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 現れたのは、12歳くらいの中性的な少年(もしくは少女?)だった。


 左手に包帯が乱雑に巻かれていて、右目に眼帯が付いている。

 マントを棚引かせ、謎のポーズを決めている。


「その魂の色は、我が半身にして師匠に相違ない。

 さあ! 今宵は宴と行こうじゃないか!」


 は、はぁ……

 何を言っているのかよく分からないが、レーレシアさんを吹き飛ばしたのはこいつのはずだ。


 チラリと確認すると、レーレシアさんは倒れていて、意識がないようだ。

 一撃でレーレシアさんを戦闘不能にするなんて、こいつ、とんでもないな。


 てかこいつ何者だ?

 ダンジョンのモンスターとして、人間がいることってあるのか?

 もしそうだとしても、ボス戦直後の次の階層に進む道にこんな強敵を配置するなんて、意地悪すぎる。


「さあ! 再会の宴だ!」


 直後、豪勢な料理が現れた。

 それはとてもおいしそうで……歓迎されてるっぽい?


 でもレーレシアさんを吹き飛ばしたのは、こいつなわけだし……


「あの……あなたは一体?」


 聞いてみた。


「それは難しい質問だな。まあ、まずは座ってくれ、師匠」


 師匠?

 よく分からないが、とりあえず言われたとおりに座ってみた。

 椅子は俺用のお子様サイズの椅子で、シートの位置がテーブルに近い。この体にはぴったりの大きさだ。


「乾杯」


 その少年(もしくは少女?)も座り、グラスを掲げてそう言った。

 俺もつられて、同じようにグラスを掲げて「乾杯」と言う。


「一般的に、ボクが誰かと問われれば、この世界の神ってことになるけど――」


 神様だったのか……

 それなら納得だ。こんなところにいきなり現れたのも、レーレシアさんを一撃で倒したのも。


「――師匠にとってボクは半身であり、同時にボクにとって師匠は半身でもあるんだ。師匠とボクは魂に定められし盟友(ソウルメイト)だからね」


「は、はぁ……師匠って俺のことでいいの?」


「そうだよ、師匠。師匠と僕が魂に定められし盟友(ソウルメイト)だって教えてくれたのも、師匠だし。この服装もかつて師匠がコーディネートしてくれたものなんだ」


 神様は席を立ってクルリと一回転した。

 黒髪に端正な顔立ちなので、様にはなっているが……

 ……うん、ザ・中二病って感じの服装だね……前々世の俺は何を考えていたのだろうか?


「えっと、ソウルメイトって何? てかなんで前々世の俺は、神様も知らないようなことを知ってたんだ? 前々世の俺って人間だよね?」


 聞きたいことが多すぎる。

 神様にこんなに不躾に聞くのは……って思いつつ、でもせっかくの聞けるチャンスだし、聞いておこう。


「師匠は人間だ。結局、普通の人間と同じように過ごして終わった人間だった。表面上は本当にしがない農民だったけど、その裏ではもっと高次元な戦いを繰り広げていたんだ。特に平行世界との調和が乱れて全世界に暗黒界の入り口(ゲートホール)が大量発生するという未曽有の危機を未然に防いだのは、師匠の功績の一つだ。

 ボクと師匠の出会いは、師匠が14歳の時だった。当時のボクはとっても低次元な存在で、人間の街で暮らす遊びをしてたんだ。そんなとき『初めまして、魂に定められし盟友(ソウルメイト)よ。結婚してください!』って言われたんだ。

 ボクも分からないけど、師匠はその時にはもう、遥か高みにいたようだ」


 ……。


「……それで、あなたは何と答えたんですか?」


「オッケーしたんだ。ちょっとでも面白そうだと思ったら、即行動してたから。当時のボクは」


 ええ……

 もう、わけわかんないよ。


「師匠はすごいんだ。空に浮かぶ雲の配置や、虫の鳴き声から見えざるものを感じて、『……終焉の時は近い、か』なんて呟いたりするんだ。ボクはそんな師匠の下で生活して、高次元の存在に至ったんだ。

 最初の頃は師匠の同志たちと高次元な戦いに身を投じていたんだ。なぜか偏狭な農村に高次元の戦士たちが集まっていて……でも彼らは『もうそろそろ妄想ごっこはやめて現実を見ようぜ』って言って低次元な世界へ行ってしまったんだ。その頃から師匠も疲れた顔を見せることが多くなって……結局『魂の浄化のためには、一度死なねばならぬ。しかし我らは魂に定められし盟友(ソウルメイト)、再び相まみえる定めにある』って言って死んじゃったんだ。ボクは神だから、ボクの力を使えば不老不死にもなれる! って告白しても意味はなかった……」


 お、おぅ……

 何と言えばいいのやら……


 もしかして中二病だったりする?


 いやでもこれを聞くのは憚られる……


「師匠、そんな居心地悪そうにしなくてもいいよ。師匠が憶えていないは当然のことなんだから! それにボクたちの魂は深いところで繋がっているんだから、記憶なんて低次元な話はどうだっていいんだ。聞きたいことがあれば僕が答えるしね!」


 ん、このプリンうまいな。


 え? 聞きたいことはないか、だって?

 んー、なんかいろいろ聞きたいことがあった気がするけど……あ、そうだ。


「レーレシアさんを――そこにいる銀髪の天使を吹き飛ばしたのはなんで?」


「あー、それは、アレが許可なくボクの世界に侵入してきたからだよ。まあ師匠を連れてきてくれたっていう一点を持って、生かしておいてあげてるけど……」


「え、不法侵入なんだ……」


「だって天使って原則下界に降りちゃダメだし……アレが目を覚ましたら、説教した後、ボクの世界から追い出すよ」


 右目の眼帯を抑えながらクククと嗤う神様。その姿には、何にも怖いところがない。

 そいやぁ、武神だとか言ってたけど、全然威圧感がないし、怖くもない。良かった良かった。


「じゃ、そろそろ帰るよ」


 用事は済んだ。早くルーチェの隣で寝たい……


「え!? 師匠、もう帰っちゃうんだ!? なんで!?」


「良い子は寝る時間だよ」


「なるほど! それが現況の因果律においては重要であると……」


「まあ、そんなところだ」


 適当に同意しておく。


「じゃ、さいなら~」


 俺はベッドに転移した。


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