手も足も
周りの雑魚どもや田楽も騒がしくなる。
「周りは私めが…」
ティラミスも腕まくりで戦闘準備を整える。
「お待ち下せえ!」
パエリアの怒号だ。
「パエリア?」
ティラミスが振り返る。敵も何事かとパエリアを注視する。
「これは、あっしの問題でございやす。魔王さまもティラミス様も口出ししねえでございまし」
「あら、パエリア口ではありませんわ。私たちはーー」
「手も同じことでありやす!」
パエリアはティラミスの言葉を遮り、大声を上げた。どうしても俺たちを巻き込みたくはいのだろう。それに俺たちがかかわることで前の頭の息子、パプリカに危害が及ぶことも懸念しているのかもしれない。
ティラミスは押し黙った。
「ならば、パエリアよ。こうすればよかろう。俺は文字通り手も足も出さない。ここに魔王として鎮座するのみ。--盗賊ども、煮るなり焼くなり好きにするがよい。ティラミスはそこで見ておれ。そして、パエリアよ。もし、俺が手も足も出さず、勝利した場合…、お前は俺の言う通りにするのだぞ、わかったな?」
俺は言うが早くその場に豪快に尻をついた。パエリアはなんかわめいていたが周りの盗賊どものバカ騒ぎであまりよく聞こえない。
敵はもう俺を討ち取った気でいるらしい。
ティラミスは横にだれか来たことに気付き、目を丸くする。俺もちらっと確認する。
「おお、なんか面白そうだな。わしもどれ、見学としゃれこむか。--討伐の長旅から帰ってきたというのに誰も出迎えがおらなんだ。爆発音がしたかと思えばこのありさまだ。わしは正直びっくりだ、なあ…、田楽」
今頃来たか、盗賊改め方金平。十手を肩で弾ませ、満面の笑顔だ。相変わらず顔はホームベースばりの角張かただが…。
「こ、金平。き、貴様」
田楽が歯ぎしりする。盗賊の一人が金平に斬りかかるが十手の一撃で沈んだ。それもほんの軽い一撃でだ。やはりこいつの方が強さは半端ない。
「焦るなよう、田楽。俺とお前の仲じゃあねいか。正体がばれたからってそんなにすぐに噛みつかないでくれよ。魔王殿が俺を先に、と言われているのだから先に相手してやるのが筋ってもんだろ?俺はその次の番ってことで勘弁してくれ」
金平は俺に目配せをしてその場に座り込む。俺もにやりと金平に返す。
「よ、よしまずは魔王を葬るぞ。何もしてこないならお頭が出るまでもない。俺たちで魔王を八つ裂きだ。いくぞ!」
田楽を筆頭に俺に四方八方から剣と魔法が乱れ飛んでくる。さすが、盗賊団というだけあって腕がたつ奴ばかり。強力だ。
しかし、所詮はこのワールドのレベルでいう手練れ。チートな俺には赤子のお遊戯みたいなものだ。
俺は目を瞑った。激しい雨のように降り注ぐ攻撃。
多少は痛いが大したものではない。刺さりもしないし、焦げたり、凍ったり、痺れもしない。
盗賊の怒号に混じり、武器が破損していく音がする。
徐々に狼狽える盗賊の声。疲労困憊の様子まで手に取るように伝わる。
そういえばティラミスにバトルアックス強化値+100で襲い掛かられたことがあったな…。
その時俺はとっさに避けたがあの後さらに精進をした。
ティラミスは幼い自分にとって使いやすい剣をズッキーニに頼んで+120、+125、+130…果ては+200まで改良させ、俺に殴りかかってきた。
そのたびにチートな俺は口元に笑みを浮かべながら、無抵抗にその剣を弾き、粉砕していった。
さすがにティラミスもズッキーニの体を心配し、それ以上の強化を頼むことはなくなったが…。俺は最強の剣を+1000まで磨いてきたとしても無傷でいられる自信はある。
だから、こんななまくらな盗賊どもに手出しをしなくても俺は負けない。
「なぜだ!なぜ刺さらねえ!!」
田楽の叫び声の中、最後の手下も疲労のため崩れ落ちる。




