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「いきなりですが、あなたは死にました」
目の前にいる白髪の美女は、この世のものとは思えないほど美しい。
「ここは“この世”じゃないですからね……」
「はぁ……」
「あなたは死んで、これから異世界に転生されるのです」
「はぁ……」
俺は死んだ?
全く死んだ覚えはないが。最後の記憶は……駅まで道を歩いていたときだっけ?
近くにトラックは走ってなかったと思うし、死因が分からない。
「死んだときの情報が欲しいのですね、ちょっと待ってください……って! あなた日本人ですか!? キター!! やった! やった! かなりのボーナスが貰えます~………………ごほん、えー……死んだときの情報でしたね。
はい、どうやらマンションの11階のベランダで筋トレをしていた30歳男性が手を滑らかしてしまって、ダンベルを落としてしまったようですね。そしてそのダンベルがあなたの頭に当たり即死、ということみたいです」
「はぁ……」
そんなんで俺は死んだのか。
まあ人間死ぬときは死ぬが、それが自分に降りかかるとは思いたくなかったな。
「ん? 不運死亡ボーナス【超特】ありと出ていますよ!! これはすごい!! 私こんなの初めて見ましたよ! 転生ポイント100倍ですよ!! すごい、すごい!!
しかもまだまだお若くして死んでしまわれたということで、早期死亡ボーナス【大】もついていて、転生ポイントさらに3倍です! 合計で300倍ですね!」
絶世の美女はハイテンションで一気に言う。
不運死亡ボーナス【超特】か……とんでもなく不運な死に方っていうことだろう。普通に歩いてたらいきなりダンベルが降ってきて死ぬ奴なんているのだろうか? もしかしたら俺が史上初かもしれない。嬉しくもなんともない史上初だけど。
しかし、転生ポイントってなんだろう?
そのポイントが多ければ何かいいことがあるのだろうか。
基準がないからよく分からないが、口調から察するに300倍とはかなり大きな数字なのだろう。しかし元が0だったら悲しいけどな。
「そこは安心してください! あなたは日本人なので、もともとの転生ポイントはかなり多いはずです!
それではさっそく、転生準備をしたいと思います。まずは転生先の決定ですね」
「転生先? また日本ということはできるのか?」
「できますが、連続で同じ世界を選択すると転生ポイントが半減してしまいます。それに地球は転生ポイントを使っても大したことができませんし……魔法も何もないですから」
半減しても150倍なら別に問題なさそうだが……今、すごい言葉が聞こえたぞ。魔法?
「はい、地球には魔法はありませんが、たいていの異世界には魔法はありますね」
魔法、あるのかぁ。
男子としてとても気になる。
安牌で日本を選択するか、賭けで異世界を選択するか、悩ましいところだ。
「あっ! 一つ重要なことを言うのを忘れていました。興奮しすぎてて……えへへ。なんでも、招待状があるみたいです。あなたは前世、かなりすごい人だったみたいですね。そのおかげでその世界からの招待状が来てました! しかも【超特】の招待状!! その世界に行けば、転生ポイント100倍が付くんですよ!! 合計でポイント3万倍です、すごすぎませんか!?」
「はぁ……」
どのくらいすごいのか全く分かんないから、何とも言いようがない。
俺の前世……いまから転生することを考えると前々世と言ってもいいかもしれないけど……そのとき俺は偉人だったらしい。日本での俺はたいしてなんでもない人だったけど。
とはいえ、その招待状が来ている異世界にしようかな? 他の異世界にして招待状をふいにするなんてもったいないし。
「まあゆっくり決めればいいですよ。転生する直前まで変更は効きますし」
結局その異世界に転生することにした。
もったいないからというのもあるけど、最大の理由は地球に帰れるからだ。
スキル《転移》【極】
行ったことのある場所に転移可能(距離は無制限)
転生ポイント:100,000
というスキルを使うのだ。
このスキルに、
特性《前世の記憶》
前世の記憶を引き継ぐ
転生ポイント:100
特性《魔力》【神】
魔力の保有量、回復力、操作能力がすべて神レベルになる
転生ポイント:10,000,000
を使う。
《転移》【極】があっても大量の魔力がないと地球に帰ることはできないらしい。世界を渡るわけだし納得だ。それに魔力だけじゃなくて操作能力も必要のようで、双方ともに神レベルの力が必要とのことだった。
そんなん無理じゃん! って思ったが、ななんと神レベルの《魔力》【神】が取れた。
もともとの転生ポイントが350あって、
その100倍かける3倍かける100倍なので、10,500,000ポイントになる。《魔力》【神】を取るのに1000万ポイントもいるので結構ギリギリだったけどね。
絶世の美女曰く、日本人の転生ポイントはトップクラスらしいけど、それでも平均100前後らしい。それなのに俺は350もあるのでとても驚いていた。何でそんなに多かったのかは分かんないけど、まあそれだけ多くて良かった。そのおかげで日本に帰れるようだし。
上の三つは確定としても、残り40万近いポイントが残っていたけど、これには結構悩んだ。
ちなみにスキルや特性に【極】とかついているのがあるけど、これで必要なポイントが決まる。
【才】が一番下で、【並】【上】【特】【超】【極】【神】の順。
それぞれ1、10、100、1000、1万、10万ポイント必要で、最後だけ飛んで1000万ポイント必要になる。
ちなみに【上】レベルで十分達人級らしい。【特】レベルだともうそれこそ世界に一人いるかいないかというレベルなんだそうだ。
そんな中で俺は【特】をたくさん取ることにした。
合計で399ポイント個。
残ったポイントは900で、これを使って容姿など細かい設定を決定した。
特性《人間》
人間です
転生ポイント:1
特性《男》
男です
転生ポイント:1
特性《黒髪》
黒髪です
転生ポイント:1
特性《黒目》
黒目です
転生ポイント:1
特性《美》【上】
整った顔立ちになります
転生ポイント:100
特性《体格》【上】
バランスの良く好ましい体格になります。また理想の体格に戻ろうとする力がとても強いです
転生ポイント:100
特性《姿勢》【上】
自然と姿勢がよくなります
転生ポイント:100
特性《品》【上】
通常なら見苦しいはずの癖を、自然に品を持ったものにさせます
転生ポイント:100
ここまでが容姿。日本に帰ることを考えたら黒髪黒目は外せない。
こっから転生先について。
特性《両親》
両親がいます
転生ポイント:1
特性《兄》
兄がいます
転生ポイント:1
特性《姉》
姉がいます
転生ポイント:1
特性《弟》
弟が生まれます
転生ポイント:10
特性《妹》
妹が生まれます
転生ポイント:10
特性《双子》
双子として生まれます
転生ポイント:100
特性《裕福な家庭》
裕福な家庭に転生します
転生ポイント:100
特性《家族運》
あなたの家族が少しだけ幸運になります
転生ポイント:100
最終的には日本に帰るつもりなので、一人っ子とか荷が重いかなって思うので、兄弟は多い方が良い。
このおかげで少なくとも6人は子供がいることになるので、まあひとりくらいいなくなってもいいんじゃない? っていうね。
ほんの少しだけポイントが残ったので、それはお金に変換してアイテムボックスに入れておいて、俺は転生したのだった。