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姫にかけられた呪いの正体

 城の外に出たテムは、石の笛を吹いてドラゴンを呼び寄せた。


 上空を旋回する巨大な影を見てまず住民たちが驚き、それが広場に着陸した際はさらに大きなどよめきに変わった。


「うわあああっ! あれはドラゴン! どうしてこんな場所に?」


「いやああああっ! 助けて! 誰かあああああっ!」


「大丈夫だ。見ろ、国王様だ! あのドラゴンは襲撃に来たわけじゃない!」


「おお、国王様だ! ということはあのドラゴンが新しい国民に?」


「どうしよう、仲良くできるかなあ……」


 などと言っている。

 テムは感心したようにうなずいた。


「エドワード様は国民の方々に大変信頼されていますね。我々はドラゴンに乗って人間世界を偵察に行くこともたまにあるのですが、その際は大抵、町は大混乱に陥ります。それが、ただ姿を見せただけでこうも彼らを安心させてしまうとは。それだけでこの国におけるエドワード様の信頼、敬愛のほどが分かるというもの」


「それはいいが、できれば次からは人の多い場所にドラゴンを呼び付けるのは控えてくれるか? あまりみんなを驚かせたくない」


「それは失礼いたしました」


 俺はテムに聞いてみた。


「このドラゴン、人間にするわけにはいかないか?」


 テムは焦りをあらわにして言った。


「そ、それだけはやめてください。彼はずっと我ら一族と共に暮らす仲間ゆえ」


「そうか、分かった」


 テムといっしょにドラゴンの背に乗ると、住民たちが手を振って歓声を上げた。


「国王様がドラゴンの背に! おおお、なんというご勇姿」


「やっぱりあのドラゴンは敵じゃなかった! 国王様ばんざい!」


「国王様! いってらっしゃいませ!」


「国王様! どうかお気をつけて!」


 俺は片手を上げて彼らに応え、ドラゴンのはばたきによって空へと運ばれるのだった。


「ドラゴンに乗って空を飛ぶというのも、なかなか悪いものじゃないな。景色がいい」


 眼下に広がる大森林を見ながら俺が言うと、テムは驚いた声を上げた。


「初めてドラゴンに乗る者は、吹き付ける風によって声すら出すことができません。エドワード様はなぜそんなに平然としておられるのですか?」


「たいしたことじゃない。風なら魔法で落ち着かせることはできる。お前の周囲も無風状態になっているだろう?」


 もちろんドラゴンの翼に【精霊風】を使うことはしなかった。

 あくまで俺と、テムの周りだけだ。


「そんないともたやすく……我々がドラゴンの背に慣れるまで、どれほどの修練が必要か知っておられるのですか?」


「知らん」


 テムとそんな話をしながら、俺は竜人族の里へと到着した。



 竜人族の里は住民500人ほどの集落だった。

 人間と同じような見た目をしているだけあって、人間と生活様式はあまり変わらないように見える。


 俺はテムに先導されて、ひときわ大きい建物へと案内された。

 その部屋には、多くの竜人たちに囲まれるようにして、ベッドに横たわる一人の少女がいた。


 見た目は他の竜人たちのような褐色の肌で、額には青い宝石――竜眼が付いている。

 ただ他の竜人たちと違うのは彼女が緑ではなく、艶やかな黒髪をしていたことだ。


 人間ならおそらく17歳程度、エナより少し上くらいの年齢に見える。

 姫というだけあってとてつもない美少女だった。


「我らが竜人族の姫、リムネ・エルフランです」


 テムが言った。


 竜人の一人がテムに聞いた。


「そちらの方は?」


「例のお方です」


 テムは短く答える。

 どうやら話しは通っているらしい。


「う……ぁ……はぁ……あっ……」


 リムネはか細い吐息をもらして目を閉じている。

 竜人の一人が言った。


「ガダックに呪われて以降、意識が戻らないのです。【回復】もポーションもほとんど効かず……。姫様の体力は衰えていくばかりです」


「ガダック?」


「姫の婚約者だった人物です。里の竜人たちの中で最も強力で、次期族長に期待されていましたが、力に溺れ、おごり、他者を見下すばかりか、里の仲間をすら殺しました」


「本当にこの方が娘にかけられた呪いを解けるというのか?」


 中年の竜人が俺にするどい目を向けてくる。

 テムがすかさず紹介した。


「族長です」


 つまりリムネの父か。


「いや、協力すると言っただけで、治せるかは分からないが。まあ見てみよう。【診断】!」


 俺は【診断】を使って姫の状態を確認。


【竜骸悪疫】――竜神による呪い。急速なHP低下。すべてのHP回復効果1/10。同格以下のスキルによる解呪不可。


「リムネ姫は竜神の呪いにかかっているぞ。そのガダックというやつは神なのか?」


 その瞬間、周囲にどよめきが走る。


「おお……そのことが分かるとは……」


「ただの【診断】で姫の呪いを見抜くとは。これはまさしく魔王の力……」


「最初見たときは半信半疑だったが、本当に魔王だったとは……」


 【診断】は低レベルの者が使えば、ほとんどの情報が分からない不便なスキルだ。

 竜神の呪いを【診断】したことで、俺のことを魔王と勘違いしているらしい。


 そうか、テムも最初俺を魔王と呼んでいたしな。魔王に協力を仰ぐ、という方向で話がまとまっていたのだろう。


 しかしこれだけはちゃんと訂正しておかなければならない。


「いや、俺は魔王ではない。名前はエドワード・クレイル・スターレイモンド。人間だ」


「えっ、人間!?」


「そんなまさか……。ですが竜神の呪いを見抜くほどの【診断】を使える人間がいるというのは……」


 俺は彼らにも【吸魔】の説明をしなければならなかった。

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