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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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ブラウニーのやり方

「ああ…」


何が入っていたかは知らないがブラウニーは燃えかすの断片を一つ一つ拾い始める。


「わしを突き飛ばしておいて詫びの一言もないのか、最近の若いもんは」


突き飛ばした相手にお構い無しで燃えかすに執心しているブラウニーにゴーダは怒りを露にする。

「そんなに大事なものなら後腐れないように全部灰にしてくれるわ」


ゴーダの口から放たれた二度目の炎はかろうじて残していた断片をも真っ白な灰にしてしまった。

ブラウニーは物も言わずに拳を握りしめたまま立ち上がった。


ブラウニーも感情的なっているようだ。眉を吊り上げ、明らかにゴーダに敵意を剥き出しにしている。


「何だ、貴様。わしと勝負しようというのか?お前のような礼儀知らずで、人間で、しかも非力な輩にわしが負けるとでも思っているのか?」


「一方の価値を押しつけるために勝つとか負けるとか、争いごとで決めようとするのだろう?僕があなたを突き飛ばしたことは謝ろう。でも僕は大事なものを目の前で燃やされてそれどころではなかったんだ」


ごめんなブラウニー、俺がお前を突き飛ばしたばっかりに…。でもそのことはここで伏せておこう。気づいていないみたいだから。


「ではどうする気だ?」


ゴーダが首を捻る。


「お詫びのしるしとしてこの演奏で勘弁してもらいたい」


ブラウニーはハープを取り出すとチューニング代わりにひとかき、かき鳴らした。


「いい音色ですね」


ティラミスが泣くのを止めて耳を澄ませる。地面に伏せていたパエリアも立ち上がった。


「ではーー」


目を閉じ、呼吸を整えるとブラウニーは演奏を始めた。からだ全体でリズムをとりながら、優しい音色に包まれる。


パエリアも泣き止んだ。ペスカトーレも疲れが吹き飛んだように和やかな顔つきになる。


俺も何だか癒されるみたいだ。


音楽がこんなに気持ちいいとは思わなかった。しかし、ゴーダを泣かせるには真逆の方向性だろう。


俺は無駄を承知でゴーダにちらっと目をやった。


「!」


泣いてる。泪がっつりでてますやん。


思わず俺は二度見してしまった。一体何があったんだ?音楽に感動したとか?


「パパ上様」


ティラミスも気づき、俺の袖を引き、ゴーダを指差す。


「泪…」


ペスカトーレが呆気にとられた顔をする。


感動とか、今更効くのかよ。だったら何でさっきの話で泣かなかったんだよ。そう言いたげな顔だ。


こぼれ落ちる泪は地面に到達するころには七色に輝く結晶になっていた。


ティラミスがひと欠片つまみ上げ、手のひらに載せ、不思議そうに眺める。


「溢れてしまったものは仕方あるまい。それにわしの方も大事なものを焼いてしまったようだし…。詫びを入れられたら詫びを返す。泪は確かに渡したぞ」


「しかし、なぜ?今までどんなに感動やら痛みやら加えても一粒さえ流さなかったのに…」


「うむ…。ーーその前に、その演奏を止めてくれ。もう充分じゃろう。その音色とハープの振動は我々ドラゴンにはなぜだかわからんがひどく泪を誘うのだ」


「だと思った。ロコモコが昔そう言っていたから」


ハープの演奏を止めたブラウニーが笑う。


「ロコモコって金平のとこにいた受付の方ですか?」


「そう。この間までは城で働いていたんだ。彼女の母親が竜王の娘と友達だったんだって」


「城の?モンブランんとこのせがれか、お前。なるほど若いときに似ておるな」


「知ってんの、親父のこと?」


「ああ…。ここに来るのに何も聞いてないのか?まあ、尤も自分から話すこともなかろうが…」


長い髭を撫でながら、ゴーダは空を仰いだ。


「ドラゴンの中でもわしら竜王の一族は別格。言葉も解するし、人間のような生活をする。しかし、今のようにモンスターと人間の垣根が無くなった時代とは違い、お前さんの親父、モンブランが若い頃には勇者を先陣にわしらを狩りに城の者がよくきたものだ」



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