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 緑に発光する溶液の中に、3人の赤ちゃんがいる。


「神様、俺、レーレシアさんと面会するよ。なんでこんなところに赤ちゃんがいるのか分からないし……」


「ううん、何でかは分かるよ」


「え?」


「この子たちは、師匠の妹だよ」


 妹?

 どういうことだ?


「だって最後の転生ボーナスといえば、特性《妹》しかないでしょ?」


 確かにそうだけど……


「じゃあこの子たちがお母さんかお父さんの子供だってこと?」


「うん。実際、師匠の母と天使レーレシアの子供だし……」


 なんと神様には親まで分かるらしい。


 てか、もしかしたら俺も分かるのでは?

 スキル《解析》【特】を使う。


 ……ふむふむ。

 どうやら俺にも分かるようだ。


 半ヒューマン、半天使か。

 ヒューマンの親の方は……お母さんの子供である可能性が非常に高い、と出ているな。かつてお母さんには《解析》を使ったことがあり、そのときの結果を《記憶力向上》で完璧に覚えているのでできる芸当である。

 天使の親の方はまあ、レーレシアさんしかありえないか……レーレシアさんには《解析》を使ったことないから、よく分からないけど。


「確かに、ほぼ間違いなくお母さんとレーレシアさんの子供かな?」


 多分、神様は俺以上に確信を持っているのだろう。


「……あれ? 解決?」


 謎な状況かと思ったけど、よくよく考えたらたいした謎じゃなかったか。

 だって、仕組みは分からないけど、その緑色の溶液の中で3人の赤ちゃんを育てたと。


 そして時期についても、妹だと分かればおのずと分かった。

 ちょうど一年後の6月30日に渡す予定だったのは、神様基準で人間が生命の誕生と言えるためには、受精卵が生まれてから一年経つ必要があったからだ。


「うん、解決だね。師匠がわざわざあの天使に聞くことなんてないと思うよ」


 神様も分かっているようだ。


「え? え? 主! 弟子殿! 吾輩、さっぱりであるが……」


 唯一分かっていないのはブリーだ。


「そこの赤ん坊たちは皆、主の母上殿とその天使殿の間にできた子ということか? しかし主が知らなかったのはなぜだ? 母上が三つ子を産めば、流石に主が気付かないわけないだろう!」


「多分、お母さんも知らないんだと思う」


「ど、どういうことだ!? 自分が妊娠して、出産までするのに気付かないなんて、あり得るのか!?」


 そうか……

 ブリーには受精卵とか、そういう話が全く分からないんだ。

 子供とはお腹を痛めて生むものだという認識だから、そんな頓珍漢なことになる。


 DNAという概念も分からないだろうし、どう説明するのがいのかな?


「ん~、子供ってお母さんのお腹の中で成長するよね。で、お腹の中で成長する前の一番最初の段階で抜き取って、この緑の溶液の中に入れたんだと思う」


「一番最初の段階??」


「受精卵というんだけど……」


「ジュセイラン?」


「まあ名前は良いんだけど、つまりその一番最初の段階からこの緑の溶液に入れて生育させたんだと思う」


 多分こうだけど……と思って神様を見ると、神様は首を何度も縦に振る。


「ボクも師匠の言う通りだと思うよ」


「うぬ、ジュセイラン? というのを抜き取る……というのは魔法を使えば可能なのか?」


 ブリーはまだ納得がいっていないようだ。


 まあ多分、受精卵じゃなくて卵子の状態で抜き取ったんだと思うけど……

 今言っても混乱するだけだろうし。


「お母さんの体内から抜き取るのは、魔法を使えば可能だね」


 まあレーレシアさんなら普通にできるかな?


「うん、転移魔法と念魔法がある程度できれば余裕だよ」


 神様基準の“ある程度”とは、どの程度なのか謎だけどね……



 目の前には3人の赤ちゃん。

 この子たちは父親は違うけど、俺の妹だ。異母兄弟ならぬ、異父兄妹?

 つまり家族だ。それならばこのまま放置なんてありえない。


 本当は、お母さんに育ててほしいけど、まあ無理だ。だってお母さんはこの赤ちゃんたちのことを知らなし……いきなり知らない3人の赤ちゃん渡されて、『育てて』って言われても困惑するだけだろう。

 ならば俺が育てるしかない。


「うん、この3人の赤ちゃんは俺が育てる」


「主……なんて寛大な心なんだ! 主は何も知らなかったのに……その胆力、吾輩感動したぞ! そうだ、吾輩もできる限り手伝うぞ!」


「師匠、ボクも手伝うよ!」


「ブリーも神様もありがとう」


 さて、実際育てるとなったら重要となるのは2点だ。


 誰が育てるか?

 どこで育てるか?


 さっきは俺が育てるって言ったけど、育てられるのは本来なら寝ているはずの時間だけだ。

 俺が日中モブとして活動している間はどうしても他の人が必要だ。


「どこで育てるかについては、できれば、あそこだろうが……」


「あそことは?」


 ブリーが聞き返す。


「ブリーが紹介してくれた場所だよ。つまり、火山国家ルハザ」


 育てる場所として、これ以上の場所はないだろう。

 ルハザの国王が、俺をブリーの子供だと思って、いろいろルハザで子育てするメリットを語っていたが、あの話はとても的を射ていると思う。実際、この世界で一番子育てに適しているのはルハザの王都なのではないだろうか?


 ただ、それ以上に重要な理由がある。

 俺が子育てに参加できるのは寝ている時間だけ、ということだ。他の街で育てたら夜にしか来れないということになってしまう。だが、ルハザなら、地下帝国で昼夜逆転しているため、俺が行く時間は昼となる。


「ブリーは英雄だし……この3人をブリーの子供ってことにしていい?」


「もちろん! それが主のためなら!」


 あの国王様、ブリーの子供(俺)をルハザの王都に住まわせたそうにしてたし、この子たちをブリーの子供って言えば、良い感じになるかな?

 まあ俺のアイテムボックスの中には、余りの転生ボーナスを換金してできた莫大な資産があるからな……最悪、ルハザのどっかの土地を買えばいい。


「師匠、それで……あの天使には面会するの?」


「あー、確かにあんまりする意味はないかな~……でもこんな機械で育てられたわけだし、なんか注意点とかあるかもしれないし、一応面会するかな~」


「了解~じゃ、今から行く?」


「え? 行く? 連絡手段はないの? メールで今から行っていいか伝えるとか……」


「え、そんなのないよ」


 ええ……

 なんかうっすらと思っていたけど、神様たちの世界ってアナログすぎない?

 一年前神様に会うってときも、世界迷宮に潜るとかいう脳筋な方法だったわけだし……


「世界間通信の技術とかないの?」


「ないよ。だって世界の外って文字通り、どの世界にも属してないから世界の外なんだよ……つまりどの世界の法則にも縛られていない場所なんだから」


 まじかぁ。

 神様の言う理由は抽象的過ぎて、分かるような分かんないような微妙なところだけど。


「まあ大抵の神は不便すぎるからって天使を飼ってるけどね。自分の世界から一瞬たりとも出たがらない神も多いしね」


「へー」


「じゃあ、師匠、行こうか」


 あれ?


「神様は自分の世界から出てもいいの?」


「別に? 自分の世界にずっといないといけないってルールはないし……それに自分の世界にいても特に何かしているわけじゃないしね」


 確かに。

 高次元の戦い(笑)をしているだけか。


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