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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
90/91

最弱にして最強の魔女たち。そして、俺はティラミスに託す!


「お前からやるのか?全部束になってかかってきてもいいんだぞ」



「ふふふ。一つだけ断っておきたいことがある」



「なんだ?」



「ーー我々は…恐ろしく…弱い…ゆえに…最強!!そして、移ろいゆくはかなき陽炎のように…最弱…ゆえに最強!そう…我々は清く、切なく、美しく…最強!行くぞ!!」



ハニー・チュロは左手を腰に当て、右の人差し指をゆらりと高々あげた。残りの魔女もそれに倣う。



最弱にして最強?意味が分からん。



「とにかくそこをどいてもらおう。遊んでいる暇はないのだ」



「本気ならば思いきりくるがよい。我々も弱いが本気だ」



「どうなっても知らんからな」



ハニー・チュロが何かを詠唱し始めた。どうせ、守備力でもガンガン上げようって魂胆だろう。



無駄だとわからせてやる。



俺は強めに見せかけた弱い力でハニー・チュロの肩を押した。



女だしな。弱いって言っているし、実際そうだろう。ビビって道開けてくれれば本望だ。



ガシャーン



皿か何かが割れたような音が響き渡る。



何だ?体が動かねえ…。


大してダメージは喰らっていない。が、久々にダメージらしいダメージを喰らった。



何が起きたのか、わからない。俺はその場に倒れこんだ。



「ふはははは」



ハニー・チュロは俺を倒したつもりでひと指し指を高らかにあげる。



すぐにでも起き上がりたいのだが体が言うことを聞かない。



久々に喰らったダメージにショックでも受けたのかな?



「魔王さまあん」



いつの間にか目を覚ましたショコラが叫ぶ。



ティラミスがすぐさま飛び出さんばかりのショコラを押さえた。



得体の知れない相手。俺の元へ飛んできたショコラはカモられるのがオチだ。



ティラミスナイス判断だ。



「アイスブレス!」



「ーーリフレクション!」


クッキーが放った氷属性の魔法がハニー・チュロの手前で大きな光に包まれた。



ガシャーン!



その次の瞬間にはクッキー自らがアイスブレスの餌食になり、膝をついていた。



あ、俺の体が動く。立ち上がろうとしたが再びリフレクションのエフェクト音。あのガシャーンの音に俺の体は固まった。


どうなってんだ?



ショコラが回復に回り、クッキーの傷を癒す。



その背後には小さな魔女が…。



「マジックスティール!」


ステッキでショコラの腰辺りを突っついた。



「えっ?何…?えっ、ウソ…。何これ?」



ショコラのMPが毎秒50ずつ減じていく。ショコラはあっというまにMPが枯渇していく。



「この!」



ショコラが小さな魔女を殴った。が、あまりの硬さにショコラのほうが悲鳴をあげ、空へ舞い上がる。



「無駄よ。守備力アップのバフはたんまり掛け済み。私たちはどんなに強い相手でも倒すことができる」



上空のショコラに魔女の総攻撃。ショコラは上手くかわしているが、果たしていつまで体力がもつか?



クッキーはその隙にシュガーレイズドにより倒されてしまった。



死んではいないだろう。今までの洗礼でも死者はだしていないようだから…。



ティラミスは…?目玉だけでティラミスを探す。


ーーと、俺の目の前に影。見覚えのある靴。ティラミス、ここにいたのか。



「パパ上様、しばし…。クッキーさんの仇をうちにいってきます」



ティラミスの靴の後方には俺の元へ来るまでに倒した魔女たちが転がっている。



身じろぎ一つしないがHPには問題ない。気を失わせただけのようだ。



ガシャーンの音が鳴るたびに俺は動けるようになったり、動けなくなったり…。



ここで俺は一つ思い出した。ここに来る前にトリュフに催眠術をかけられたことを。



ただ、食堂で手違いがあったのだ。ガシャーンという音。恐らく、配膳係の誰かが皿を割ったのだろう。



本来は指を鳴らす音に反応するように催眠術をかけたのがあのガシャーンの音に刷りかわってしまったのだ。



それで俺はこのザマ。ここはもうティラミスに任せるしかない。



俺は動かない。腹を決めた。





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