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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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ひとまずお城へ

式の日取りは無事決まった。なるべく早くがいいという当人の希望で一ヶ月後。


しかし、伝達手段が問題になった。電話でほとんど事が済むようになったがまだ引けていない場所が一ヶ所だけあったのだ。


高所にあり、湖に囲まれた王国。魔女の治める国だという。


「ならば心当たりがあります。私たちの友人が魔女で、その筋の仕事をしています。招待状を託して頂ければ配達して差し上げます」


ティラミスの提案により招待状はクッキーに託されることになった。


俺たちは一旦、魔王の城へ戻ることにした。


「ペスカトーレさん、よかったですね。お母様もきっとお喜びでしょうね」


「ああ、でも出席してくれるかなあ?人前苦手なんだよな…。っていうか、モンスターの前にも滅多にでないし…。いつもパンを焼いてばっかりなんだ」


「大丈夫ですよ。我が子の晴れの姿ですもの。ーーパンはうちの母上様がお教え差し上げたんですよね」


「そそ、それまでそんな食べ物見たこともなかったし…。旨かったよな…。サラさんのパン」


「サラブレッドって城の内外で有名でしたから…。ペペロンチーノさんだって料理上手だったから上手く焼けるようになったでしょう?」


「まあな…。でもあの時のサラさんには敵わないな。でも、もっと気がかりなのは姉貴だよ」


「カルボナーラさんが?」


「ああ、だって親父代わりにずっと独り身だっただろう?先に私が嫁いじまうと…」


ペスカトーレは済まなそうに下を俯く。


「大丈夫ですよ。カルボナーラさんにもいいモンができますって…。ひょっとしたらペスカトーレさんが知らないだけで案外いるかも知れませんよ」


「だといいんだけど…。生真面目だからな」


「ティラミスよ、その辺で…。パシェリが待ちくたびれている。クッキーに渡すものもあるし。それに向こうでズッキーニたちも…」


俺は楽しげにしているのを悪いと思いながらも間に入った。


招待状をなるべく早く渡しにいかなければならないからだ。


ティラミスは名残惜しげに「ではまた」と手を振り、パシェリの元へ走っていった。


俺もペスカトーレに暫しの別れを告げ、旅立った。


モンブランの城から飛び立ち、パシェリの背中で居眠りをしている間に俺たちは魔王の城へ到着していた。


「魔王さまぁん」


ショコラたちが出迎えてくれた。真っ先に飛び込もうとするショコラを押し退け、ズッキーニが俺の胸元へ飛び込んでくる。


「ま、魔王さま、ズッキーニめはズッキーニめは…」


「はははっ。わかったわかった」


毎度言わせるな。男はよせ。早くショコラに代われ、俺は心の中で呟く。


「パエリア心配したんだぞ」


トリュフはパエリアに肘鉄を加えている。加減大丈夫だろうな、終いには喧嘩になるぞ。


「つもる話もあるが、まずは城の中へ…。パシェリにも水をやってくれ」


パシェリはお気遣い有り難うと言わんばかりに俺に頭を擦り付けた。そして入り口付近の足拭きマットで自ら足を綺麗にし、中へと消えていった。


パシェリに続いて俺たちも城の中へ入っていった。


パエリアの話やモンブランの話。土産話は山ほどある。留守中の城の様子も聞きたいので、俺たちはひとまず食堂に向かった。


道すがら子供たちが「魔王さまお帰りなさい」と俺に声をかける。俺も笑顔で応じる。


厨房ではパエリアが留守中、てんてこ舞いしながら何とか業務をこなしていたようで、パエリアの姿を見ると泣きながら、料理モンたちが出迎えた。


「あっしはこれで…」


厨房が気になるらしい。そりゃ、料理モンだからな。パエリアと入れ替わりにパシェリが悠々と厨房から出てくる。


ここで水と餌を頂戴したらしい。長旅で疲れたのか、食堂の入り口の隅で丸くなって寝てしまった。


ティラミスはパシェリの喉元を撫でてやり、俺たちに遅れて食堂に入った。


食事にはまだまだ早い。俺たちの他には誰もいない。いつものテーブルの席についた。

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