転落
その日は、何かが変だった。村の奴らは何時もなら口煩くオレを罵ってくるはずだったのに、今日は遠巻きにニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべているだけだった。
俺の母親こそ何時もの調子に思えたが、それでもやや勢いがいつも通りでなかった気がする。
おかしい、やっぱり何かがおかしい。いつも通りではない日。いつもより快適に過ごせている筈なのに…俺以外の全員がどこかおかしかった。…嫌な予感がする。何の前触れもなく村の空気がおかしくなるなんて…
そう思いつつも、特にどうすることも出来ない。聞いた所で、教えてもらえないだろう。それどころか聞く前よりも酷くなってしまうかもしれない。触らぬ村民に祟りなしである。
兎に角、ノルマを終えたので家に戻ろうとしたその時、家の中から少し大きな声が聞こえてきた。聞きなれた声だからわかる。これは俺の父親と母親の声だ。互いに声を荒げて何かを話し合っているようだ。
普段は俺を罵ったりして仲のいい二人だが、喧嘩をしていた事だって今まで何回もあった。それで俺に当たってくるような事が無ければ良いが…
「だから何回も言ってるじゃないですか!こんな事が認められる筈がない!いや…認めちゃいけない!!」
激昂しているとも言えるほどの母親の言葉が聞こえてくる。これは何が原因か盗み聞きしておかないとどうなるか分からないな。
「俺だってなんとかしてやりたいさ!!でもな、今年は原因不明の不作なんだよ!!村には不満と不信が高まってる!これを断ったら俺たちだってどうなるか分かんないんだぞ!!」
不作か…嫌だな…
そう思っている間も、二人の話は続いていた。
「だから…だからって!!それを鎮めるためにクロムを生贄にするだなんておかしいじゃないですか!!」
………え?
「あの子は確かにハズレスキルを授かった。それで悲惨な目に合わないように私達が敢えて酷い事を周りに見せつける事で周りから加害が加えられるのを防ぐんじゃなかったんですか!!うっ、うう…」
そこから先は父親の慰める声と母親の泣き噦る声ばかりが聞こえてきた。が、そんなことはどうでも良かった。
俺が…生贄?今までの悪意は俺を守るため??
ああ…頭が…痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…
気づくと俺は村にある崖に立っていた。さっきまでの話は…ちょっと頭が痛い。考えないようにしよう。
この崖の下には死の森がある。多種多様、そして信じられないぐらい恐ろしい強さの魔物がいるらしい。というか、偶に鳴き声とか聞こえてくる…村の外から誰も人が来ないのはそういう理由ら…
ドンッッ!!
…え?
俺の身体が宙に浮いていた。何の前触れもなく…俺の立っていた場所には俺じゃない誰かが立っていた。押しやがったなぁぁぁぁぁ!!!!!!!
何を考えようと現実は変わらず、そのまま俺は抗うこともできず、あっさりと崖の下へと落ちて行った…
ちくしょう…ホントにクソみたいな人生だったな…
☆☆☆☆☆
SIDE???
「ここが例の村なのですね!!うふふふふ…神のご加護を」
少し書き方が下手くそな気もします。ここからの展開に期待してて下さい。
ブクマして下さると嬉しいです