最強の吸血鬼がお金をもらうそうですよ?
受験終わったあああああ!
というわけで更新再開です!
「ん、ん・・・はっ!」
アルスは飛び起きる。ヨダレがテーブルに垂れているのも気にせずに周りをキョロキョロと見回し警戒する。そしてしばらくしてからホッと息を吐いた。
(夢・・・だよな。うむ、夢だ。四足歩行でもないし飯を食べてもない・・・。いや、飯は食べたいのだが)
アルスがお腹を押さえつつ、そういえばテーブルでふて寝してたのだったな、と思い出しているとマックスがアルスに近付き言った。
「ようあんちゃん起きたか」
「うむ。寝心地のいいテーブルだったぞ!流石は宿屋だな!」
「うちはちゃんとしたベッドを提供してるわボケ!」
マックスがそうツッコんだ後、アルスが座っていたテーブルの席に座る。テーブルに手を置き哀愁漂う顔で遠くを見る・・・といったところでアルスのヨダレが手についた。
ベチョ。
「実はな・・・ってうお!きっちゃね!」
「格好つかないな貴様は・・・」
「うるせぇ!店閉まいだ店閉まい!店畳むんだよ、さっさと出てけ!」
「それはまた急な話だな」
アルスが目を丸くして言う。マックスはシャロッタが言ってた事なんだけどよ、と前置きしてから
「どうやら俺らは客に騙されてたみてぇでよ。金勘定が苦手なことを良い事に支払いを誤魔化されてたらしい」
と、バツが悪そうに頭を掻いた。いや、我が言ったことそのままではないかとアルスがツッコもうとする前にマックスが続ける。
「あいつは俺らより頭が良い。俺らが考えもしなかった事に気付いたんだよ」
まったく、俺の娘ながら優秀だぜ•••と笑顔を浮かべながら頷くマックス。
いや、だからそれ我が言ったことなのだがとアルスが訂正する前にマックスが立ち上がり
「だからよ、決めたんだ。店を畳むってな」
じゃあな、とアルスに背を向けて厨房に消えていったマックス。アルスは一人残されて、
「それ全部我がシャロッタに教えたことなのだが•••」
と呟くしか無かった。
閑話休題
結局、昨日は仕事をしてもお金が手に入らなかったのでアルスは一文無しのまま。お腹をすかせながらアルスはギルドの扉をくぐる。
「アンナよ〜、仕事をくれ〜。何ならお金でも良いぞ!?」
「何で貴方に私がお金あげなくちゃならないのよ!」
開口一番、金の無心をするアルスに容赦なくツッコむアンナ。彼女の目には隈ができていた。
「・・・どうしたアンナよ。酷い顔だな」
「誰のせいだと思う?」
「妖怪?」
「貴方のせいよ貴方のせい!昨日のアレのせいで私は徹夜だったのよ!」
「そうか、まあどうでもよいな!」
「どうでもいいわけ無いでしょおおお!!」
受付カウンターに突っ伏して、絶叫するアンナ。誰か彼女に胃薬をあげて欲しい。
「って、昨日の依頼は?」
「達成したぞ?」
「依頼表にサインは?」
「ん?我のでいいのか?んじゃ早速・・・」
「いいわけ無いでしょ!!」
アンナはアルスが懐から取り出した依頼表を取り上げる。声を荒げつつ、
「良い!?依頼表にサイン出来るのは依頼主だけなの!ちゃんとここに『「白銀の鳥」看板娘 シャロッタ』って書いてるでしょ?彼女にサイン貰えるまでお金はあげません!」
と言い切ると、アルスは床に這いつくばった。
「そ、そんな・・・ならば我は、今、文無し・・・なの、か?」
「今日も昨日も文無しじゃないのよ貴方・・・ごほん。アルスさん、ギルド長がお呼びです。」
「断る!」
「オッケー私、彼は唯一の冒険者・・・殴っちゃ駄目なのよ〜?」
「我は金がないのだ!分かったらさっさと」
「ギルド長の所に行ったらお金がもらえるわよ」
「ギルド長という人物の元に連れてゆけ!」
依頼表が張られているボードに向けた足を90度回転させるアルス。ぐきっと嫌な音がするが気にしない。アンナは頬を引きつらせながらアルスを二階へと案内した。
「ギルド長、失礼いたします。例の冒険者をつれてきました」
廊下の突き当たりにある部屋の扉をノックしアンナはそういうと、
「初めまして、でいいのか。初対面の人にはこう言うべきだと教わった。我はアルス。アルス•••」
「アルスさん早い、早いから。まだ部屋にすら入ってないから」
「ん?お主が扉に話しかけるからてっきりその扉が『ギルド長』なるものかと•••」
「はあ・・・そんなわけないでしょ。とりあえず入りなさい、ギルド長が待ってるから」
アンナは自分が二日目にしてアルスの常識の無さぶりに若干慣れ始めている事にため息をつきつつ扉を開けた。アルスが中に入ると目の前に書類が積まれたデスクがあり、そのデスクに腰掛けてうつむいている男がいた。
「・・・寝てるのか?」
「起きてるよ!」
アルスの呟きに男が反論する。顔を上げたその男の顔は酷くやつれていた。無精髭を生やしており、口にくわえたタバコを吸っているその姿は気怠げな目付きとよれよれの服も相まって残業中のサラリーマンみたいになっていた。
「君がアルス君かい?」
「違うぞ!」
「はぁ・・・アンナ君。違う人を連れてきちゃ駄目じゃないか」
「ギルド長?キレていいですか?」
にっこりと笑みを浮かべるアンナ。ただし、その目は笑っていない。
「ごめんごめん・・・全部わかってるよ。君がちゃんとアルス君を連れてきた事は。ちょっとした冗談じゃないか」
「はぁ・・・ずっと懸念していた事項が解決して気分が良いのはわかりますが、私の方はまだ問題だらけなんですよ?冒険者不足による依頼の停滞、森の魔物の増加。魔物の素材不足にロザーナの町民から寄せられる苦情。ただでさえ辺境だから冒険者の数が足りないのにこの前の一件で残っている冒険者は木級冒険者のこの人のみ。もうこの人を死ぬまで働かせるしかないんですよ?」
「いやぁ、でも冒険者は束縛できないからねぇ」
アンナがアルスを指差しながらギルド長に現在の状況を話す。アルスは貰えるお金の事しか考えておらず、何を買おうか想像していたので彼女の「死ぬまで働かせる」発言はアルスは聞こえていない。
「・・・スさん、アルスさん!聞いてます?」
「ん?ああ、近くの焼き鳥屋台が良いと思うぞ!」
「その一言で聞いてない事がわかったわ・・・とりあえず、ギルド長から感謝の言葉と報奨金が貰えるから聞きなさい」
「とりあえず、偶然にしてもこの街を救ってくれたからね。アルス君、君には感謝してるよ•••君があの魔物を倒してくれたのかは分からないが、もしキラータイガーが倒されたという情報がなかったらこの街は冒険者がいなくなって他の魔物に侵攻されて悲惨なものになっていただろう。この功績を称え、金貨10枚・・・といっても君には分からないか。たしか君は白銀の鳥のところで依頼を受けたんだったね・・・ギル換算の方が君には伝わりやすいだろう。100万ギルだ、受け取ってくれ」
ギルド長直々に金貨が詰まった革袋を渡されたアルス。渡されたお金が白銀の鳥1ヶ月分の収入であることを理解したアルスは革袋を持つ手が震え始める。
お金を持ったらすぐ全部使ってしまうアルス。そんな彼に大金を持たせたらどうなるかを危惧したセイラは「いいですか王?今月こそ考えて使って・・・って、話を最後まで聞いてください!」と毎月3000円だけアルスにお小遣いを渡して、お金の管理を覚えさせようと努力していた。
そしてアルスは身につけた。・・・お金の管理でなく、貧乏性を。身の丈に合わないお金を手にすると逆に使えなくなってしまうのだった。
「今後ともロザーナの街をよろしく頼むよ・・・ってあれ?アルス君、おーい」
「だめですね、気絶してます」
白目を向きながら革袋を握りしめているアルスを前に二人はため息を付いた。
閑話休題
1時間ほど意識を飛ばしていたアルスは気づくと、鎌を持ちながら赤ん坊を背負い、犬の散歩をしつつ猫を探していた。
「我は一体どうなっておるのだ!?」
頭を抱えて絶叫しているアルスを道行く人々が怪訝な顔をしながら横を通り過ぎていく。
「おぎゃああああああ!おぎゃああああああ!」
「おおお、よしよしよし・・・って、我は赤ん坊のあやし方などわからんのだが!?」
「ぐるうううううう・・・バウっ!」
「おおい!人にむやみに噛みつきに行こうとするでない!」
「にゃあ~」
「あ、あれが依頼主の言ってた猫かあぽ~ん!なんで我が依頼主と会話をした記憶があるのだの~ん!?まあいい、待つのだ猫べろべろば~!こら、そっちではないぞ犬うにょ~ん!」
・・・本人は至って真面目である。そう本人は。たとえ赤ん坊を抱き上げて変顔をしながらリールで体をぐるぐる巻きにされつつ猫を追いかけていたとしても!
「意識がなかった間に何があったあああああああ!?もにょ~んんんんんん!」
アルスの冒険者業は前途多難である。
「はあ・・・はあ・・・ここに、サ、サインを・・・頼む・・・」
「お、お疲れ様ねぇ。お茶でも飲む?」
ぐったりして床に倒れながら紙を掲げるアルスに、猫探しを依頼をしたお婆さんが心配そうに温かいお茶を差し出す。
そのお茶を仰向けのまま飲み干したアルスは息を整えつつ起き上がる。湯呑をお婆さんに返して礼を言った。
「すまない、助かった」
「ふふ・・・何を謝ってるの?その時は『ありがとう』って言うんですよ」
「ありがとう・・・か。そうだな、ありがとう」
「くすっ、変な冒険者さん」
人が助けてくれたら「ありがとう」と言う。アルスは常識を覚えた。・・・いつまで覚えているかは謎だが。
「うちのミーちゃんを見つけてくれてありがとうねぇ」
「ミーちゃん・・・ああ、猫の名か」
「この子はねぇ、お爺さんが拾ってきた猫なの」
おばあさんが足にすり寄ってくる猫を見ながらアルスに語りかける。
「やんちゃでねぇ、今でも家を抜け出してはどこかにふらっといなくなるのよ」
「ふむ・・・」
「この歳では歩くのも辛くなってきてねぇ、ミーちゃんには大人しくしてほしいんだけど・・・」
よっこらしょ、と近くにあった椅子に座る彼女の膝に猫が飛び乗って丸くなる。彼女はミーちゃんの背中をなでながら微笑んだ。アルスは若干帰りたくなっていたがセイラに「人の話は最後まで聞くこと」と口を酸っぱく言われているため、お婆さんの向かい側の椅子に座り彼女の話に付き合う。
「ほんとに、ミーちゃんは能天気ねぇ・・・昔はずっとお爺さんの側を離れなかったのに、お爺さんが亡くなってしばらくしてから外に行く頻度が増えたわぁ。この家にいることに飽きちゃったのかしらねぇ?」
「そうだな・・・街の北東に何がある?」
「え?古着屋さん・・・洗濯屋さん・・・後は墓地かしら」
「その猫は街の北東に向かっていた。追いかけていたときも北東の方にな。お爺さん・・・その墓地に眠っておるのか?」
「え、ええ・・・」
「猫は気ままなように見えて飼い主への恩や義理を忘れない生き物だ。おそらくお爺さんが眠ってる墓に、その猫は日々通っているのだろう。口に一輪花を咥えてどこかへ行こうとしてたしな」
「ミーちゃん・・・」
「にゃ~?」
「しばらくして、というのはお主が歩くのが辛くなり墓参りにいけなくなった時期ではないのか?」
あくびを噛み殺しながらアルスがお婆さんに言う。彼女は驚いた顔で膝で丸くなっている猫をみる。
「そうね・・・そうだといいわね・・・ミーちゃん、ありがとねぇ」
涙を浮かべて猫の背中を撫でるお婆さんを見ながら、アルスはゴロゴロ言っている猫を注視する。
(これでよいのか?)
(ああ、すまねぇな。手数をかけた)
(なに、我がお主の声をたまたま聞けただけだ。気にするでない)
(それでもさ。ご主人様に迷惑をかけちまったことを謝りたかったんだが「にゃあにゃあ」としか聞こえないらしいしな)
(おいおい、何を謝っている?こんなときは『ありがとう』と言うらしいぞ)
(・・・そうか。ありがとう)
1人と1匹はお互いに笑い合う。・・・まあ、猫は表情筋がないのでひたすらアルスが一人ほくそ笑むような形になっているが。
(ところで・・・お主の声は男っぽいのだが・・・ミーちゃんと呼ばれておるのだな)
(ああ、俺のフルネームはミアウリスっつーんだよ)
(無駄にかっこいいな!?)
おまたせしました。長かった!長かったよお!
次はもっと早く更新します!
あとすみません・・・あとがきに入れるSSを書く余裕がありませんでした・・・
次話ではちゃんと書きますので・・・




