生まれ変わりました
それは、寒い寒い冬の事だった。
正月の浮かれたテンションで夜道を散歩していた俺は、電柱にぶつかって死んだ。
それは、奇跡なまでに不運が続いた死に方だった。
その一、散歩途中何故だか犬に追いかけられる。
その二、いつもは灯りがついているはずの蛍光灯に灯りがついていなかった。
その三、足元に冬の寒さで凍った水溜りがあり、それで足を滑らせ。
その四、滑らせ転んだ先に電柱。
その五――俺、死亡。
あの場合、死因は何になるんだろうか。
『都内某所で犬の追い回されていた男は、夜道の暗さにより足元を疎かにしてしまい。凍った水溜りに足を滑らせ、そのまま電柱に頭をぶつけて死亡しました』
「ぷふっ!」
ニュースでアホみたいな死に方が報道されるのを考えて笑ってしまう。
ニュースキャスターもどんな心境でそれを読むんだろうか。
絶対楽屋裏で『あの記事、笑いこらえるの大変だったわ』的な話をするんだろうなぁ。
「貴方見た! この子、今笑ったわ! 可愛いわねぇ!!」
この世界での俺の母親が抱きしめてくる。
ちょっと、苦しいですお母さん。
胸に、お母様の豊満な胸に今度は殺されてしまう。
「あぁ、さすが俺たちの娘だな!」
「私たちの可愛い娘――『ミーナ』――」
俺は、生まれ変わったらしい。
女の子に……。
「ほらほらミーナ。いないない……バー!」
「きゃっきゃっ(いや、そこにいるじゃん)」
俺は死んだ直後、転生の間という場所に通され、そこには『次はどんな人生送りたい?』と高校生辺りが昼休みに話してそうなアホな質問が書いてあるパネルがあった。
『美少女に生まれ変わって愛されたいわ』
と書き込んでやった。
すると、アホな質問が書いてあったパネルが光りだし、現在に至る。
しかし、赤ん坊というのは不憫だ。
舌足らず過ぎて喋れないし。そもそも、この世界お母さんたちが何語を喋ってるのかもほとんど分からない。
いないないバーはなんとなく分かったけど。
足が弱くて立てないし。それどころか腕が弱くてハイハイもできない。
一度チャレンジしようとしたが匍匐前進がやっとだった。
歯がないからご飯が食べれなし。まぁ、これはいい。
おっぱいが素晴らしいから、これはいいんだ。
「うぅ(あと、どんだけこれが続くんだ。いや、おっぱいはいいけど)」
「えっ、ミーナ悲しそうな顔してどうしたの!? あっ、ご飯?」
「きゃっきゃっ(まだお腹空いてないけどそれでいいや!)」
「ふふ、本当にママのおっぱい好きでちゅね〜」
「ごくごく(ジャスティスおっぱい)」
そんな、幸せだったり不幸せだったりした赤子の生活は1年半ほどで終わった。
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