覚醒
どうも。
グチャグチャグチャグチャ!!!!
とんでもない音と共に、辺りには土煙が立ち込めた。しかしそれも次第に収まり、徐々に全貌が見えてきた。
…リスを、倒す事ができた。近くにあった木が凄まじい勢いでリスに叩きつけられた事により、俺を殺そうとしたリスは、その存在がまるで始めからなかったかのように粉々に砕け散った。
そしてそれと同時に俺は縮めるの力を理解した。今なら分かる。今までの俺は『縮める』の事をまったく理解する事ができていなかった。
そして、今ならこの傷をどうにかすることもできるだろう。もっとも、治せる訳ではないが。
『縮める』
効果は歴然。周囲の土が徐々に縮まり、俺の無くなった腕のところに集中していく。土は縮められる事により形を明確にし、より強固になっていく。そして土は俺の手の形となった。
グーパーグーパー…うん、動く。俺の思う通りに動く手となった。流石に土で出来てるから感触とかまでは分からないけど。
因みにさっきのスキルは声に出していない。スキルの使い方を理解した事で、このように声に出さずとも発動も可能になった。これにより水中だろうとも使えるようになるだろう。
そうだな、少し分かりにくかったかもしれない。だからこのスキルでどうしてリスが倒せたのか、どうして義手を作る事ができたのかを説明しよう。
そして先ず最初に俺が思った事を言わせてもらおう。
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このスキルは言葉遊びだ。そして思い込みの強さも関係しているのだろう。
リスを仕留めた時に叩き付けられた木。アレはリスと木の距離を縮めた事によって発生した事例だ。
え?何を言ってるか分からない?…そうだな、距離を縮めるということが実際にある物で起きるとしたらどうなるか分かるだろうか?
…そう、近くなるのだ。そして近くなると言っても物がそこにある以上、突然目の前に現れる訳ではない、接近してくるのだ。その接近する速度がとんでもなく速い事で、リスを叩きのめす事に成功したのだ。
義手もそうだ。縮まると言っても、適当に縮めるだけではきっと丸い土の塊ができるだけだろう。それではいけない。
確かに血が流れるのを防ぐ事が出来るかもしれないが、それでは生きていく上で不都合が多いだろう。
そこで俺がした事は、縮まり方の設定である。例えるならそう、人が集まる時にどの様に集まるかを指示したのと同じ事だ。
円になって集まれと言えば円になって集まるだろうし、縦に並べと言えば縦に並ぶだろう。これを土で行っただけの事だ。
たったそれだけだが、それのお陰で俺の腕は不自由なく使う事ができそうだ。…滅茶苦茶不恰好だけどな。
しかし、元気に行動するには血が足りない。幾ら傷を塞いだ所で失ってしまった血は元に戻らない。今だっていつ倒れてもおかしくないぐらいフラフラだ。
でもそれを解決する手段は自分から飛び込んで来る。ほら、またドンドン、ドンドンと足音が聞こえて来る。
血を失ったのなら他所から血肉を喰らって補うしかない。そして魔物は食えると話に聞いた事がある。これは殺して食うしかないだろう。
戦闘は先手必勝。俺はいつでも木をぶつけられるようにスキルを発動する準備をしておく。先程のリスとの戦闘により、木は偶然削れた事で鋭利な槍のようになっている。
それで仕留めれば、肉を綺麗に残したまま倒せる様な気がする。そうすれば無事に俺は肉にありつく事ができるだろう。
さぁ、来るぞ。三、二、一…
『縮める』
この森に来て最初に見た狼の様な魔物が姿を現した途端、俺はスキルを発動した。きっと狼は漸く獲物を見つける事に成功した!と勇み足で来た事だろう。見た目からは想像もつかないがスキップすらもしていたかもしれない。
だが、結果はどうだ。俺の放った木は狙いに寸分違わず狼の首筋に突き刺さった…偶然だけどな。狙うには狙ったが、俺にそんな凄まじい狙撃テクニックがある訳じゃない。ビギナーズラックってとこだな。
取り敢えず少し待つか。
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よし、大丈夫そうだな。無いとは思うが動物は死んだふりをするらしいし、魔物がやってもおかしくないからな。
安全を確認し、俺はフラフラしながらも狼の近くに歩み寄った。…生で食う訳にもいかない。火を付けるのも『縮める』で出来そうだ。でも皮は剥いだ事があるし、なんとかなるだろう。
俺は折れた木の枝を幾つか拾い、『縮める』を使い摩擦を起こし、こすり合わせる事で火を付けた。森の中で火を使うと火事になるかもしれないが、此処の木は生命力が強そうだし大丈夫だと思いたい。魔物が匂いに寄って来るのは…うん、仕方ない。そんな事よりも早く食わないと死んでしまいそうだ。
ジュージューと音を立て、油が滴っている肉は誰が見ても旨そうだと評価するだろう。
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もう我慢できない!!食うぞ!まず一口!……お、おおおお!!う、うまい!!
筋肉質な肉は固いという固定観念を一瞬で溶かしてしまうような絶妙な噛み応え!一口かじればさらにもう一口食べたくなるこのうまみ!塩も何もなく味付けゼロにもかかわらず、飽きの来ないこの味!食べていてだれてしまいそうになる脂身もない!!し、至高の逸品だ!
そして俺はそのままの勢いで全ての肉を食いつくしてしまった…なんてことはなく、流石に全部食うことはできないので幾つか干し肉にでもしておくために水気を飛ばしておくなどの処理をしておくことにした。
その後俺は再び森の中を歩き始めていた。え?血はどうしたかって?それは肉が血に変わる行程を短縮することで解決したんだ。こんなことにも使えるとか万能すぎるよな。
…それはともかく寝る場所を探さないとなぁ。もし面倒くさがってこの場所で眠ったらそのまま永遠に起きることができなくなりそうだしな。流石の『縮める』様も何処に何があるかまでは分からないしな。できれば水場が眠れる場所の近くにあると助かるんだが…!?
そんな事を考えていた俺はある光景を目撃し、驚きが隠せなかった。そこに広がっていたモノは、俺が今まで何回も見たことのあったものだった。そしてつい最近にも。
「フェイルツリーじゃねぇか!?」
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