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第107話 「最高位(最低辺)存在チューベローズのタノシミ♪」



「エルフ殿は今もいるのかい?」


「はい。隣へ座っております」


 気配察知スキルで姿を消した、俺の奴隷であるはずのエルフ。

 チューベローズを捉えた。


 俺が荷車にのり、御者に馬を引かせるといつの間にか隣で座っていた。

 律儀な叔父上は彼女に挨拶をしようとしているのか、首をあちこちに向けている。


 さっきの騒動を見ていたのだろう。

 そんな無礼な奴にも誠実に対応しようとするなど、礼儀を弁えたお人だと感心する。




「そうか。エルフ殿もよろしくお願いいたします」


「……」


 何も反応がない。

 何やってんだ。早く返事しろ無礼エルフが?




「…………」


 完全に無視している。

 叔父上は微笑みを絶やすことなく、何事もなかったかのように目礼した。

 短いがとても長く思える沈黙が場を満たす。


 き………気まずい………







「――――――――――ひゃあんっ♡」






 自分のものとは思えない上ずった声が喉から漏れた。

 突如として全身を何かで覆われ、下腹部をへそから下へなぞりあげられたからだ。


 そして俺の口を塞ぎ、声が外へ漏れないように蓋をされる。

 もしや件の兇徒ではないかと警戒をして、もがいて抵抗する。

 しかしそれは意図せぬ反応を示した。






「――――――――――じたばたすんなオラッ……!暴れんなよ……!性奴隷がぁ……♡」




 耳元で聞こえるのはチューベローズの声。

 間近で見ると、うっすらと幻影がちらついて正体を現す。


 この魔法もこれだけの至近距離では、意を為さないようだ。

 俺はその容貌を知ると、げんなりする。

 もちろんド変態畜生耳長人だ。




 何やってんだこいつマジで……?

 奴隷にあるまじき蛮行を、何の良心の呵責もなく、戦場の空気を読むことなく行うこのカス。


 俺の臍の穴をその指で弄び、不気味に息を荒くしている。

 なんで俺が透明変質者にセクハラされてる?ふつう逆だろうが?




『ほんとにこんなに誘惑してイケない子でしゅねぇ…ジュルリ♡可愛いね♡シャブって小っちゃい体ふやかしちゃうね?ヂュフフ♡悪い大人に取って食われちゃうね♡いや取って食うぞ♡ボロカスにして捕食してやる♡」



「不意打ちセクハラ……だめぇっ♡んぎぃっ♡そこ敏感っ♡」



 品性が著しく劣っていて、言語は通じていても言葉が通じていない。

 下劣なマジキチと、高潔な俺とでは差がありすぎるのだ。


 いくら俺が美しく愛らしいからと言って、食べちゃいたい(ガチ)をされるなんて御免だ。

 圧倒的美を誇る俺は確かに罪深き存在だが、こんな狂人にこんななことをされるいわれはない。


 俺はそれを拒絶し、戒めるべく言葉をもって思いの丈を伝える。

 愚かなチューベローズが改心することを願い、心を痛めつつも贖罪を求めた。






『……っのぉ!!!ヘイトスピーチもセクハラも魂の殺人!!!即刻謝罪しろ!!!ヘイト女!!!!!』



『うるせぇなカスが♡私のストレスの捌け口の分際がよぉっ♡賤しい下等種は究極生命体エルフ様の欲望の受け皿だっつってんだろが!!!エルフ様専用便器になれ!支配者がだれかわからせてやるっ♡』



 聞くに堪えない汚言をまき散らす、この産廃以下のナマモノ。

 間違いなく魂がこの世界の最下層に位置する、最悪生命体だ。


 誰もが見下すべき存在であるので、もはや打つ手なし。

 こうなれば心苦しいが、世の中のために消えてもらうしかないのだ。




『メチャクチャ害悪じゃん。即刻滅びろよ』



『ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~♡い゛い゛ね゛ぇ゛その顔!最高だぁ゛♡ゾックゾクするよぉ~~~♡キュートアグレッションむくむく湧いてくんなぁ♡お前が苦しむのを見ると心がポカポカするんだ♡ついに見つけたぞぉっ♡わたしのストレス発散の捌け口♡劣等存在は常に不憫じゃないとね♡つ~わけで虐待しま~す♡』



 蔑みの視線を送るも、額に青筋を立てて哄笑するイカレ女。

 目を剝いてドスの利いた声を発し、なんか頭からプチプチはじけるような音が聞こえてくる。

 

 話しながらこぶしを震わせて瞳を閉じ、恍惚の笑みを浮かべている。

 嗜虐心をむき出しにして、低俗な欲望に身を浸しきったその姿の気迫に押された訳ではないが、余りの気色悪さに悲鳴を漏らしてしまう。






「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…………差別……反対ぃ…………」



『イイねぇぇぇぇぇ♡またいい悲鳴をもらってしまった♡ちなみにチューベローズ様の好物は、奴隷生物の幼体の悲鳴だよ!!!!!この必須栄養素を接種しないと、脳細胞が我慢に堪え切れないからね♡だってこのガキ便器をボコボコにしたら、絶対キモチイイってわかるんだもん♡ああ……なんて狂おしいほどに求めさせてくれるんだ…………下賤なチビ人間のそのカオは私の魂をいっっっつも震わせるぅ……………もっと無様な悲鳴を聞かせろぉ……♡ブタぁ……♡』



「……ぅ……ぁ……」



『決まりきった運命として、ゴミおもちゃでも遊ばれてあげないとダメだろ。壊れるまでがもったいないからな♡こんな贅沢に虐待してもらえるなんて、まったくアルタイルってやつはとんだ幸せ者だよ!!!もう普通の人生は歩めないからな♡』



 非常に攻撃性の籠った言葉と態度が、嫌悪感を著しく募らせる。

 理解不能の正気とは思えないこの女だが、この世の汚染物質を凝縮してもこうはならないだろう。


 自分より弱い者の不幸を楽しみ、泣き叫ぶ顔を吟味することを予想して興奮状態にあるチューベローズ。

 舌なめずりをして、歪んだ心の内をこれでもかとばかりに露出している。




『甲高い甘~い声出しやがって♡発情声出して誘惑しやがって♡おねだりとはとんだ甘えん坊だよぉ……いけない子ブタちゃんだ♡今日はたっぷり躾けてやる♡ぶぅぶぅ喚けよ♡躾完了するまでが楽しいんだ♡』


「くすぐったいっ♡やぁっ♡」


『下等生物のガキ滅茶苦茶にしてやるのはたまんねぇなぁ……♡ゴミみてぇにグチャグチャにしてっとマジ生きてるって感じするんだわ♡』


「やめろぉ……♡……キモいっ♡いじわるやだぁ……♡」


『念入りに調教してやった甲斐があったぞ♡気づいているかぁお前?マゾ子ザルが♡選良のエルフ様を甘く見るなよ……♡』


「きゅうんっ♡触んな死ねぇ……♡」


 汚物そのものの表情でネッチョリ嗤うと、エルフという清楚可憐に思える種族にまるで似合わない行動を始めた。

 俺の頬に舌を這わせ、へその下から太ももにかけてフェザータッチをする。

 生暖かい不快な息が吹きかけられて、尋常でない嫌悪感を催す。


 この女の意のままにはさせまいと、心を強く保とうとした。

 しかしその結果、思いもよらない反応が喉から漏れてしまっていた。

 今ようやく気付いたが、なんだこの音は……?どこから聞こえてくるんだこのメス丸出しの甘ったるい声は……?




「はぁ……♡ふぅ……♡」




 自分の頬から粘ついた液体が、このエルフと橋を架けていることが触覚で理解できる。

 背筋が凍るとともに、なぜか体は熱く火照り、自分のものではないみたいになってしまったみたいだ。


 どうしちまったんだ……俺の体……






『ククク……自分の体に何が起こっているか、まるでわからないみたいだなぁ♡』


『何しやがった……♡俺の体にぃ♡』


『おいチビ奴隷。口の利き方がなってないぞ。私のせいにするなよ?証拠を一つ見せてやろう♡…………ガブッッッッッ!!!!!」


「んぎぃっ……♡」


 サイコパスは俺の首に歯を立てる。鋭い犬歯が刺さり、鋭い痛みが走った。

 それでも意図せず甘い声が漏れる。




『情けないザコオスだと自覚しろオラッ!!!マゾ本性ひりだせっ!屈服しろっ!人間としてのプライド粉微塵に粉砕してやるっ!逝けっ!人間失格アクメしろ!尊厳全部捧げて欲望とご主人様に忠実になれば……くれてやるぞ♡貴様が求めるものをなぁ♡』



「ふ……ざけんなぁっ……♡お前が……なんか……やったん……だろうがっ……♡」



『まだ理解できないのか?低知能劣等生物が。貴様ごとき雑魚が、今まで本性を目覚めさせずにいきてこれたのは奇跡なんだから、大人しく頭おかしくしておけ♡』



「するわけ……ねぇだろ……!ボケが……!」



『ふ~~~~~ん?じゃあいたぶられる覚悟はできてるってことなのかな?嘘つきの生意気にはお仕置きだ♡死にたくなるほどぐちゃぐちゃにしてあげるからねっ♡』



 チューベローズは俺の二の腕をきつく締めあげるように握りしめ、残虐性を伴った責め苦を与え続けてくる。

 うっとりと俺の血が付着した犬歯をむき出しにし、邪悪な本性が垣間見えた。


 俺の肌に次々と歯型を刻んでいき、その度に不快な痛みが走る。

 痛々しく鬱血していることだろう。




 痛みが引き金となり、正気が取り戻されてゆく。

 自分の体の状態を正確に把握できるように冷静な思考をすることが、ようやく若干できてきた。


 歯を立てられた箇所がひりひりしていることから、噛み跡が傷としてあるのかもしれない。

 そう思った瞬間、ストローをさすように俺の首筋の傷口に舌をねじ込んできて、蚊のように吸い上げた。






『……………チュルルルルルルルルルル…………チュポンッッッッッ!!!真の甘露じゃ♡一滴残さずベロリンチョだ♡……性奴隷がぁ♡お前の体全部、人生ごと凌辱してやるからなぁ♡世界最高種族エルフ様には勝てるわけないってことだぁ♡』




「………ヒッ……グ………うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん…………」




 高揚しているのか、恍惚と頬を赤く染めて咀嚼を繰り返す。

 至福の時間だとばかりに、獰猛な満面の笑みでそう宣言した。


 形容しがたいほどのおぞましさに、とうとう涙を我慢することができなくなってしまう。

 涙腺がこらえきれず決壊し、情けなくも子供のように泣き出してしまった。


 いやこんなの泣くだろ。

 逆らえない強者に同じこと一遍やられてみろ?

 キモすぎても人は泣くんだ。本当に知りたくなかった。




 キモキモすぎるキモ子はその舌を鞭のように高速でしならせて、俺の涙をその体内へと回収している。

 一通り摂取完了すると俺の泣き声を間近で聞くためか、俺の唇に長い耳を押し付けてくる。

 マジでキモさレベチなんだけど。




 ……も……う…………や……だ…………






「――――――――――アルタイル。ふざけるのはやめなさい」






 声に気づいて振り向く。

 俺の座る荷車の隣に馬を歩かせていたアルビレオ叔父上が、冷たい視線で俺を見つめていた。


 彼は厳しい表情で、俺を睨みつけ眼鏡を押し上げている。

 心臓が止まるかのような衝撃で、思わず俺は泣くのを止めた。


 ひぇぇ……怖いよぉ……




「何を考えている?一人で遊んでいないで、将として毅然とするんだ。アルコル家としての義務を忘れたのか?」



「ひぅぅ……ごめんなさいぃ……」



「……以後、気を付けるように」



 隣にいるチューベローズは、何がおかしいのかくぐもった声で笑っている。

 こっっっっっのクソエルフがぁぁぁぁぁっっっっっ!?!?!?!?!?


 俺がどんなにチューベローズの悪行を訴えても、父上も困り果てたように何ともできないというし、お爺様は聞く耳持たずだ。

 もちろん叔父上にも伝えようとしたが、お互いの忙しさからか何度もすれ違っていた。

 俺はテフヌト様の命令で勉強漬けだったし。


 間が悪かったからか、叔父上はまだこのエルフをプライドが高すぎるが、それ以外は常識的な人格だと勘違いしているようだ。

 兵士たちの行軍の足音で俺の声など聞こえなかっただろうし、何なら俺の言葉はエルフ後だったから、何が起こっているのかわからなかっただろうし。

 チューベローズが魔法で姿を見せていない今、俺が一人芝居でもしているかのような光景だっただろう。


 違う。違うんだ。おそらく歴史上、類を見ないほどの頭おかしい生き物だよ。

 この世の悪を凝縮して、何とか比肩しうる存在だよ。




 隣を歩いているルッコラにも信じられないものを見るような、くだらないものを見るかのような目つきで見られる。

 心に来るんだよそれが一番!?






 くそっ!こいつが来てから散々だ!

 清楚で完全無欠なこの俺がなんか変になってるし!


 何もかもこいつが悪い!!!人類の敵っ!!!!!










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 『間が悪いオッサン、追放されまくる。外れ職業自宅警備員とバカにされたが、魔法で自宅を建てて最強に。僕を信じて着いてきてくれた彼女たちのおかげで成功者へ。僕を追放したやつらは皆ヒドイ目に遭いました。』

追放物の弱点を完全補完した、連続主人公追放テンプレ成り上がり系です。
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― 新着の感想 ―
[良い点] チューベローブに翻弄されるアル様Σ(゜д゜lll) 透明の変態エルフさんにあれやこれや……。 これはひどいですね(;´Д`) アル様しっかり~汗 って、ちょっと気持ちよくなっちゃった(;…
[良い点]  人類というより生きとし生けるものの敵ですな(笑)  ヤバい、ヤバいわ、チューベローズ!
[良い点] チューベローズ最高ですね。 ご飯が美味い。三杯くらいいけます。 とは言いつつ、私の一押しはテフヌト様です。 [一言] 楽しかったのですが、運営からの御指導云々が心配です。
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