国の名前、決定
「王様王様王様ーーっ!」
ドタドタドタドタ!
執務室に慌ただしくやってきたのは幼女三人。
あの、元はゴブリンだった子供たちだ。
「ん? どうしたお前たち」
「んっふっふー!」
楽しそうに笑うのは三人のリーダー的存在であるアリソンだ。
「にしししし」
「うふふふふ」
他の二人も、まるでいたずらを考えついた時のようなにやけ顔だ。
この前はたしかインク壺の中身を泥にすり変えられていたな。
その前は服にくっつく草の実を、背中にくっ付けられてしまった。
どれも他愛のないいたずらだ。
さて、今日はどんないたずらだろうか。
そんなことを考えていた俺に、三人は隠していた物を出して見せた。
「じゃじゃーーーーん!!」
三人が広げたそれは、大きな巻物。
城の食堂にでも掲げれば、献立メニュー表になりそうな程度の大きさ。
しかし書かれていたのは三人の望みの献立などではなかった。
『えどわーどまほう王国』
子供らしい、読みにくい字でそう書かれていた。
「ふむ。エドワード魔法王国、と読めるな。これは?」
「えへへー、この国の名前だよ」
アリソンが自信たっぷりに言った。
国の名前。はて?
この開拓地にはまだ名前はなかったはずだが。
俺は王様などと呼ばれているが、そういえばこの開拓地を国と呼称したことはなかった。
ふむ、だからか。
アリソンたちは彼女たちなりに、そのことに気付いて、国の名前を考えてくれたということか。
しかし、この名前はあまりにも……。
「なあ、エナ。どう思う?」
こういう時はエナに振るに限る。
俺が断ればアリソンたちは悲しむだろう。
ならエナに断らせることでワンクッション挟むのだ。
エナはこう見えて言うときは結構言いたい放題言うからな。エナの言葉ならアリソンたちも、いつものことなのでそこまで落ち込まないだろう。
しかし……。
「いいと、思う」
「おい」
イスに座る俺の背中にぐでーっと寄りかかって、エナはあっさりと同意してしまう。
なんということだ。
いや、まだあきらめるには早い。
こんな時のために彼がいるのではないか。
「アバト」
「何でございましょう国王様」
「どう思う?」
アバトはアリソンたちが掲げる巻物をちらりと見た。
「……」
それから俺に視線を戻した。
「どう、思う?」
「ああ、いけません。大事な用事を思い出しました。私はこれで」
逃げた、か。
仕方ない。
アリソンたちには酷だがこう言うしかあるまい。
「アリソン」
「なぁにー王様ー?」
「お前たちの気持ちは大変うれしく思う。みんなで話し合って、いい名前を考えてくれたんだと思う。だがな……」
「王様……?」
まずいな。悲しそうな顔をしている。
かと言ってエドワード魔法王国はなぁ。
「アリソン、あれを見ろ」
「?」
アリソンたちが後ろを向いた瞬間、俺は手元の紙に文字を書きなぐった。
「あれってなにー?」
「なんにもないよー?」
「王様ー?」
俺はたった今文字を書いた紙を見せた。
「実はな、もう国の名前は考えてあったのだ」
『スターレイモンド王国』
名前を考えていたなんていうのは当然ウソだ。
たった今、考えた。
この国は、元々ここに住んでいたみんなの国だ。
彼らは元モンスターなので、それをもじって入れた。
「わぁー……」
「ほぉぉー……」
「おおぉー……」
目を大きく見開いて、紙を見つめる三人。
それからばっと両手を上げて飛び跳ねた。
「わぁーい、かっこいーー!」
「かっこいいーーーー!」
「すごーーーい!」
勢いで決めてしまったが、まあ喜んでくれたのでよしとしよう。
やれやれ。
ふうと息を吐いて振り向いてみれば。
「エドワード魔法王国……」
エナが、凄く残念そうな顔をしていた。
「それは無しだ」
この国の名前はスターレイモンド王国に決まった。
俺はこれよりスターレイモンド王国初代国王、エドワード・クレイル・スターレイモンドを名乗ることとなる。
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