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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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幼女が俺を倒しにくるとか笑止千万 勇者の証

「てってけてーてってててー。かあくぅぐおおおおー(覚悟ー)、母様と父様とおじいさまのかたきぃぃぃいい!」


幼子がよろめきながら俺にいっちょ前に剣を振りかざしてくる。俺はそれどころではないので半歩左に避ける。


「ぴぎゃん!」


幼子は勝手に転び、顔面を強く打った。健気に首を振りながら起き上がる。見上げた根性だ。


「おのれえ、よくもやったな。これでもくらえ、『ふぁいやーぼーる』」


立ち上がった幼子は手のひらを俺にかざすとその手のひらからは炎の玉がほとばしる。炎は俺に向かって一直線。俺は危ないので息で吹き消した。勇者が来る前に火事にされてたまるものか。それでなくても今は忙しいのだ。


「ぬぬぬ。っかしいなあ……。サーペントは真っ黒になったのに……。それなら、脳天を串刺しにしてやるうぅ」


幼子は執務室の本棚を俊敏に駆け上がり飛び上がる。


「ぐえ!」


そこまでは格好良かったが所詮はお子ちゃま。天井に勢いよく頭をぶつけ自滅したまま俺の前に落ちてくる。


「ぬおおおおお」


頭を押さえ悶絶している幼子。はっきり言って邪魔だ。


「お前は何がしたいんだ?さっきからうっとうしい!」


「ひっ」


俺の剣幕に幼子が怯んだ。今にも泣きそうな瞳には大粒の涙が溢れんばかりに溜まって光っている。


隙ありっ!これでも喰らえ、ぷっ」


幼子は泣くと見せ掛けて俺に吹き矢を飛ばした。

俺は首だけ素早く傾け、吹き矢をかわす。それと同時に幼子を足で踏みつけた。


「命は大切にしろよ。貴様は何者でここに何をしにきたのか、簡潔に答えろ」


俺は足の下で亀のようにもがく幼子に静かに諭した。いっちょまえに鎧を身に着けている。鎧は幼子の動きに合わせて情けない音を奏でる。


「放せ!!卑怯もの、正々堂々勝負するのでつ」


「吹き矢飛ばしたお前に卑怯とか言われたかあねえよ。ガキの癖に泣き真似までしやがって」


「後世恐るべしって行為ことを言うのでつね」


「自分で言うな。俺は今忙しいのだ。勇者が俺を倒しにくるというのでな…。お前に構っている暇はないのだ。一体どこから侵入してきたんだ」


「入り口でつ」


「入り口?関係者以外立ち入り禁止だぞ。まあ、勇者は特別だがな…」


「そ、その勇者が私なのでつ」


この期に及んでまだ言うか、ああ言えばこう言う口の減らない子供だ。


「誰が勇者だって?」


俺は首根っこを捕まえると猫のようにつまみ上げた。


あたちでふ」


俺は幼子の両頬を右手の親指と人差し指で挟み撃ちした。


「ふざけるな。お前みたいなガキが勇者なわけないだろう」


「本当でつ!ティラミス嘘つかないもん。証拠もあるのでつ」


不細工にヒョットコのように押し出された唇で必死に幼子、ティラミスは俺に抗議する。


「ほう…。証拠とな。ーーだったら今すぐに出してみろ」


俺はティラミスを解放した。床に落ちたティラミスは腰をさすりながら、苦悶の表情で立ち上がる。


「これでつ」


涙目で左手を俺に向かって差し出す。


ティラミスの親指には何処かで見たことのある指環が光っていた。


「これは…」


俺は遠い記憶を辿る。間違いない、この指環はサラがしていたものだ。


「母様の指環なのでつ。これは遠い昔、母様と勇者様が契ったとおとい、とおとい大事な大事な指環なのでつ」


「ティラミスとか言ったな…。お前の母様とはもしかして…、王国の王女でサラとか言う名前ではないか」


「そうでつ。ーーでも、何で?」


ティラミスはきょとんとした顔で俺を見つめる。俺も驚愕の事実にティラミスの顔を見つめた。


なんてことだ。サラに子供がいたなんて…。俺はひどいショックを受けた


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