城外開拓開始!
重要な発見があった。
城の住民、つまり元モンスターの人間だ。彼らはモンスターに襲われない。
モンスターからは仲間として認識されているようだ。
だから城の、モンスターへの防備は必要ないということだ。
だが一度人間化すると、まだ人間化していないモンスターとはコミュニケーションが取れなくなる。
俺が人間化する前のモンスターにある程度命令ができたのは、魔王から吸収した【魔物統率】スキルのおかげだ。
モンスターの種類によって知性の差こそあるものの、基本的に、モンスターはあくまでモンスターとしての行動原理でしか動かないのだ。
城内の修復はあらかた終わった。
かつてのボロボロで、今にも崩落しかけていた魔王城は、きらびやかな白亜の城へと生まれ変わっている。
次はいよいよ城外へと着手するときだ。
「森だな」
「森」
俺の言葉を繰り返すように、エナもぽつりとつぶやいた。
城門を出た俺を待っているのは、どこまでも続く森の入り口だ。
そう、魔王城は『魔の森』と呼ばれる大森林地帯の真ん中に存在しているのだ。
モンスターだった頃はどういう食生活を送っていたか知らないが、人間となった彼らには、人間の食事が必要だ。
しばらくの間は俺の【調理】スキルで食料を出すことができるが、できれば自給自足できるようにしたい。
人間の主食とはつまり穀物。小麦だ。
もちろん小麦だけではない。他にも様々な野菜を必要とする。
それらを栽培するために必要なのは……。
「畑がいる」
「畑」
そして畑を作るためには土地がいる。
だが、目の前には森。
燃やすつもりはない。
魔王から【吸魔】した【灼熱地獄】を使えば、この広大な森を地平の先まで火の海と変え、草木一本残らない死の大地にすることが可能だろう。
森を焼き尽くして上がった無数の黒煙は、空を黒く染め上げるだろう。
広大な領土が出来上がる、というわけだ。
だが、炎というものは際限なく延焼し、燃え広がる。
畑を作る分以上の範囲を焼失させても、意味はないのだ。
森に住むシカやイノシシも、貴重な資源だ。
キノコや山菜なども取れる。
むやみに森を焼き尽くすことは、住民にとってもメリットのない行為なのだ。
「王様! どうされました?」
見れば筋肉ムキムキの男が一人。
肩に斧を担いでいる。
「この森を切り開こうと思ってな」
「なら俺らにお任せください。俺は見ての通り木こりでございます。森を切り開くのは得意中の得意です」
男の肩越しに後ろを見れば、似たような恰好の男たちが何人もやってきていた。
「木こりは何人いるんだ?」
「10人ほどです。俺らは人間にしてもらえたことで、以前とは比べ物にならないほど器用になりました。必要なら他の者たちにも声をかけて、もっと大勢で仕事にかかることができます。森を切り開けばいいんですよね?」
その時その時の必要に応じた職に就けるということだ。
モンスターの時は一つのことしかできなかった彼らは、人間となったことで職種に応用が効くようになったのだ。
「任せた」
「了解です。では、王様、行ってまいります」
男たちは森へ向かって歩き出した。
「ふむ。俺も少し手伝うか」
手刀を構えてスキル【裂空断】を発動。
ズバアアアアアアアアアッ!!
メキメキメキメキメキメキ! バキバキバキバキバキバキ!
ドドドォッ!
一気に数十本の木々が斬れて、倒れた。
剣を使う戦士系のモンスターから【吸魔】したスキルだったが、今のステータスで使うと、こんな威力になるのか。
「うわあああああああっ!?」
「おっ、うおおおおっ!?」
「ひいいいぃぃぃぃっ!?」
「なあっ!? はあああああっ!?」
木こりたちが驚いて腰を抜かしていた。
「すまぬ。初めて使ったからまだ威力の調整ができていなかった。大丈夫か?」
「いえ、全然大丈夫……ですけど。でも王様……」
木こりは腰を抜かしたままの苦笑い。
「うん?」
「王様が全部やったほうが、早いのではないでしょうか?」
エナが首を振った。
「エドワード、忙しい」
「それはすみませんです」
木こりはぺこりと頭を下げた。
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