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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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トリュフの余興

一時間ほど仔細を語った後、ショコラとティラミスが招待状を持って、クッキーのところへ馬車をだした。


俺も疲れたので、書斎で休もうと立ち上がった。


「魔王様…」


トリュフがわざとらしい咳払いで俺の前にすっと出た。


「どうした?何か秘薬でも処方できたのか?」


「いえ…。怪我をしてすることもないぐらい暇でしたので私、催眠術なる奇術を勉強しておりました」


ズッキーニと目配せすると、ズッキーニが何やらペンダントのようなものを持ってきて、トリュフに手渡した。


「ほう…。して成功したのか?」


「ズッキーニに試しましたら、十中八九…。ズッキーニにやりたい放題。しかも、かかっていた時の記憶もおぼつかず」


「本当か?」


俺は疑いの眼差しをトリュフに向ける。かけた相手がズッキーニってのも気にかかる。


ズッキーニの奴、かかったふりとかしてないだろうな?そういう優しいとこあるからな、ズッキーニは。


「あっ、魔王様さてはトリュフをお疑いで?」


「いやいや、そんなことは…」


ある。図星だ。ーーでも、催眠術使えるなら俺も覚えたい。


俺ならズッキーニにかけるなんて無益なことはしない。可愛い女の子たちに…


「ま、魔王様?」


「ん?」


ズッキーニとトリュフが不思議そうに俺の顔を覗いていた。


「ど、どうしました、急にうわの空でヨダレなど流されて…」


「い、いや!なんでもない!お前たちが急にく、くだらない戯言をほ、ほざくから、つ、つい」


「くだらないことはありません。そんなにいうなら御自分でかかってみればわかります」


「よおし、ぜってーだな、トリュフ。存分にかけて見ろよ」


売り言葉に買い言葉。俺はトリュフの指示に従った。


「ならば、じっとこの左右に揺れるペンダントの先を御覧になってください」


「ふむ」


こんな古典的な催眠術に嵌まるものか。だいたいこんなくだらないものに引っ掛かる奴は単純な奴なんだ。


「ささ、邪念を捨て去り、無の境地でじっと…」


疲れているところにこんな単純でつまらない動きのものを見詰めていると眠気が差す。


「ゆーっくり、ゆーっくり、あなたはふかーいふかーい眠りに陥ります。指をならすごとに一段階ずつ…」


パチン。


いよいよ疲れているな…。


パチン。


体がだる重い…。


「ーー次に指をならすと頭がスッキリします。三、二、一…はい!」


ガシャーン!


パチン。


おっ、快調快調。さっきまでの眠気が吹き飛んだぜ。


何が催眠術だ。全く何も起こらないじゃないか。


「ふふ、ここからが本番。それ!」


トリュフは指をパチパチ、往年のポール牧のように鳴らすが俺は何ともない。


「あれ、おかしいな…」


トリュフが不思議がるが掛かっていないものは掛かっていない。


「俺には効かん。諦めろ」


その矢先にショコラから電話が入った。


「魔王さまぁん。ちょっとご相談があるの」


「何だ、クッキーに断られでもしたか?」


「そうじゃなくてね…。今クッキーちゃんに代わるわね」


「おひさしぶりです。魔王様。その節は親子でお世話になりましてありがとうございました」


「おお、かわりなさそうで。相談とは何だ?また母親の具合でも?」


「いえ、届け先の魔女王、カスタード・ホイップの事なのですが…。時期が悪い…。カスタードの誕生月にあたる今月は城下にある46のケーキ屋が凌ぎを削り、彼女に捧げる創作誕生ケーキの製作に心血を注いでいる月にあたるのです」


「それが何か?別に招待状を置いて帰ってくるだけ。邪魔にはならんはずだ」


「あの王国のケーキ作りは単なるお菓子作りとは違い、神聖なる神への捧げ物の意を持っています。その行為の妨げは所謂神への冒涜行為。ケーキ坂にあるケーキ屋46軒の洗礼全てに打ち勝たなければならないのです。ですが言うは安く。いまだかつて打ち勝った者は誰も無し。みな瀕死の重傷で帰ってくるとか…」


「何だそんなことか…。お安い御用だ。俺がちゃちゃと片付けてこよう。洗礼だか何だか知らんが俺はチートだ。目にものを見せてやるよ」


俺はクッキーたちと合流するため休んでいたパシェリと共に旅立った。


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