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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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瞬縛!

「なんて、様だ。俺が自らやる。--ブラッディ・スプラッシュ!」


田楽を押しのけ、頭が仕掛けてくる。


普通なら出血するんだろうが、俺はチート。退屈の欠伸しか出てこない。


「ならばこれなら…。ポイズン!!」


普通なら毒に侵され、毎秒ドットいくつかのダメージを食らうんだろうが、これも昔ティラミスに散々盛られたおかげで何ともない。トリュフにさらに強い毒で鍛えてもらった。


「守備力を下げてやる。そして俺様達の攻撃力を最大限に…。丸裸にしてしまえば貴様なぞ…」


下げきる前、それも遥か手前でMP枯渇。俺の方が完全に飽きてきた。

「いい加減にしな、魔王殿は飽き飽きしてるぜ。自分の力量と相手を見極められねえお前らに勝ち目はねえよ。俺があっさり捕まえてやるから観念しな」


「金平、貴様ごときになら俺たち二人がかりでーー」


田楽と頭がやけ気味に金平に殴りかかる。その瞬間。


「--安心しな。小指の峰うちだ。瞬縛!!」


気絶した二人を金平は両脇に抱えた。周りの兵士が急いで二人を鎖につなぐ。


「済まなかったな、生憎手足を使えなかったので困っていたのだ」


「魔王殿。俺が来ることは折り込み済みだろうに…。人が…、いや、魔王が悪い」


俺と金平は高笑いをした。やっぱり見込んだ通り悪い奴ではなかった。


「ーー時に、パエリアとはどのような?」


「昔な、パプリカを足ぬけさせたいと相談に来てな…。俺の目の届くところに置いておいたはずだったのだが…。まさか、身内に田楽のような輩がいたとは」


金平は頭を掻いた。


「内偵をロコモコに任せ、泳がせていたらこの有り様…。引き返してきたという次第だ」


「役にたってよかったよ」


ロコモコが腰に手を当て、高らかに笑う。


「ありがとうな…。パプリカの名はパエリアがつけたんだ。生まれてから親分さんはほったらかしだったんでパエリアが不憫に思ったんだろう。しかし、パエリアには気の利いた名前は思いつかない。ふと手にしていた野菜。そして自分の名前に似ていた。パプリカは稼業についてもあまり詳しくなかったから、真っ直ぐに成長してな…。今はうちで預かっている」


金平は手招きでパプリカを呼び寄せる。パプリカは小走りで金平の側に寄るとぴょこんと頭を下げた。


「パエリアおじさん…。ありがとう」


「ご無事でなによりで…」


パエリアはパプリカの頭を撫でる。そしてパプリカの怪訝な顔色に気づき、慌てて手を引っ込めた。


そりゃそうだ。もうパプリカは子供じゃない。昔のままだったんだろうな、パエリアにとっては。


「さあ、湿っぽいのはここまで…。立ち話もなんだ。パエリアの旨い料理で魔王殿、一献!」


金平が俺の肩を叩く。パエリアは浮かない顔になる。


「どうした、パエリア?」


俺が訊ねるとパエリアは黙って膝をつき、両手を交差して金平の前に差し出す。


「おいおいなんの真似だ?俺はお前を取っ捕まえる義理はないぜ。魔王殿は約束通り手出しをしなかった…。そして一件落着だ」


「しかし、あっしはケジメをつけるためとはいえ、盗賊どものーー」


「バカ言っちゃあいけねえよ。これは俺、盗賊改め鬼の金平が仕組んだことよ。全てこうなることを見通してな…。盗賊をかじった程度の、しかも10年以上も現役を退いているお前さんに仕組めるほどのヤマじゃあねえよ」


金平は豪快に笑う。今まで黙っていたティラミスがそっとパエリアの肩に手を置く。


「ーーだ、そうです。パエリア…。みなさんに心配かけた分、腕によりをかけて料理を頼みましたよ」


「へぇい…」


パエリアの声に涙が混じる。そのまま突っ伏して男泣きに肩を震わす様子にティラミスがしばらくそのまま付き添っていた。



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