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幻竜草量産開始

 ビクシャはまず国を見て回った。それから国内の生産物、金になりそうな品をリスト化して徹底的に洗い出した。


 俺も質問攻めを受け、その中でも彼女が目をつけたのが『幻竜草』である。

 ポチが誕生日に俺にくれたあれだ。


 ということで俺はエナとポチとビクシャを連れてポチのダンジョンへと来ていた。

 トラップにかからないよう先導し、最下層へ。

 ケルベロスだった頃のポチが繋がれていた場所の後ろに『幻竜草』が群生していた。


「お、おおおおお……これは……これはお宝ですよ(あるじ)様ぁーっ!」


「そんなに凄いのか?」


「凄いなんてものじゃないですよコレ! おおぉぉーっ! 幻竜草といえばその名の通り幻の薬草! 一本で金貨100枚に相当すると言われてますよぉぉー!」


 さすが商人だ、詳しい。


「となれば、全部引っこ抜いて売るよりも、増やす方法を模索したいな」


「へっへっへ。じゃあさっそく……えっ!? いえ、さすが主様。もちろん私めもそう思っておりました。本当です」


 舌なめずりして腕まくりしたポーズで固まるビクシャ。

 抜こうとしていたのは間違いない。


「ビクシャよ、これの栽培法は分かるか?」


「うーん、なにゆえ幻の薬草ですので……どんな王宮の書庫を漁っても、栽培記録は見つからないと思いますね。もしあれば今現在幻とはなっていないでしょうし」


「エナ、お前は分かるか?」


 エナも当然首を傾げた。


「分からない」


 ポチが、当たり前のような顔をして言った。


「花をつけたら枯れてタネが残るわふ。でも花は100年に一度しか咲かないわふ。でも大丈夫。真横に伸びる太い根から、どんどん新しい草が生えてくるわふー」


「なるほど。地下茎で増えるタイプの植物か。しかし詳しいなポチ」


「1000年間暇でした。頭の中で草の成長日記を付けてましたわふ」


 えへんと胸を張るポチ。


「ということは土地さえあれば増やせそうだな。この部屋を拡張……できるだろうか」


 俺は【ダンジョン生成】を使ってみる。


 ゴゴゴゴゴゴゴ……。


「わわわっ!? なんですかこれぇーーーーっ!」


「ご主人様ぁっ!」


「んっ」


 俺の体にしがみつく三人。

 そして……。


「ひいぃぃぃぃーーーーっ! 部屋が、部屋が広がってるうううぅぅーーーーっ!!」


 めちゃくちゃ驚くビクシャ。

 俺はエナに聞いた。


「ダンジョンのトラップって壊してもいいか?」


「エドワードの好きなように」


「よし」


 俺は【ダンジョン生成】でトラップを消し、部屋を単純化して繋げ、大部屋を生成した。


「これで後は適当な間隔を開けて植えるだけで増やせるだろう。魔力濃度が変化しないかが心配だが。とりあえずここに幻竜草用の畑を作るとするか。責任者はポチ、お前が適任だろう。やってくれるか?」


 ポチは胸を張った。


「はいですわふ! 必ずご主人様のお役に立って見せますわふ!」


 ポチを責任者として、部下を何人かつけてもいいな。

 この幻竜草栽培事業は国庫を潤す重要な資金源になってくれるに違いない。


「えっと……主様」


 ビクシャが恐る恐るといった感じで俺を見る。


「なんだ?」


「主様は……本当に人間ですか?」


「そうだが」


「ダンジョンを自在に作り変えるなんてスキル、聞いたこともありません。どんな大魔術師でも不可能ですよそんなこと。主様はなぜそんなことができるんですか?」


「いや、エナから【吸魔】してだな」


 俺はビクシャにエナと【吸魔】の説明をした。


「魔王、それにスキル奪取……今私は、自分が信じられない場所に立っていることを実感しました。もしかしたら空腹で倒れて見てる夢なのかも……あいたた、大丈夫夢じゃなかった」


 自分の頬をつねったりしているビクシャ。


「落ち着いたか?」


「はい。ご心配をおかけしました。もう大丈夫です。主様が過去の歴史をひも解いても二人といない偉大なる王であることが分かりましたから」


「ビクシャよ、俺にお世辞は言うな」


「分かりました。では主様は私が生涯を賭けてお仕えするに足る、稀代の英雄であると」


 俺がクギを刺した瞬間に、急に真面目な顔になってそんなことを言う。

 こいつはたしかに商人らしい。


「ではここにある幻竜草は増やすとして、とりあえず試しに一本だけ抜いて、高く売ってみてはもらえないか?」


「かしこまりました!」


 満面の笑みで即答。

 このビクシャという少女は、難題を押し付けられた時ほど一番の笑みを見せるタイプらしい。


 ビクシャは当然、牢で俺が言った言葉を覚えているだろう。

 商人としての力試し。

 それがこれだ。


 金貨100枚が相場の幻竜草。さて、いくらで売るつもりなのか。


「では主様っ! 私といっしょにエンチグの町へ行ってもらえないでしょーーかっ?」


「俺もいかないとダメか? 俺はお前を信頼している」


 売るならビクシャに任せてもいいし、古巣の商会に見つかるのが怖いなら護衛に竜人をつけてもいいのだが。


 俺は彼女が売り上げを誤魔化すなどとは考えていないし、幻竜草を持って逃げるとも思っていない。


 完全に任せていいと考えている。


「もちろん主様の信頼を疑っているわけでないんですけどね。でもこれを最も高く売るなら、主様がいっしょのほうが都合がいいと思いまして。もちろん、主様は国王様。お時間に余裕がないのでしたら私が相応の値段で売却してきますが」


「分かった。ついて行こう」


 ビクシャには何か考えがありそうだ。

 俺は城に戻って旅支度を整え、エンチグの町へ転移することになった。

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