リフレクション
ショコラが撃ち落とされるや否や残りの魔女がティラミスに襲い掛かる。
「もらった!」
ティラミスは魔女から奪っておいたステッキを両手に滝の如く降り注ぐ魔法弾を息も切らさず、捌ききる。
白煙があがる。魔女たちは撃ち取ったものと思い、したり顔だ。
だが、音もなきアサシンと化したティラミスは煙に乗じて油断魔女13体を倒している。
煙が晴れたら驚いている暇はない。
恐らく、無傷で立っていられる魔女は3体。
果たして白煙は風に運ばれ、視界が明るくなる。
「ば、バカな…」
シュガーレイズドが呟くと同時に新たなる犠牲者の悲鳴が鳴り響く。
気を失っているだけだ。許せよ。
ティラミスに代わって俺が心の中で陳謝する。
「あと…3。まだ無益な争いをするつもりですか?」
「ひっ!」
シュガーレイズドが驚いて振り返る。
ティラミスはシュガーレイズドと背中合わせでステッキを喉元に突きつけていた。
互いに大きく跳ねて、反転し、向かい合う。
「調子に乗るのはそこまでよ」
ティラミスの脇腹にステッキを押し当てる小さな魔女。不敵な笑みを浮かべる。
ティラミスのMPが見るまに枯渇していく。
「ーーあと、2」
小さな魔女は笑いながら後ろに倒れていった。MPないぐらいならティラミスにとってハンデくれてやったのと同じだ。
守備力をどんなにあげようと俺やダイアモンドヘラクレスを遊び相手にしていたティラミスだ。
無駄な足掻きにすぎない。
「HPを削れば、回復しえないお前などに勝機などない。ましてリフレクションを持つ我ら2体には!」
ティラミスは真正面からハニー・チュロに向かっていく。
考えがあるんだろうな?
ばか正直に殴りにいけば玉砕だぞ。クリティカルヒットの反射などもらえば自殺行為だぞ。
俺も少し、狼狽える。
ティラミスは何の躊躇もなくハニー・チュロへ殴った。
ガシャーン!
ヤバい音だ。恐れていたクリティカルヒットの反射をまともにティラミスは喰らった。
「トドメよ!」
ティラミス目掛けてハニー・チュロがダーク・オブ・ヘルを放つ。
ティラミス!
トリュフの奴、余計なものを掛けやがって…。俺は体を動かそうとするが僅かに揺れる程度でどうしょうもない。
強い歯軋りで口の端から生暖かい物が伝っていった。鉄臭い血の臭いが口中に広がる。
もう数センチ。
ガシャーン!
「な、何だ?」
動くようになった俺が見たのは膝をついて、前のめりに倒れたハニー・チュロの姿。
ティラミスは超速攻回復薬を立て続けに煽っていた。
「き、貴様リフレクションをマスターしていたのか…」
「いいえ…。初めてこのようなスキルがあることを知りました。これは確かに便利で強いスキルです。しかし、最強では…ない…。それだけは、はっきり言えます」
「何をバカなことを。当たりが強ければ強いほどリフレクションはその本領を発揮するスキルなのだ。言っておくがリフレクションをリフレクションで返すことは出来ないからな。大方そんなことをーー」
「いいえ…。これから証明して見せます。瞬殺という名の最強スキルを」
全快になったティラミスがシュガーレイズドに飛びかかっていく。