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ドワーフ族との遭遇

 その鉱山は、明らかに人の手が入っていた。

 地面が踏み慣らされている。


「もう人の手が加わっているな。しかし【気配察知】に反応はない。近くに俺たちを監視する者はいないか」


「どうしますか?」


「入ってみよう」


 俺はリムネにうなずいて入り口へと近づいた。

 リライザが地面を指差した。


「ほら、これ」


 リライザが拾い上げたのは入り口すぐにあった石くれ。その石にキラキラと輝く物が混じっていた。


「金鉱石だな。かなりの純度だ。こんな入り口にこれほどの鉱石が転がっているとなると、中はどうなってるんだ?」


「えへへーすごいでしょ」


 えへんと胸を張るリライザ。


「よくやった。もちろんお前もな、リジナ」


「ハッ。ありがとうござます」


 うやうやしく頭を下げるリジナ。


「よし、では奥へ進んでみるか」


 俺たちは洞窟の奥へ進んだ。

 洞窟を歩き出してすぐに気付いた。


「やはりここは天然の洞窟じゃない。人工的な坑道だ」


 洞窟の壁や天井にはツルハシで削った跡があった。


「ということは金を掘るために誰かが掘った、ということでしょうか?」


「そういうことだな。リライザ、お前奥には行かなかったのか?」


「うん。お姉ちゃんに止められた」


 ぺろっと舌を出すリライザ。

 以前ポチのダンジョンに好奇心から侵入して大ケガをしたリライザも、少しは成長したということだろうか。


「リジナ、いい判断だ」


「もったいないお言葉です」


 この坑道が人工物である以上、少なくとも高い知性を持った何者かである可能性が高い。

 そしてそういった相手は大抵の場合、敵に回せばモンスターよりも厄介だ。


 特にリジナ姉妹は人間基準で言っても、とても美しい容姿をしている。

 相手が山賊とかなら非常に危険だ。


「見ろ、レールだ。トロッコを運んでいたんだ」


 地面にはレールが敷かれ、奥へと続いている。

 レールの表面にホコリは付いていない。


「つい最近まで使われていた……いや、今も使われている。トロッコを使った採掘。人間だろうか? どこかの王国の隠し財源の可能性もあるな。それにしては鉱山周囲が静かだったのが気になるが」


「ど、どうしよう……」


 リライザが体を縮こまらせて震える。


「大丈夫だ。俺の【気配察知】があれば奇襲はまず受けない。一応全員に【竜神の加護】をかけておくか」


「ええっ!?」


 これにはリムネが大きく反応した。


「りゅ、【竜神の加護】!? それは、エドワード様、我が竜人族の中でも滅多に発現する者のいない超級のスキルです」


「ああ、ガダックから【吸魔】したものだ」


「なるほど。ということはエドワード様、魔王の力だけでなく竜神の力まで。ああっ、神々しすぎますっ!」


 目をキラキラと輝かせて興奮するリムネ。

 やれやれ。

 俺は三人に【竜神の加護】を付与した。


 これは1時間の効果時間の間、全ステータスに3倍のボーナス、ダメージを半分にカット、状態異常無効、HP常時回復というとんでもないスキルだ。


「なんという……これはっ! まるで体に羽が生えたようです」


「すごいよ国王様っ! 今ならどんな獲物だって狩れちゃうよっ」


「まさか私が【竜神の加護】を受けることになるなんて。これは貴重な体験です」


 俺たちはレールに沿って進み、その行き止まりにたどり着いた。


「ふぁぁぁぁ……」


「これはっ……」


 姉妹が言葉を失うのも分かる。

 黄金の壁だ。


 ギラギラと輝く金鉱石が、壁一面に顔を覗かせている。

 掘れば掘るだけ金が手に入るような状態だ。


「竜人族はあまり黄金には興味はないですが、人間にとっては特別な物だとは聞いています」


「ああ。これは凄いぞ。この鉱山は……むっ! 誰か来たな」


 【気配察知】に感。後ろからだ。

 俺たちはそろって振り向き、今来た道の先を見据えた。

 気配の主はすぐに姿を現した。


「おうおう、侵入者か? っと……かぁーっ、人間か。人間は生かして返せねえ決まりになってるんだ。悪く思うなよ」


 10人ほどの集団だ。

 全員、子供くらいの背丈しかない。

 しかし見た目はひげ面のおっさん。


「ドワーフか」


 ドワーフ。

 亜人種族の一種。鉱石の採掘や武具の作成に精通した手先の器用な種族だ。


「そうとも。俺たちはこの辺り一帯を縄張りにしているドワーフよ。で、もちろんこの山も俺たちの物なわけだ。つまりあんたたちは侵入者ってことだ」


 この黒ひげドワーフが彼らのリーダーなのだろう。


「いきなり殺す、とは。私も甘く見られたものですね。竜人族の力、見せてあげましょう」


「待て待て」


 前に出ようとしたリムネを引き戻す。


「な、何でですか。エドワード様」


「何でも何も、彼らの言った通りだ。ここが彼らの土地ならまず謝るのは我々のほうだろう」


 黒ひげは片方の眉を跳ね上げた。


「ほう、どうやら盗人ってわけじゃなさそうだな。一応話くらいは聞いてやる」


「俺の名はエドワード・クレイル・スターレイモンド。魔の森、魔王城を中心として建国した国、スターレイモンド国の初代国王だ。勝手に坑道に踏み入った件は謝罪する」


 ドワーフたちはお互い顔を見合わせて話し始める。


「おい、知ってるか?」


「いや、初めて聞いた」


「魔王城ってあれだろ、黒くて陰気でボロボロの」


「ああ。あんなところに人が住んでるって、信じられるか?」


「でもこいつ、すげー堂々としてますよ。本当なのかも」


 リライザが不満顔で言った。


「あんなこと言ってるよ、国王様」


「言っただろう。不法侵入者は我々のほうだ。明らかに人工の坑道と分かっていて入ったのだからな。礼を尽くして分かってもらうほかあるまい」


「国王様は本当にできたお方ですね」


「本当に。竜人族の中にもこれほどの人格者はいません」


 うんうんと感心するリジナとリムネ。

 俺としてはただ当たり前のことを言っているつもりなのだが。


 もちろん山賊の類なら容赦をするつもりはなかったが。しかし彼らがこの地に根を下ろし、長い月日をかけて鉱山開発をしていたのだとしたら、それを横取りするような真似をすればただの盗人である。


 黄金に惹かれてこの地に足は運んだが、俺は盗人になるつもりはない。

 しばらく話し込んでいたドワーフだったが、静かになると代表の黒ひげが言った。


「ひとまず俺らの里まで来てもらう。判断は族長が決める」


「分かった」


 俺たちはドワーフについていくことになった。

ここまで読んでくれてありがとうございます

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