第12話 「俺専用ロリメイド来た。すき。マジックしよ」 (イラストあり)
「坊ちゃま。以前申し上げましたが今日から私の娘をメイド見習いとして、坊ちゃまにお仕えさせたく存じます」
「あぁそう。娘いるって言ってたな。わかった」
朝飯を食った後、部屋に戻ると俺の乳母のヘンリーケがそう告げた。
俺は記憶の奥底より、そんな話題があったことを思い出す。
「坊ちゃまとは同い年なんですよ! きっと仲良くなれると思います!」
「楽しみだな~どんな子?」
美少女だといいな~~~
ヘンリーケは……まぁ愛嬌はあるし期待はできるか……?
「そうですねぇ…………まぁ……坊ちゃまによくお仕えするように言い含めておりますので……何かあったら遠慮なく叱ってやってください」
「お……おう」
なんだか不安になってきたぞ……
まぁ子供やし……多少は大目に見るけど……
「もう屋敷には連れてきてるんですよ!今呼んできますね!」
期待と不安を織り交ぜながら、そわそわと自室にて待ち受ける。
どのような出会いとなるのであろうか。
同年代の友人が絶無の俺は、焦がれる感情があった。
「お待たせしました坊ちゃま。ステラ。自己紹介を」
「……」
ヘンリーケが娘らしき人物を連れてくるが、背中に隠れて顔を出そうとしない。
しかし幼児服くらいの丈のミニスカートのメイド服が、時折覗いていた。
ピンクに近い紫の長いツインテールが、ぴょこんと見え隠れしている。
どうしたのかな~~~?
お顔が見えないね~~~
「ほらステラ! 隠れてないでご挨拶だよ!」
「…………………………すてら……………ほふまん…………でしゅ……」
が…………がわ゛い゛い゛ね゛ぇ゛!!!!!!!!!!!
甘ったるいほどのアニメ声がしたかと思うと、これまた可愛らしいベビーフェイスが顔を出す。
両手を丸めて口に添え。
ふるふると小動物のように震えながら、おどおどと俺と目を合わせようとする。
だが俺と視線が合うとすぐに目をそらし、もじもじする。
潤んだ目が最高にチャーミングだ……
涙は女の子の最高のお化粧だぁ……
ち゛ょ゛お゛がわ゛い゛い゛ね゛ぇ゛!!!!!!!!!!!
「ステラ! ご主人様にしっかりお仕えするんだよ!」
「……………………ふぁい」
「アルタイルだ。これからよろしく」
乳兄弟だからね♡ 仲良くしようね♡
乳兄弟は強い絆で結ばれてるから、結婚しないといけないって知ってたか~~~?
わからないならじっくりねっとり教えてあげるからね♡
ふひひひひぃっっっ!ぶひぃっ!
「私は仕事がありますので二人で遊んでてくださいね! それでは失礼いたします」
…………えっ?
「………………」
「………………(おい会話むずいんだけど!!!!!!)」
沈黙が続いて30秒ほど経過するが、俺にとっては永遠に近く感じる。
気まずいときの時間って、なんでこんな長いん?
とりあえずなんか話さねば……!
「二人きりだね…… さぁ……仲良くしようね…… 」
「――――――っ!!!」
ステラは何故かショックを受けたような顔をした。
なんで?
どうするどうするどうする俺は同年代の女と話したことなんてねーぞ!?
てか男友達も碌にいねーよ!
ここはなんだ?
会話のとっかかりは何かあるか!
子供が好きそうなもの……わからん!
俺中身幼児じゃないし!
くっそどうする……
何とかなりそうなものはないのか!
「そこで魔法ですよ」
「…………っ!?」
俺の言葉にびくぅっ!と体を震わせるニューロリメイド。
涙目である。
かわいいね♡
嗜虐心をそんなにそそられると俺どうにかなっちゃうよ♡
「ごめんねびっくりしたねうふふ」
「ふぇ…………」
ステラは愛らしい眼をぎゅっと瞑る。
どうしたのかな?
俺がカッコよすぎて、直視できなかったのかもしれない。照れるぜ。
まぁいいか。
君にいいものを見せてやろう。
「実はぁ……俺は回復魔法を使えてぇ……見せてあげよっかなぁー……?」
「………………すごぃですぅ」
あれぇ? 反応が鈍くない?
子供は魔法に夢見るものじゃないのかよ!?
アニメで魔法少女とか大好きじゃんお前らメスガキはよぉっ!!!
クソッ話題ミスったか?
魔法は鉄板だろうがこの世界の住人である自覚を持てよ!
これは躾が必要かな?
お医者さんごっこは好きかなぁ~~~?
「………………ふ………っ…うっ……………ひっ……ぐ……」
あっ……俺が無言でいたらステラ泣いちゃった……どうしよう……
泣いてるステラ眺めたい気持ちはあるけど、これからの友好度下がるな……
とにかく気をそらさねば……
今俺ができること……はっ!
「そうだ! ステラは……マジックは好きかな!?!?!?」
よし! 完璧な話題だ!
俺はマジックが超得意!(コミュ障特有の唐突な話題転換}
「……………ふつう」
「そうか、まだステラは知らないんだな。奇跡の如き手品の無限の可能性を……」
知らないから好きじゃない。
それを咎めるほど了見の狭い男ではないよ。
見せてやろう……真のマジックというものを!
「種も仕掛けもございません」
俺は両手を翳してステラに見せる。
彼女は少し泣き止み俺の両手をじっと見る。
この親しくなりたい女の子に、俺はハンカチを渡す。
「そのハンカチを俺に渡してください。3秒で消しましょう」
「……………はい」
ステラは俺にハンカチを渡した。
俺は拳の中にこの布を見えないように握った。
「いきますよ…………3……2………1………はい!!!」
「……………えっ!?」
ステラは小さく驚きの声を上げ、目を丸くする。
俺が手の平を見せると、そこには何もなかったからだ。
ステラは目をしぱしぱと数度瞬きをして、目を擦りあげる。
何もないんだよ。
じゃあもう一度マジックを見せてやろう。
「次はなくなったハンカチを何もないところから出しましょう。いきますよ…………3……2………1………はい!!!」
「えっっっ!?!?!?すっごーーーーーい!!!!!!!!!!」
俺は虚空を掴むと手にはハンカチを掴んでいた。
ステラは泣いていたことも忘れて、俺のスーパーマジックに驚天動地といった様子。
俺が何をしたというかというとチートだ。
文字通りのズルではない。
アイテムボックスを使ったのだ。
アイテムボックスでハンカチを消したのではなくしまい込み、出すときは虚空に出たハンカチを掴んだのだ。
アイテムボックスは俺が念じた場所に、魔法陣やその他の現象もなく瞬時に現れ。
そのまま重力に従い落下する。
その仕様を逆手に取り、消失マジックをしたというわけだ。
ところでステラよ。
俺の体をまさぐっても何もないぞ。
種も仕掛けもないといったはず。
てか顔近い! ガチ恋距離ですよ!
いけません! 可愛いお口にチューしちゃうぞ☆ ぶひひっっっ!
「アル様聞いてるーーー?」
「……えっ? ごめん聞いてなかった」
「…………ふぇ」
「ごめんごめん!もう一度見せてあげるから」
「ほんとぉ!?わーーーーーい!!!!!」
危ない危ないまた泣かせるところだった。
ステラの甘いいい匂いに集中しすぎて聞こえなかったんだ。
でもステラも悪いよ?
悪い子だね……
そんなにベタベタされたら責任取ってあげないといけなくなるなぁ……
ステラは俺の嫁にしてあげないといけないねぇ!!!!!
「ステラは俺の嫁にしてあげないといけないねぇ!!!!!」
あ……やべっ……
「…………お嫁さん? いいよ! ステラ、アル様のお嫁さんになってあげる!」
あ……うれしい……




