まったり
一日の仕事が終わり、俺は寝室でまったりしていた。
ベッドの背にもたれかかって座り、大の字に広げた俺のひざの間にエナが座っている。
エナはだいたいいつも俺にべったりなのだが、特に一日の終わりのこの時間が一番のお気に入りのようだ。
そして今部屋には俺とエナだけではない。
リムネが少し離れて、テーブル席からこちらを眺めている。
「リムネよ。そういえば、お前はよく俺の元に嫁ぎに来ることを許可されたな」
竜人たちはリムネの命より、姫としての価値を優先するような連中だった。
リムネが一度命を落として改心はしたようだが、そんな大事な姫をあっさりと俺の元へ嫁がせるはずがない。
「説得いたしました」
「説得?」
「ええ。必死に」
穏やかに微笑むリムネ。
だがきっとその笑顔の裏には、想像を絶する決意と駆け引きがあったのだろうと推測できる。
大使を派遣するようなことを匂わせて、いきなり嫁として押しかけてくるあたり、リムネはただの箱入り娘ではない。
「ふっ、お前は大した女のようだな」
「私みたいな女はお嫌いでしょうか?」
「いいや。聡明な女というのも魅力的だ」
「聡明……なんて。私など、エドワード様に比べましたら、地を這うアリのごとき存在です。いいえエドワード様は太陽。比べるのもおこがましいです」
「俺は世辞を言われるのは好きではないのだが」
「いいえ! お世辞ではありません!」
ガタン。
リムネはイスから立ち上がった。
「私はもう200年も生きておりますが、エドワード様より偉大なお方は知りません。労を惜しまず自ら行動し、常に民のことを考えておられます。見ず知らずの竜人族のために協力を惜しまないばかりか、その神のごときお力で私の命を救い、里をお救い下さいました! 私が、どれだけエドワード様のことを敬愛しているか、お慕いしているか、言葉を尽くしても足りません!」
「分った分った。ん? 200年? ああ、竜人族は長命なのか」
見た目はほんの少女なのだ。
「人間の価値観で言えば、老齢かも……しれませんね」
しゅんとしてしまうリムネ。
「いいや、俺は気にしない。見ろ、エナはこう見えてたしか1000歳、いや2000歳だったか?」
まあ討伐されてから復活までの間は年齢にカウントしないとしても、リムネよりは長く生きているだろう。
エナが、俺を見上げてじっと見つめてくる。
こういう時彼女が何を求めているか、俺はもう完璧に把握していた。なでて欲しいアピールだ。
なでなでなで。
エナの頭をなでてやる。
「んふー……」
エナは満面の笑み。
リムネは困っているような、悩んでいるような、なんとも言えない表情でずっとそれを見ていた。
が……。
ぽんぽん。
エナがシーツを叩く。
「リムネ、ここ、座るといい」
「え……」
目を丸くするリムネ。
ぽんぽん
エナはもう一度シーツを叩いた。
「座ると、いい」
「あの、では……失礼します」
リムネがエナのとなり、つまり俺に体を寄せるように密着して座る。
頬を赤くして、物凄く恥ずかしそうだ。
エナが俺を見上げる。
なでなで要求だ。
ん、まさか……。
「エドワード、リムネにしてあげて」
俺は言われるまま、リムネの頭をなでる。
なでなで。
「あっ……」
リムネは一瞬艶っぽい声を上げて、それから俺に体を寄せてきた。
「なんとも、落ち着くものですね。エドワード様にこうされいると、心があたたかいもので満たされていくようです。とても、心地いいのです」
目を閉じて、うっとりとつぶやくリムネ。
俺としても、彼女が喜んでくれたのなら何よりだ。
「好き、です。お慕いしております。エドワード様。愛しております。ずっとおそばに置いてください。どうか……」
「んふー……」
にっこり笑うエナ。
「もちろんだ」
俺は二人の頭に手を置く。
まったりとした時間が流れる。
日頃の激務の疲れが、溶けていくような感覚だ。
俺はしばらくの間、この幸せな時間を堪能した。
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