最強の吸血鬼が冒険者になるそうですよ?
今回からパソコンで書いて見ました。嬉しすぎるあまりネタがいつもより多くなっています。
笑ってもらえると嬉しいです。
ロザーナの街にたどり着いたアルス。大通りを歩いていれば冒険者ギルドに着くだろうと安易に考えながら道幅の広い石畳の上を歩く。とってもアホである。
「しかし・・・先程の警備はなんだ?身分証明もない怪しいやつを武器の携帯の有無を確認しただけで街に入れるなど・・・ん?携帯・・・携帯・・・あ!」
慌ててポケットをまさぐる怪しいやつ。そして取り出したのは・・・
(ぬおおおおおおおおお!我のスマホ・・・我のスマホがぁぁぁ・・・)
キラータイガーとの戦いのせいで(主にアルスが放った魔法のせいで)ショートし、ただの物言わぬ板と化したアルスのスマホだった。パ○ドラがしたくてセイラに土下座、いや土下寝をして買ってもらったスマホ。ワンクリック詐欺に引っかかってセイラに怒られたり、課金してセイラに怒られたり、失くしてセイラに怒られたり・・・ろくな思い出がないことは置いておき、三年もの間、苦楽ともにしたスマホ。愛着がわいて(セイラに新しい型のスマホを買ってもらえず)保証期間が過ぎても使い続けていたが、遂に壊れてしまった。
「はあ・・・」
アルスはため息を付いてポケットにスマホ(故)を入れる。せめてデータだけは無事であることを祈るしかなかった。
閑話休題
さて、スマホを壊した破壊者アルスは気を取り直してさっきの警備が粗かった理由を考える。服装は学生服なので貴族というよりは執事の格好に近いアルスが貴族だと間違われる事はないだろう。加えてお金もないただの人を街に入れるなど自ら犯罪者を招き入れるようなものだ。たとえ盗賊で無かろうと街には入れないのが普通である。
あれでもないこれでもないとアルスが考えていると酒場のような店から大きな声が聞こえた。
「キラータイガーが近くの森に出現しただと!こんな危ないところにいられるか、俺は別のところへ行かせてもらうぜ!」
「待ってください!今モーブ様に出ていって貰われるとうちの冒険者ギルドには誰もいなくなるのです!どうか・・・どうか考え直してください!」
「うるせえ!冒険者ギルドは冒険者の行動に一切の責任を負わないんだろ!?なら俺がここを出ていこうが自分の責任なんだから冒険者ギルドは口出しすんな!じゃあな!」
そして店から出ていく男。アルスは逃げるように走っていった男の背中を見ながら理解した。
そのキラータイガーなる魔物が近くの森に出現して、それが冒険者が畏怖するほどに強い存在であること。そして、この街を守ることを仕事にしている門番は逃げることもできず、すべてを諦めていたから投げやりな警備の仕方だったことを。
(ふぅむ・・・あまり神から余計なことをするなと言われたが、さすがにこれは介入しても良いだろう。この街に入る口実として冒険者に登録すると言ってしまった上、今後の異世界観光の資金稼ぎにも丁度いい。そのキラータイガーとやらは我が倒してやろうか・・・)
アルスは再び歩き始める。実はその店が冒険者ギルドであるのだが・・・アルスが気づいたのは40分後の事だった。
閑話休題
「はあ、はあ、ここ、だった、のか・・・!ふう、大きい建物を探しておったから見つからぬわけだ。」
アルスの目の前には先程の酒場。結局見つからずに街の隅々まで爆走したアルスは息切れしながらそこにたどり着いた。人に聞けばいいのに。
「失礼しまーす」
セイラの人間に溶け込む講座その一、人の家に行くときは必ず「失礼します」。
人の家の敷居をまたぐのは失礼なことですが、用事があるときはその敷居をまたがなければなりません。その時は必ず事前に謝っておきましょう。「すみません」でもよろしいです。
王はおっちょこちょいなのでこの説明だと公園や会社の入り口でも「失礼します」とか言ってしまいそうなので一応言っておきますが公共の場に入る際は言わなくてもいいですし、会社の入り口は敷居をまたいでもらえるように受付カウンターなどがありますので言わなくて結構です。
あ、どこかの部屋に入る時は言ってくださいね!?ちゃんとノックしてから入るんですよ!?特に私の部屋はノックして返事を聞いてからですよ!
さて、受付カウンターがある公共の場所と言っても良い冒険者ギルドの扉をノックしながら「失礼します」といったアルスは真っ直ぐに受付へと行く。セイラの講座は何一つ役に立たなかった。
「冒険者になりたいのだが・・・ここであってるのだろうか?」
「もうローラルの街は終わりよ・・・冒険者も居なくなってこのギルドも機能しない・・・」
「あ、あの・・・冒険者に・・・」
「もしキラータイガーの出現が嘘だったとしても冒険者の居ない冒険者ギルドなんて唯の酒場・・・」
「おーい、聞いてるか~」
「ははは・・・私ももうウエイトレスに転職ね。でもキラータイガーの出現は確定してるしロザーナもなくなるから私の再就職先は魔獣のお腹なのねー・・・」
「いいのだ・・・我は人に無視される存在なのだ・・・分かってる、分かっている・・・」
「うふふふふふふふ・・・」
「はははははははは・・・」
この後、受付に座っていた女性が長い妄想を終えてアルスに気づいたが、アルスはカウンターに「の」の字を書いていじけていた。それからアルスを慰める為にまた30分ほどかかったのは余談だろう。
閑話休題
「はい、ここに名前と得意なもの書きましょうね~」
受付の女性に書類を渡されアルスは半べそで言われるままに書き込んでいく。
「ぐす・・・出来たぞ」
「すみません読めないです・・・。どこの国の文字ですか?」
渡した瞬間に手元に返ってくる書類。アルスは泣きそうになる。異世界に漢字は通用しなかった。
「失礼ですがアスタイト王国文字は書けますか?」
「アスタイト王国?知らないな・・・」
「人族が住む大陸の三大大国の一つを知らないなんてどんな田舎にいたんですか・・・」
「すごく遠くだ。故に文字も書けぬし読めぬ」
「ごめんなさい、代筆しますね・・・私はアンナと申します。あなたの名前は何ですか?」
偽名にしようか迷うアルス。因みに門番にアルスと言って街の中に入ってるので偽名は即バレます。
「・・・アルスだ」
「何で間が空いたんですか・・・次です、得意なものは何ですか?」
「なぜそんなことを聞くのだ?」
「パーティーを組むときに要るんですよ。剣なら前衛、弓なら後衛という風に割り振れますしそういう情報を持ってるとギルドの方もパーティーを組みたい人に『こんな人が居ますよ~』って紹介できるんです。まあ今は人一人いませんけどねー・・・」
受付の女性、もといアンナは死んだ魚のような目をする。アルスはそんなアンナをほっといて思案に暮れた。
「そうだな・・・槍だ。槍が一番の得意武器だな」
「槍ですか?珍しいですね。」
「そうか?リーチもあるし、慣れれば小回りも効くバランスの良い武器だぞ?」
「若い人たちはみんな見栄えを気にしますので、最初は前衛の人は剣やナイフと書く人が多いんですよ。」
「まあ、愛用していた槍は今手元にないのだがな・・・」
「得意武器は己の拳、と・・・」
「まて、我の得意武器は拳じゃないぞ!?」
「じゃあ新しい槍買うだけのお金持ってます?」
「・・・相場は?」
「ここの近くにあるゴフェルさんの鍛冶屋が売ってる鉄の槍で2000ギルです」
「『ギル』と言うのはお金の単位か?」
「はい、次行きますよ~己の拳が武器の貧乏アルスさーん?」
「確かに我は今文無しだが、拳が武器とは言っておらぬではないか!?おい、話を聞けぇ!」
アルスの冒険者登録は続く・・・
いつの間にか700人以上の方がこの小説を見てくださっていました。
PVも1000を突破して・・・少なくとも700人の方のうち300人の方が「こいつおっせえなぁ・・・はよ次の話更新しろよ!」と思ってらっしゃる!?これは一大事!
それでも待って見てくれてる読者の皆さん大好き!愛してる!
~ある日、アルスとセイラの家にて~
セイラ「いいですか王?」
アルス「何だセイラ改まって?」
セイラ「王は常識がなさすぎです。」
アルス「・・・!」(ショック)
セイラ「いや何ショック受けてるんですか!?」
アルス「なぜ、我が・・・常識がないと言えるのだ?」
セイラ「その手に持ってるものを見てですが?」
アルス「ただの砥石と研磨剤ではないか!」
セイラ「お米を研ぐのにそれは必要ないんですよ、王・・・」
アルス「・・・!」(ショック)
セイラ「いや、当たり前じゃないですか!?」
アルス「しかし見ろセイラよ、この研磨剤には『これでお皿のくすみもピッカピカ!』と書かれておるぞ!皿がいけるのだ、米もいけるであろう?」
セイラ「王、確かに包丁は砥石で『研ぐ』といいますし、研磨剤にも『研ぐ』という漢字はありますが・・・」
アルス「ならばこれが正解であろう!」(どやぁ)
セイラ「お米を研ぐのに要るのは水と手だけです!王が持ってる研磨剤は『食器用』!お米に使ってはいけません!」
アルス「・・・!」(ショック)