表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/62

交易組の帰還

 交易組が戻ってきた。


「交易組、ただいま戻りました!」


 俺は城の前の広場で彼らを迎えた。


「取引は上手く行ったか?」


「ええ、エドワードの旦那。もちろんでさ。見て下せえこの物資を」


 黒ひげは得意気に鼻の下をこすりながら言った。

 荷運びたちはみな、自分の体の何倍もあろうかという背嚢を担いでいた。

 中に入っているのは農具や生活雑貨だ。


「お前たち、よくやってくれた。これでみなの生活も楽になるというもの」


 男たちは誇らしげに胸を張った。


「ありがたきお言葉!」


「もったいないお言葉でございます!」


 俺は護衛についてくれた竜人にも言葉をかけた。


「よくやってくれたな。道中、何もなかったか?」


「ええ。彼らはモンスターには襲われませんからね。楽なものでした。竜人の里にいた時より安全なくらいでしたよ」


「そうか。後をつけてくる人間はいなかったか?」


「それについても問題はありません。竜眼で確認しました。しかしその件は黒ひげ殿の功績が大きかったように思いますね」


「ほう?」


 黒ひげに目を向ける。


「これだけの物資を一つの店で購入したら怪しまれるだろ? 何軒かに分散させて仕入れたんだ。しかしまあ大変だったのは仕入れより売却のほうでね。俺たちが持って行ったのは金だ。わずかな誤魔化しでも大きな損に繋がるような高価な品だ」


「つまり、誤魔化しがあったと?」


「そう。店主が天秤に細工をしてやがった。俺がいなきゃ大損だったぜ」


 黒ひげは自慢げだが、その態度に見合うだけのことをやってくれたらしい。

 やはり人間社会での経験があるドワーフを同行させて正解だった。


「それはお手柄だ」


「へっへへ。だろう?」


 黒ひげは手を擦り合わせている。何を期待しているかは明白だ。


「もちろん、酒は用意してある。みな中に入ってくれ。今回の旅の功労者たちのために、ささやかな酒宴を用意してある」


「ヒャッホーイ! 王様! 一生ついて行きますぜ!」


 飛び上がる黒ひげ。

 が、まっすぐ城には入らず、俺のそばに来てこんなことを言った。


「王様、次は俺じゃなく別のドワーフを使ってやってくれ」


「どういうことだ?」


「俺だけうまい酒を振る舞ってもらったんじゃ他の連中に悪い。基本的に俺たちドワーフってのは仕事好きだ。太っ腹な雇い主のためならみんな喜んで働きたがるってもんだ」


 結構仲間思いのいいやつらしい。

 そうだな……。

 そういうことなら交易の隊商を増やしてもいいかもしれないな。


 今回は試験的な運用だったが、この調子ならさらに数を増やしても大丈夫そうだ。

 ゆくゆくは交易路をきちんと整備し、馬車を通せるようにしたいところだ。


 エンチグだけでなく、別の人間の町へのルートも考えておこうか。

 複数の町と取引できれば、より様々な商品を手に入れることができる。


 彼らが城へと入った後、残された荷物の周りに人だかりができていた。


「国王様! 針はありますでしょうか?」


「ああ、頼んでおいたから、入っているはずだ。もちろん糸もある」


「やった! これでお裁縫ができる!」


 お互い手を打ち合わせて喜ぶ女性たち。

 服は今まで俺が【縫製】で出していたのだが、やはり自分で縫物をしたいのだろう。


「国王様、お台所用品は……」


「あるはずだ。鍋にフライパンにナイフ。皿やスプーンに関してはまだしばらく木製の物で我慢してもらうことになるが」


 金物類は元々城にあった物の他、竜人やドワーフの里から借りていた物も多い。いずれそれらも返せるだろう。


「これは農具だな。必要な者は並んでくれ」


 クワとか鎌の類だ。これも俺がスキルで出すことのできない物だ。

 俺は物資を求める国民たちを並ばせ、配っていった。


 物資はあっという間になくなった。

 やはり、まだまだ足りない。


「王様!」


 ドワーフだ。黒ひげとは別の者である。


「なんだ?」


「見たところ金物の類が多いようですね」


「まさか……作れるのか?」


 その可能性は考えていたが、しかしドワーフの里の規模だと国民の需要を満たすほどの数を作るというのは……そうか!


「スキルか」 


 ドワーフは笑った。


「そう。俺達にはドワーフ族専用のスキルがある。穴を掘るのも金物を作るのもお手の物ってわけよ。疑うなら試しに任せてみてくだせぇ。族長に頼めばすぐに仕事に取り掛かれますぜ」


 ドワーフ族が作る武具の中には、彼らにしか作れず伝説となっている品も多いと聞く。

 そこには専用のスキルの存在があったのだろう。


「たしかあの鉱山では金を掘っていたな。銅や鉄も手に入るのか?」


「もちろんでさ。金の多い山は少ないですが、銅や鉄ならそれほど貴重ってわけでもねえ。山は他にもありますし、探せば見つかるはずですぜ。鉱石を発見するためのスキルもありますからね」


 これは朗報だ。

 ドワーフ、めちゃくちゃ有能。

 採掘と金属加工のスペシャリストたち。


 はるか昔から人間の王たちに重用されていただけはある。いや、こき使われていたのか。

 後で【門転移】を使ってエリザベスに会いに行こう。


 当分は酒を出すだけでMP消費がとんでもないことになりそうだな。

 もちろん彼らが酒以外の物を要求してきたのなら、最大限の協力をしようと思う。


 ドワーフは仕事好きな種族だと黒ひげは言っていたが、俺は彼らにひどい扱いをするような王にはならない。



ここまで読んでくれてありがとうございます

もしちょっとでも面白いなって思ってくれたなら

↓↓↓↓↓にある[☆☆☆☆☆]から評価、そしてブックマークをお願いします


作者のモチベに繋がります!めちゃくちゃうれしいです!

どうかよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ