勘違いの勘違いがすれ違いでした
「ひどいこととは?」
俺はゴーダに訊ねた。少し引っ掛かることもあったからだ。
パエリアの話ではオムレットは人間の男と結婚し、魔王の城の近くに暮らしていたはずである。
「オムレットはモンブランのことを本当に心底愛していた。別れた後も…。それを見かねた竜王は無理矢理オムレットに縁談を持ちかけた。勇者を名乗ってはいたが、魔王の後釜に座ることを画策していた、とても強い男だった。竜王は己の地位の保全のためその男の要求に渋々従ったのだ」
「待ってくだせえ。あっしは人間の男と駆け落ちした、そう聞きやしたが…」
「そいつも人間だった。だから渋々なのだ」
「ではその男と結婚を?」
ティラミスが割って入る。
「慌てるな。また別の男だ。気乗りしないオムレットはモンブランの元へ飛び出していった。しかし、会えないばかりかモンブランは今の王妃と結婚してしまっていた。オムレットは失意の中、帰ることもできず、フィールドで路頭に迷っていた」
「ーー親父は好いていた者がいたが、相手に縁談がきて結婚してしまった。自分も王位を継ぐ切迫した事情が出来、政略的に結婚するしかなかった、そう溢したことがあったな…」
「結婚したという勘違いが、モンブランを結婚させ、それを見たオムレットが振られたと勘違いしたのか…」
俺はなんだか切なくなった。
「ああ、なんたる事だ。モンブランが裏切ったわけではなかったのか…」
ゴーダは額に手をやり、天を仰ぐ。
「それで、オムレットさんはいつ誰と駆け落ちしたんで」
パエリアが促す。
「ふむ。その後すぐじゃ。勇者を名乗る魔王の後釜がオムレットを探しだし、無理矢理連れ去ろうとした。わしの力ではどうにもできん。そこへたまたま通りかかった呑気な勇者に助けられたのじゃ」
「呑気な?」
パエリアの眉間には深いシワが刻まれる。俺も聞きたいよ、なんだ?呑気な勇者って。
「鍬を担いだやつでな…。呑気なくせにやたら強かった。相手もチートがなんとかと言っていたが、オラもそうだ、とか言ってな…。ーー目、とくに目が印象的な奴だった」
「鷹のように鋭いとか、鬼のようとか、狼のようとかでやすか?」
「ーーと、遠い目をした男だった」
パエリアたちは絶句した。確かにある意味怖いかもな…。
「遠い目の男に倒された魔王の後釜はボロボロになりながら逃げていった。そうそう、逃げながら名乗っていったな…。確か…ニート…。ニート・テックとかそんな名前だった」
「やはり、パパ上様の他にニートなる人物がいたのですね」
「しかもいい輩ではなさそうだな」
サラリと言ってのけたが俺も他人のことは言えない。ここではしれっとスルーしておく。 それにしても遠い目をした男に負けたのかよ。しかものんきな奴に……。弱くね、チートかどうかも怪しいよな、ニート・テックって奴。




