表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Gliches

鼻から緑茶粉末を噴射する女

作者: 電式|↵

取材のために、どんな感じかやってみるべきだと思いました。

けれども、痛そうだったのでやめました。


こうして茶葉は守られたのです。


 いやホントに。

 あの人はいったい何をやっていたんだろうって思う。


 僕がそれまでに見ていた中で最も奇妙な光景ランキングの第一位は、地下街の交差点でバナナを食べる外国人だった。

 なんでそんなところでバナナを食べようと思ったのかなんて知ったこっちゃない。のっぴきならない理由があったのかもしれない。

 空腹で立ち止まって夢中でバナナを食べていたのが偶然そこだったのかもしれないね。バナナとかコンビニで普通に売ってるし。


 人間、疲れていると何をするのか分からないってのはマジ。

 でも最高にワケの分からない瞬間が訪れたのはついさっき。



 鼻から緑茶粉末を噴射する女に遭遇した。



 電車の中でいきなりだよ!!

 何を言っているのか分からないと思うけど。ほら、お寿司屋さんとかであるじゃん、粉末入れてお湯入れるやつ。


 オシャレなベージュの服を着た女の人が、スマホの画面を見てた。その瞬間までは、ちょっとかわいいなとか思ってたよ?

 なにが引き金になったのかさえ分からないけど、彼女が突然噴射した緑で、彼女の服がハの字に汚れた。車内に舞う緑のエフェクト。


 粉末消火器の活躍をイメージさせるような、彼女を取り付ければ人工衛星の姿勢制御さえできそうなその威力。

 横隔膜に秘められた底力は人体の神秘だと教えてくれる。


 僕を含め周りの人は迷惑以前に状況が掴めなかった。

 何もしてないのに壊れてしまったパソコンを見るような目を彼女に向けるしかなかったのだ。

 1カメ2カメ3カメのリプレイ映像を確認できたとしても、きっと感じている謎を解くことはできないだろう。



 現実世界ってのはファンタジーなんだ。

 いったいどういう技術で緑茶粉末を乾いたままに保っていたのかについては、十分な考察余地があるように思える。

 口に含んだとして、乾燥状態を保つのは難しい。鼻とか痛くなかったのかなとか素直に心配になるよ。そりゃ試してみれば体験できるだろうけど、頭を心配されたくない。


 とにかく、彼女は素知らぬ顔して噴射して、次の駅を真顔で降りていった。

 世間では将来が予測不能な時代(VUCA)に突入したと賑っているけど。動機も目的も予測不能な彼女はその象徴かもしれない。

 何がしたかったのか興味を惹かれるけど、疑問の解決には、探偵を雇う他ないのだろうか。いや、ホームズでも頭を抱えるだろう。



 まあいいや、学校いこ。




 ――鼻から緑茶粉末を噴射する男子学生(・・・・)を筆頭に、インターネット上に続々と報告が上がるようになったのは、それから少し経ってのことである。



電車に乗るときは忘れないで。

あなたの隣人が噴射するかもしれないってこと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ