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ドワーフの族長エリザベス

 ドワーフの里も竜人の里と同じように500人程度の、そこそこの規模の集落だった。

 建築様式もあまり人間と変わらない。


「リムネ、竜人たちは彼らの存在を知らなかったのか?」


「彼らが住んでいるという報告は偵察の者から得ていました。しかし私は詳しい場所までは知りませんでした。里では魔の森の地図なども作ってはいませんし……」


 魔の森は広い。

 特に敵対や友好関係にある者同士でなければ、あまり詳しくは把握していないと言ったところか。


 俺たちはドワーフの里でも一番大きい建物に連れていかれた。

 天井の高さは人間でも十分なほど高く作られていたので頭をぶつけずに済んだ。


「族長!」


「はっはーっ! なんだぁっ! ずいぶん慌てた声じゃないか黒ひげぇっ!」


 鉱山で俺と話した黒ひげドワーフは、どうやら里でも黒ひげと呼ばれているらしい。

 部屋の奥のふかふかのイスにふんぞり返っていたのは、まだ子供にしか見えない少女だった。


 まあ背が低いのはドワーフという種族の特徴なので、可愛らしい見た目でも立派な成人女性なのだろう。

 黒ひげは一度俺を振り返って言った。


「鉱山に入ってきた侵入者です。人間です。ここに連れてきました」


「なにーー? 人間だとぅっ?」


 ぐいっと体を前に倒してにらんでくるが、少女の可愛い見た目に威圧感はない。

 フサフサした毛皮の服を着ている。


「私は元グレイトウルフなのですが……」


「私もー」


「私は竜人です」


「おいバカ黒ひげっ! こいつら人間じゃないって言ってるぞ! いつもの早とちりか!」


「ひぃっ! 族長ぉっ!?」


 怒鳴られてビクつく黒ひげ君。

 どうやら少女はかなり恐れられているらしい。


 しかも、女性陣の言うことを疑いもせず信用してしまったようだ。

 素直なのか単純なのか。たぶん両方だろう。


「俺はエドワード・クレイル・スターレイモンド。人間だ」


 黒ひげのヒゲを引っ張っていた少女は、ピタリと動きを止めた。


「ほう、私の前で堂々と人間を名乗るとは、度胸のある男だな」


「お前の名前は?」


「人間に名乗る名なんてない! はっはー!」


 思い切り胸を反らして、大口を開けて笑う少女。

 そんながはは笑いをしたところで、見た目が可愛らしいのでおふざけにしか見えない。


「ふむ。お前は相当に人間を嫌っているようだな」


「その通り! 人間は盗人と相場が決まっている! 我が一族がどれほど人間に痛い目に遭わされたか」


「たとえば、どんな目に遭わされたんだ?」


「よくぞ聞いてくれた!!」


 少女は腰に手を当てて話し始めた。


「我々は手先が器用で強力な武具を作ることができーーる! かつては人間族の王に仕え、王国の兵士たちのために武具を打ってやったこともあった! しかーし! 人間は我々への給料の支払いを渋り! 長時間休まずに働かせたのだ!」


 それはひどい雇い主に当たったものだ。

 人間の中には亜人種族に対する偏見や差別を持つ者も少なくない。彼らが不当な扱いを受けるのは、それほど珍しい話ではないのだ。


「我々は鉱山開発が得意だ! 人間族の王に仕え、山で穴を掘っていたこともあーーる! だが人間は我々への給料の支払いを渋り! 休みを与えず! ムチまで打って我々を奴隷のように働かせたのだ! これは許せぬ裏切りである!」


 なるほど。少女が人間を嫌う理由は分かった。


「俺はたしかに人間だが、お前を雇おうと持ち掛けているわけではない。もちろん、鉱山の金を盗みに来たわけでもない」


「なに? それは本当か?」


 真剣な顔になる少女。

 まさか信じるのか? こんなに簡単に?


 そんなことだから人間に騙されるのではないだろうか。

 この少女のことが少し心配になってくる。


 ああ、そうだ。

 そういえばドワーフは酒が好きだと聞いたことがある。

 友好的に話をしたければ酒を贈るのがいいだろう。


「ドワーフよ、空の(たる)を用意してもらえるか?」


「そんな物をいったいどうするつもりだ?」


「いいものをやろう」


 俺が言った瞬間だ。


「いいものか! よし、黒ひげ! 空の酒樽を持ってこーーい!」


 酒樽か。ちょうどいい。

 そして空の樽がどんと置かれた。

 俺は【調理】スキルで出したブドウ酒を、その中に注いだ。


「お、おおおお……酒だ。この男、手から酒を出しているぞ……。神か!? あなたは神なのか!?」


 少女は物凄く驚いて、それから俺を見て目を輝かせていた。


「この酒は勝手に鉱山に入ってしまった詫びだ」


「お、おおおおおお……。うおおおおーーーーっ! こんな人間がいるとはっ! 私は感動した! お前はいいやつだ!」


「じゃあまずは名前を教えてくれるか?」


「エリザベスだ!」


 可愛らしい見た目に可愛らしい名前。

 言動だけが豪快で粗野だ。


 ドワーフの族長とはおかしな少女だった。

 俺はエリザベスに、ここへ来た事情を説明した。

ここまで読んでくれてありがとうございます

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