 武官長は鎧を鳴らして豪気に頷く。

 首肯をもってそれに返答した叔父上の指示のもと、出立する部隊の最前衛に陣取る。

 新種たちが蠢く陣地の外を睨みつけると、戦闘動作を準備した。






「『fortis』!!!『fortis』!!!」






 そして唱えた強化魔法。

 二重発動によって体内で荒れ狂う魔力を長年の経験から制御し、敵を撃滅するための暴威を発動する。


 それであっても、多大な痛みを伴う反動はあるだろう。

 筋肉の断裂、骨の破砕、神経そのものにかかる苦痛という負担。


 通常であれば、あってはならない方法だ。

 そもそも魔法の二重発動など、俺ですらできない高等技術。

 



 しかしここには俺がいる。

 奇跡の魔法、再生魔法を扱う俺が。

 それを信じて、強固な意志を宿した面構えをもって彼ら兵隊は進軍した。


 いや違うか。逡巡の中で自己解決する。

 過酷な行軍速度を要求されていても彼らは、もはや確信していたのだ。

 年齢から考えると、いや世界レベルで見ても異常な域までに達している、俺の魔法技能を。






 彼らは弾丸のように走って向かった。

 敵を正面に捕捉している、父上たち主力部隊の両翼から挟みこむように包囲する。






「「「「「『『『『『fortis』』』』』!!!!!『『『『『fortis』』』』』!!!!!」」」」」






 俺がいるという事。

 それはどんな無理を戦場でしても、治療できるという事。

 つまり無茶な捨て身の攻撃を、俺の魔力が許す限り何度でもできるという事。


 魔力チートを持つ俺がいるという事。

 それにより理論上無限に、死兵同然の攻撃力をもって敵に立ち向かえるという事―――――――






「――――――――――ォォォォォオオオオオ!!!!!!!!!!」




 ズバッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!




 ドォォォォォォォォォォンッッッッッ!!!!!!!!!!






 到底捉えられない速度の袈裟斬り。

 目にもとまらぬ脳天からの唐竹割り。

 上半身と下半身を泣き別れさせる、横薙ぎの一閃。


 左右から迫りくる新種を、まずは右、滑らかな動作で手首を返して左。間髪を容れず斬り捨てた。

 剣を振り切った隙を狙われるも、半歩下がり紙一重で回避する。

 絶妙の間合いを維持し、絶え間なく攻撃を見切る。

 取り囲まれようと、まるで意味をなしていないように躱す。


 斬撃が空を断つ轟音が、遠くまで木霊する。

 刀身が閃光の軌跡を描き、次々に躍りかかって来る魔物たちを骨まで易々と断つ。

 血を噴き上げて倒れ伏すその様は、奇怪な噴水のオブジェのようだ。






「――――――立ち塞がるもの一切、両断して見せようぞ」





  

 残心の構えをとり、そう呟いたアルコル軍最強を誇る武官長ダーヴィト。

 彼はどんな攻撃の変化にも対応し、次々と新手と対峙している。


 初戦において不覚をとったのは、相手が見えなかったが故。

 浮き彫りとなった敵影を捕捉できさえすれば、この程度の戦闘力の相手は物の数ではないのだ。




 この偉丈夫に続いて兵士たちは土魔法で障害物を創造し、追い込み漁のように敵を囲んでいく。

 それをもって魔法で作り上げた長大な囲みの中へと、追い立てていく。


 敵を逃がさず、そして討ち取りやすくする妙案といえよう。

 筋書き通りに進む戦況に、思わず感嘆の息は漏れる。




 移動能力を削ぎ落とされた新種の魔物たちは、混乱状態にあるのか右往左往する。

 それを見逃さないのが猛者である。


 熟練たる最低限の動きで、それらを討ち取る。

 この武官長は短時間で、ゆうに数十の敵を抹殺した。

 彼は勇ましく言葉を発し、続く兵たちを奮い立たせる。






「アルコル領の安寧のため!!!我が剣の露と消えよ!!!!!」










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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに援軍が!みなさん戦慣れしていて油断しないので読んでいるこちらも気が抜けません。命懸けの緊迫感が伝わってきました。 そして回復薬はもう、頭から浴びる時代なのですね!キラキラのダーヴィ…
[良い点] ダーヴィトの面目躍如! 彼にも見せ場があって良かった!
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