門転移
俺には竜人ガダックから【吸魔】していたスキル、【門転移】がある。
確認したところこれは移動用の非常に便利なスキルだと判明した。
上手く行けば帰りはこれでひとっ飛びのはずだ。
これは二つの場所を繋ぐ転移門を作るというスキルで、転移門は設置後、MPを消費することで起動状態にすることができる。
ただしその消費MPは莫大。
門の起動状態も3分しかもたない。
今のところはほとんど俺専用の移動スキルといったところか。
俺は族長エリザベスに許可をもらって、ドワーフの里に転移門を設置させてもらう許可を得た。
族長の屋敷のとなりの空き地。
「では転移門を設置する」
バシュン! バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!
一抱えほどの大きさの四角い石が出現する。
石は合計5つ。
色は真っ黒で、上面には読めない文字が刻まれている。
五芒星を描くよう配置された。
「おおおおおーーーっ!!」
ドワーフたちから驚きの声が上がる。
「なんだこの石は? 見たことねえ材質だ!」
「鉄か? いや違う。黒曜石か? むむむ……」
「溶かしてみてえな。武具になるかもしれん」
物珍しそうに石を検分するドワーフたち。
元々鉱石や鋳造に精通したドワーフ族。この手の石には興味が尽きないのだろう。
「これは凄いな! エドワード! この石を使って武具を作る気はないか?」
エリザベスもキラキラ目を輝かせてそんなことを言った。
「悪いがこれは大事な転移門だ。そういうことならもう一つ出してやってもいいが、この転移門は大切に扱ってくれよ?」
「もちろんだ!」
胸を張って請け合うエリザベス。
「国王様のことはいつも凄い凄いと思っていましたが、今日のこれは私の想像のはるか上です」
リジナが言って、リライザが俺を見る。
「はわぁぁぁ……。国王様、これで国に帰れるの?」
「そのはずだ。まだ試したことはないが」
リムネは興味深そうに石に刻まれた文字を見ている。
「ガダックから【吸魔】したスキルということでしたので、おそらくこれは古代竜人族の間で使われていた文字だと思います。しかし詳しいことは分かりません。里には文献も残ってはいません」
リムネにも分からないのか。
つまり失われた文字ということだろう。
「では、起動する」
ブウウウウウン……。
石が青い光を放ち始める。
「きゃあっ!」
「わわっ!?」
「これは……」
ドドオッ!
光の柱が上がった。
「よし、これで起動状態になった。後はこの中に立てば転移するはずだ。みんな、来い」
恐る恐ると言った感じで俺に体をくっ付ける三人。
「それではな、エリザベス。また会いに来る」
「うむ! エドワード、私はお前が大好きだ! 私が好きになった初めての人間だ! いつでも歓迎する! 好きな時に来るがいい! いや、来てくれーーい! はっはっはーー!」
最後まで高笑いするエリザベス。
俺はその笑い声を聞きながら……転移した。
「ここは……お城の中ですね」
「私たち、ほんとに戻ってきたんだーーっ! 凄ーーい!」
「エドワード様……。竜神の魔法をこうも使いこなしてしまうとは。ガダックですらこの転移魔法を使っているところは見たことありませんでしたのに」
戻ってきたのは城の中でも使われていなかった広い部屋の一つだ。
もしかしたらこの部屋は複数の転送門を設置して、転移拠点として使うことになるかもしれない。
俺たちが立っているのは出発前に設置しておいた転移門の中だ。
「たぶんガダックはMPが足りなかったんだろう。竜神の先祖返りとはいえ、使えるスキルには限りがあったということだ」
「魔王の魔力を持ち、竜神のスキルを使う……エドワード様は神に近いお人です」
「それは言いすぎだと思うが」
俺は神になどなりたくはない。
その時だ。
「はっはっはー! はーっはっはっはー! ここがエドワードの城かー! でかいな! 広いな! 美しいな!」
エリザベスが光の中から現れた。
「どうした?」
「忘れ物だ! はっはっはー!」
金塊の詰まった宝箱だ。
「それではな。はっはっはー!」
来たときと同じように、エリザベスは笑いながら帰っていった。
わざわざこれを届けるために、転移門に入ったのかあいつ……。
しかし今ので分かった。
転移門が起動状態の3分の間ならば、中に入ることで誰でも転移が可能ということだ。
特に俺と手を繋いでいるとか、そういう必要はないらしい。
色々と制約も大きいスキルだから四六時中使うわけにはいかないが、要所要所で活用していこうと思う。
とりあえず近いうちに竜人の里にも同じ物を設置しに行こう。
部屋の入り口にエナが立っていた。
「お帰り、エドワード」
エナはにっこりと笑う。
「ただいま、エナ」
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