表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/62

勇者サイド5、転落そして逃亡

 発布された王命は瞬く間に国中に周知された。

 俺、勇者ルシエンのパーティーのメンバー募集だ。


 当然、大勢の人々が我こそはと集まり、列を作った。

 本来ならここで大聖女のユニークスキル【鑑定】で才能を発掘するはずなのだが、大聖女は聖務を理由に聖堂に引っ込んでしまった。


 まあこれだけの大人数、全員を【鑑定】するのはいかな大聖女と言えどもオーバーワークが過ぎる。

 【鑑定】を要請するのはさすがに無茶だろう。


 それに俺たちはもう二度も王の機嫌を損ねている。

 今回はなんとか王命を出させることに成功したが、これ以上の願いは俺たちにとって致命傷になる可能性がある。王は気が短いのだ。


「諸君らは、栄えある勇者のパーティーの一員となるチャンスを得た、幸運な者たちである。だが、人員の空きは1名だ。この狭き門、通る気概のある者たちはいるか!」


 ここはとある貴族から借りた屋敷の一室。貸し切りにしてある。

 俺が聖騎士となった暁に色々と便宜を図ることを条件に、ある程言うことを聞かせられるようになった貴族だ。


 ここには応募してきた者たちの第一陣を集めて並ばせている。

 総勢200名。


「もちろんです!」


「俺は故郷を捨てるつもりで応募しました! どんなことでもします!」


「勇者様のパーティーに入るためならなんだってします!」


「ぜひ俺をパーティーに加えてください!」


「私のほうが役に立ちます!」


 くくく、なかなか生きのいい連中が集まったじゃないか。

 俺は声を張り上げた。


「ならば適性を調べるため、少しの不便を強いることになるが、構わないか!」


「構いません!」


「どうぞ調べてください!」


「俺こそパーティーの一員としてふさわしいです!」


「私のほうが適性があります!」


 ラースとサナヤが手にロープを持って彼らの前に立つ。


「では今から君たちの手足を縛る。立ち去りたい者は去るがいい」


「……」


「……」


 さすがに何かを感じ取ったのか、パラパラと部屋を出て行く者が現れる。

 俺は彼らを引き止めるために言った。


「勇者のパーティーの一員となり、魔王を討伐した際には、そのメンバーは全員聖騎士として列聖される! そのことの意味、分からぬ者はおるまい!」


 部屋から出て行こうとしていた者たちの足が止まる。

 悩んでいるようだ。

 彼らを入れれば残りはだいたい170人程度か。


 十分だ。


「よし、ラース、サナヤ、縛れ!」


 応募者たちの体が縛られてゆく。

 全員の体を拘束し終えたのを確認して俺は言った。


「今から諸君らの魔法への抵抗力を調べる。少々苦痛を伴うが、安心したまえ。【回復(ヒーリング)】とポーションを用意してあるので安全だ!」


「えっ……」


「まさか……」


 応募者たちがざわめき始める。

 その顔に不安の色が浮かぶ。


「始めろ!」


「【火炎弾(ブレイズショット)】!」


 ゴオッ!


 サナヤが魔法を放つ。


「ぎゃあああああああああああっ!!」


 悲鳴。


「魔法の威力は抑えてある! 大げさに騒ぐんじゃない!」


 俺の手元には国に発行させた『応募者適性確認許可証』がある。

 まあその適性確認の内容自体は特に指定されてはいないが。


 だからこそ拡大解釈が効くというものだ。

 なあに、【回復】すりゃ傷は消せるんだ。問題はない。


「何言ってるんだ! 正気なのか!?」


「こんなの普通じゃない! 狂ってる!!」


「やめてくれ! 俺が悪かった! もうやめる! パーティーになんて入らなくていい!」


 次々と泣き言を口にし始める応募者たち。

 なんだなんだ? さっきまであんなに威勢がよかったというのに。


 口先ばかりのウソつきしかいないのか?

 エドワードならこの程度の魔法、そよ風のように耐えていたというのに。


 当然やめない。


「次!」


「【火炎弾(ブレイズショット)】!」


 ゴオオッ!


「ぐあああああああっ!!」


 絶叫。

 応募者たちが暴れ始めた。


「こいつら狂ってやがる!!」


「やってられるか! くそっ! 拘束を解けえええっ!」


「出せええええっ! 部屋から出せえええええっ!!」


「ちっ、このことを国に報告する! 【風裂斬(ウィンドカッター)】!」


 バシュッ!


 一人の男が風の刃でロープを切断、逃げ出そうとする。

 なんだと!?

 俺が動くより早く、魔法が飛んだ。


「【火炎弾(ブレイズショット)】!!」


 ゴバアアアアァッ!!


 サナヤの全力の【火炎弾】が男を包む。


 ドオッ!


 黒コゲになった男は床に倒れた。


「うわあああああっ!?」


「ひっ……」


「こいつ、やりやがった……」


「人殺しだっ!!」


「ひいいぃぃぃっ!」


「助けてくれえええええっ!!」


 狂乱する応募者たち。

 俺はサナヤに怒鳴った。


「バカがっ! なぜ殺した!」


「し、仕方ないじゃない! まさか【風裂斬】を使うなんて……」


「先に魔術スキルの有無は確認しておけと言っただろ!」


「確認したわよ! でもこいつが隠していたのよ! 分かるわけないじゃない! 普通、応募に有利になるスキルを、わざわざ隠しているやつがいるなんて!」


 なんてバカなやつなんだ。


「俺たちには『応募者適性確認許可証』があるんだ! 同意の元の適性確認なら何の問題にもならない! こいつらは一度同意した! 放っておけばよかったんだ!」


「どうする、ルシエン?」


 ラースが俺に聞いてくる。

 この筋肉バカが!

 たまには自分の頭で考えろ!


 くそっ! どうすればいい?

 俺が必死に頭を巡らせていた、その時だ。


「アストラール国治安兵である! 通報があった! 全員動くな!」


 しまった!

 最初に逃げ出した30人の中に、俺たちを怪しんで警備所へ走った者がいたのだ。


 『応募者適性確認許可証』があるとはいえ、さすがに人殺しは言い逃れができないっ!

 なんてツイてないんだ!

 くそったれがっ!


「ルシエン! 逃げるぞ!」


 ガシャン!


 ラースが窓を割って外へと飛び出した。

 サナヤも後に続いてしまう。

 これだけの目撃者を残して逃亡してしまったら俺たちは……。


 外にも人はいるだろう。【光身剣】で全員はやれない。

 20秒でこの場の全員を片付けることは不可能だ。


「くそっ!」


 俺も逃げるしかなかった。

ここまで読んでくれてありがとうございます

もしちょっとでも面白いなって思ってくれたなら

↓↓↓↓↓にある[☆☆☆☆☆]から評価、そしてブックマークをお願いします


作者のモチベに繋がります!めちゃくちゃうれしいです!

どうかよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ