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短短編  作者: 林 広正
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宇宙からのメッセージ


 宇宙船での旅も、明日で終わる。数百年に渡る計画が、遂に実現の日を迎えるんだ。

 地球外生命体からのメッセージがきたその日に、僕は生まれた。

 何億光年も離れている星からの、とてもゆるく、とても丁寧なメッセージだったそうだ。

 その星の名前は、エターナル。どこかで聞いたことがある名前だけれど、そのメッセージを解読したというよりは、そう聞こえたから名付けただけで、同じ意味とは限らない。というか、違うと思う。

 エターナルはもう、目の前に見えている。目的地に朝日が昇る頃、着陸する予定になっている。

 そのメッセージは、エターナルへの招待状だった。と、僕らは考えた。実際のところはまだ分からない。けれど僕は感じている。こうしてエターナルの上空に浮かぶ宇宙船に対して攻撃を仕掛けてこないってことは、きっと歓迎している証なんだ。エターナルの技術力なら、容易いことだと思われる。

 そのメッセージは、突然やって来たんだ。僕らにとっては広大なこの地球の、僕が生まれた国のその街にだけ、偶然なのか必然なのか辿り着いた。

 一隻の宇宙船が、無人で降り立った。地球人のお偉いさんが寄り集まって色々と調べた結果、やって来たと思われるその星までは帰れる燃料と、その星への経路が記録されていることが分かった。乗組員はスペースの都合上一人だけ。誰かを乗せてその星へと向かわせるのが礼儀だと、発見者が考えた。

 けれど誰を乗せる? たった一人を選ぶのは難しい。そこで地球は考えた。宇宙船が降り立ったその場所に意味を見出し、その場所で生まれた誰かの中から選ぶべきだとの答えを出し、無作為にコンピューターで選ばれたのが僕だったんだけれど、今になって思うのは、コンピューターは決して無作為ではなく、明確な意図を持って僕を選んでいる。地球の人間は、そのことには気がついていなく、ここまで辿り着いたことに、ただただ喜んでいる。正直僕は、不安しかない。


 上陸した僕を待っていたその星の住人は、予想通りに僕らの想像を超えていた。タコ型でも人型でもなく、宇宙人のイメージとは程遠く、そもそも僕らの星では漫画でも描かれないような形態をしていた。無理やりに言うならば、ミドリムシ? けれどやっぱりしっくりこない。

 宇宙人は僕に、どうして一人で来たんだと、脳内に語りかけてきた。僕は心で思った。一人しか乗れなかったからだ。同じ物を作ればいい。改造をして大人数で来ればいい。宇宙人の言葉が心に響いた。

 僕はなにも考えられずに沈黙をした。

 そのレベルってことか。残念だけど、もう一度あの星にメッセージを送るのは無駄だ。コイツを培養して食料にしよう。本当なら星毎養殖場にしたかったんだけどな。そんな心の声が聞こえてくる。

 僕は思った。僕は世界を救ったんだ。たった一人で来たってことに意味がある。僕は地球の英雄なんだ。そう感じながら、宇宙人が用意した培養液の中に沈んでいく。

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